ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【17】
「……さて、このN65パラレルなのですが、やはりリダさんの予測通りの方が関わってますね……やってくれます。我々パラレルにもやはり人並み程度の欲望はあります。それはリダさんのパンツを欲しがる私の行動を見てくれると分かるかも知れませんが」
「人並み以上に変態だと言う事だけは激しく賛同出来るし、それが欲望と言う名の煩悩である事も痛烈に理解しているな?」
「そうです。この様に私達パラレルにも『常人程度の欲望』は存在しているのです!」
パラレルは今までない程に語気を強めて叫んでいた。
特に『常人程度の欲望』と言う妄言部分を、より強く強調していた。
私的に言うのなら、強調と言うよりも誇張だな?
お前が常時抱いているだろう、欲望と言う名の劣情は、常人を遥かに凌いでいると言いたい。
「何にせよ、パラレルだって欲望に忠実な動きをする事だってある……つい魔が刺してしまったのかも知れませんが……しかし、世の中にはやって良い事と悪い事がある……そう思いませんか?」
「それは大いに同意する。だから、金輪際私のパンツを欲しいなんぞと言う良迷い事を言うのはやめてくれないか?」
「……話を続けます」
……おい。
しれっとスルーするんじゃないよ⁉︎
「N65パラレルが、奴……伝承の道化師と遭遇したのは、単なる偶然の模様です。意図せずして出会ってしまい……そして、伝承の道化師がヤツを唆したのもまた、運命の悪戯に過ぎません……強いて言うのであれば、道化師はリダさんに一定の関心を示していたのが原因……とでも申しましょうか?」
……へ?
パラレルの言葉に、私はちょっとだけポカンとなる。
あの道化が、私に関心を?
一気に血の気が引けた。
「……ああ、関心があると申しましても、直接的にリダさんを恨む様な事には至って居ない模様です……『まだ』ね?」
いやいやいやっ!
そんな怖い事を言うなよ⁉︎
あんなのに恨まれたりしたら、生きた心地がしないぞ!
……くそ。
やっぱり、私は今後もしっかりと精進して行かなければならない模様だ。
「結論からすれば、これは道化師による気紛れであり……嫌がらせです。なんてシンプルな結果なんでしょうね。特に深い意味がある訳でもなく、大した理由がある物でもない。純粋に遊んでます」
「………」
パラレルの言葉に、私は言葉が出なくなった。
そこには、沢山の呆れと怒り……しかし、その上で納得してしまえる自分がいた。
なんて事はないのだ。
あいつらは、根本的に難しくなんて考えない。
きっと、難しく考えてしまうと、存在その物を保っては居られなくなってしまうのだろう。
それだけ無駄に永い永い時間を生きているし……かつ、そこに存在意義などない事を誰よりも深く知っているからだ。
これは、別にコイツらだけに限った事ではない。
人間だってそうだ。
私達だって、何かの目的があって生まれて来た訳でもなければ、この世界に生きている必要だってない。
つまり、自分が生きる……と言う、最も根本的なテーマについて、明確な答えを出そうとすれば……発狂してしまう心理状態にすら陥ってしまう。
結局……生に対しての考え方は、色々と難しい物があるな?
しかし、これを難しく考えないのが、伝承の道化師と言える。
厳密に言うと、みかんの親でもある宇宙意思とかもそうだな?
ともすれば、難しく考えない事が長生きの秘訣なのかも知れない。
あるいは、そう言う概念がある事を含め、全てを受け入れると……考えが途端にシンプルな物になってしまうのかも知れないけど……余談程度にして置こうか。
どちらにせよ、伝承の道化師が関わり……かつ、その行動を取るに至った動機であるのなら、その話を耳にした人物が呆れてしまいそうなまでにシンプルかつ単純な物である可能性が極めて濃厚だ。
むしろ、そう言うのしかない。
ある意味、分かり易くて結構な話ではあるのだが……どんな理由であれ、嫌がらせはやめて欲しい所だ。
「あなたの世界に並行世界へと行き来する事が可能な魔導器が『偶然誕生』してますが……実はこれも、偶然なんかじゃない。偶発的な物に見える『必然的な物』なのです」
「……っ⁉︎」
次に答えたパラレルの言葉を耳にした瞬間、私は思わず目を大きく見開いた。
私の記憶が正しいのであれば、偶発的なアクシデントが発生した結果……並行世界へと移動する事が可能な装置が誕生してしまった……と、聞いていた。
……むぅ。
どう言う形で偶発的な物を装ったのかは知らないが……この偶発的なアクシデントを、必然的にやって見せたと言う訳か。
そうだとしたら、N65パラレルとか言うのが、元々の主犯じゃないか!
私は、心の中で思わず叫んでしまった。




