ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【14】
パチッ! っと、部屋の照明を付け……ここが私の寝室である事が分かった。
まぁ、正直に言うのなら、この部屋には何の愛着もないと言うか……今朝、初めて見た場所でもあったから、なんとなく自分の部屋にいるんだなぁ……って言う感想しか湧かなかったのだが。
けれど、ここが自分の寝室である事は、曖昧ながらも分かる。
だって、私好みの美少年が主人公っぽい漫画とかあるし!
よぉぉぉく見ると、さりげなぁ〜く薄くて高い本なんかも、本棚の端っこにあったりするし!
つか、これは普通の奴だよな?
十八歳以上は読んでは行けませんって感じのヤツではないよなっ⁉︎
もしその手の奴であったのなら、堂々と本棚になんて置かないよな!
頼むぞ、この世界の私! お前を信じて、今は本棚に入れて置くぞ?
後でちゃんと中身は確認するけどな!
まぁ、そこらはともかく。
ガチャッ……
私は自宅のリビングへと足を向けた。
リビングを見ると、
「お、おねーちゃんっっっ!」
思い切り泣き腫らした顔になっていたアリンが……ぐわぁっ!
「ちょっ……アリン! お前、幾つになったと思ってるんだ! いきなり体当たりとか、マジで勘弁してくれよ⁉︎」
私は苦い顔になってアリンへと叫んだのだが、
「良かった……おねーちゃん! 生きてた……うわーんっっ!」
半狂乱状態になっていたアリンは、私の言葉なんて聞こえてなかったのか?
そのまま、私の胸元にしがみ付いて来ては、そのままわんわんと泣き出した。
……う〜ん。
正直、アリンが泣いている理由は、なんとなくだが分かる。
きっと、自分を背後から刺した事実を知っているからだろう。
だけど……まぁ、どう考えてもあの時のアリンは正気ではなかったし……。
「良く分からないが、私は大丈夫だぞ? ほら、全然元気だ!」
答えた私は、元気をアピールする形で右腕を大きく振り上げた。
実際、私の身体には傷一つなく……体調の方もすこぶる良好だ。
完全に意識を失っていたから分からないけど……多分、私へと治療魔法を発動してくれた者がいたのだろう。
まぁ……あるいは、修復魔法とか復活魔法だったかも知れないが。
どちらにせよ、私の腹部に生えていた刃はもちろん、その傷すら綺麗に無くなっていた。
ここらを加味するのであれば、かなり上位の回復魔法が発動されていたに違いない。
「リガーさんがね! おねーちゃんに回復魔法を使ったの!」
……ああ、リガーが掛けてくれたのか。
「だけど、血が足りな過ぎて、生命的にも危険で……すぐ輸血しないと! って事になって、パラレルさんが緊急で血液を持って来てくれたんだけど……人間の血液は足りなかったから、代わりに近くのモンスターを倒して、血抜きして来たのを持って来たの!」
……って、あの変態はバカなのか⁉︎
「大丈夫です! リダさんなら、この血液でも頑張って生き伸びます!……なんて言うけど、私も心配で!」
……おい、待て?
遮二無二騒ぎ立てるアリンの言葉を聞いて、私の顔から血の気が引いて行くのが分かった。
その言葉を額面通り取ったのなら、私にモンスターの血液を輸血した事になる!
「アリン……心配掛けてすまなかったな……だけど、一言だけ言っても良いかい? 私は人間だ。純然たる人間だ? よって、モンスターの血を……しかもそこらを歩いていたモンスターから血抜きした血液をそのまま輸血するとか、メチャクチャ過ぎて目眩が起こりそうなんだが?」
「大丈夫! 安心して、おねーちゃん! そこはちゃんと生き血を使ってやってるから! このリビングまでは、ちゃんと生きているモンスターの頸動脈を切って取り出した、新鮮な血液だから!」
そう言う問題じゃない!
「よし、アリン。もう一度言うぞ? 今度はしっかりと聞いて欲しいんだ? 私は何だ? モンスターに見えるか? 普通に人間だよな? 強いて言えば可愛い女の子だ? ボインでキュートな女の子だ?」
「え? ボイン? キュート? どうしよう……おねーちゃんがおかしな寝言を……?」
いや、そこで真面目な顔になって困惑されると、私もちょっとヘコむのだが?
「……本当にモンスターの血をお前に輸血する訳あるか……冗談だとすぐに気付けよ……」
程なくして、私の耳にリガーの声が転がって来た。
「……えっ⁉︎ おねーちゃんって、モンスターの生き血を輸血した訳じゃなかったのっ⁉︎」
そして、アリンは本気で私にモンスターの生き血を輸血したと思ってたのかよ!
せめて、それを知ってたのなら止めろよ! マジで!
私は地味にアリンと言う女の子が信じられなくなっていた。




