ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【8】
ともかく、相手の実力を侮る事だけは、決してしない様に心掛けておきたい。
「お姉ちゃん!」
直後、アリンが素早く私の前にやって来た。
どうやら、かなり心配してくれた模様だ。
なんと言うか、顔を徐にクシャクシャにしていて、私の身体を痛切に案じていた事が良く分かる表情を見せていた。
アリン……お前は本当に優しい子だよ。
「怪我は無かった⁉︎ 痛い所とかはない? ああ! どうしよう! 胸が無くなってるよ、おねーちゃん⁉︎」
……でも、ちょっと混乱し過ぎだな。
「安心して下さいアリンちゃん! リダさんは元から胸がありませんよっ!?」
ドォォォォォォォンッッッッ!
そして、変態は、相変わらずデリカシーに欠けるヤツだった!
こんな台詞は問答無用で爆破案件だ!
つか、当たり前だけど、ソッコーで爆破してやったよ!
「どうやら無事だったみたいだな」
他方、リガーがゆっくりと私の近くにやって来ては、にこやかな笑みを作りながらも声を吐き出して来た。
なんだろう?
リガーが一番まともな台詞を私に向けている気がする。
「……正直に言うとさ? 私もちょっと出来過ぎな気がしているよ? 相手は混沌龍だったしさ?……それに、混沌龍を返還する為の魔法を発動させていたのに、相手からの妨害とかも無かったし……」
「そこは俺も少し気掛かりではあった。なんとなくだが……これは単なる座興に過ぎない様な気がしてな? はは……ネガティブに考え過ぎかも知れないが」
「いや、実は私も同意見だ」
苦笑混じりに答えたリガーの言葉を耳にして、私は即座に頷きを返した。
……そうなんだよ。
ズバリ言って、向こうが全く動いて来なかった背景には、混沌龍の召喚なんてデモンストレーション程度の代物に過ぎないと言う考えがあったからなんじゃ?……って言う予測があるんだよな?
けれど、もしそうであったとしたのなら……ハッキリ言って事態は深刻だ。
そして、周囲の覇気を著しく低下させてしまう要因にすらなりかねない。
例えそれが真実であったとしても……だ。
よって、口に出すのはやめた方が良いかも知れない……と考えていたのだろう。
……はは、参ったね! やっぱりリガーは私なんだなと分かるよ。
考えている事が、何から何まで全部一緒だったのだから。
ウゥゥゥゥゥンッッ!
……なんて考えていた頃、周囲からサイレンの様な物が鳴り響く。
ふと見ると、遠くの方からパトカーっぽいのがやって来るのが分かった。
………。
なんだろう?
私達は、決して悪い事なんかしていないし、逆に混沌龍から街を救った方の立場だ。
だけど、混沌龍がこの街に召喚された切っ掛けを作り出したのも私達である。
言うなれば、この街は私達の戦いに巻き込まれた形になったのだ。
「なんか、警察の人がこっちに来そうだねぇ?……ねぇ、お姉ちゃん? これ、大丈夫……だよね?」
程なくしてアリンが、顔を強張らせて私へと言って来る。
「私個人の見解で言うのなら、大丈夫だと言いたい……言いたいが、事情聴取みたいな物を思い切り食らった挙句、変に怪しいと思われても敵わないから……逃げよう!」
「え? やっぱりそうなるの?」
本当は私も堂々として居たいけど……なんて言うか、私は警察が苦手だ!
その……別に何も悪い事なんてして居ないのに……警察を見ると、どうも……こうぅ……やましい事をした時の様な? そう言う、妙な気まずさが生まれてしまう。
なんだろうなぁ? これ?
お巡りさん=怒られる人って感じの何かが、私の精神に刻まれているんだろうか?
ともかく、あんまり関わりたくない!
「はっはっはっ! そこは安心して下さい、リダさん! これでも私は並行世界の管理者ですよ? 自分の管理する人間の記憶をチョイチョイっと改ざんする事ぐらい、朝飯前ですよ!」
直後、爆破してたのにアッサリ復活していた変態が、シャキッ! っと復活しては、私達へと胸まで張って断言して来る。
並行世界の管理者なのに、どうして相手の記憶を変える事が出来ると言うのだろう?
ついでに言うのなら、そう言う物騒な台詞を堂々と語るんじゃないよ! 怖いじゃないか!
「よって、今の私達が行う選択肢は一つだけ! ここは警察に見付かる前にとんずらしましょう!」
そして、言い方!
……警察をマッポって呼ぶヤツなんて、今の時代にはホトホト居ないぞ!
けれど……まぁ、変態の言い分は分かった。
ここで国家権力に捕まって、色々と聴取されてしまうと、後々が厄介なのだろう。
主に、変態の記憶改ざんの仕事量が増えるとか、そう言う話なのかも知れない。
詳しくは知らないがな!




