ドーンテン一族なのに、何故か胸元が大きい女性がいる世界【3】
……これ、修繕費に幾ら掛かるだろ? 普通に考えて億単位の金が必要になるんじゃ……と、地味に顔が青くなる私が居た頃、
『グォォォォンッッ』
混沌龍が吠えた!
同時に私の方へと顔を向けて来る……っ⁉︎
これは、ドラゴン・ブレスかっ⁉︎
口から、暗黒色の強大なプラズマみたいな物が発生し、バチバチッッッ! とスパーク音を撒き散らしながら私へと標準を合わせて来るのが分かる。
どうやら、フライング・ボディ・プレスの一撃を受けた事によって、私に怒りを抱いた模様だ。
ふぅむ、なるほどな?
やっぱり、一定のダメージにはなったのではないか? と、予測する事が出来る。
外見上は全く変わらないし、なんだかんだでケロっとしている模様だが……その内面は、結構なダメージになっているのではないか?……と、私なりに予測していた。
どうしてか?
コイツの持っている生命力……つまり、エナジー量が削られた事に気付いたからだ。
何というか、コイツは原始から生きている化け物だからなのか? 自分の持っているエナジーを普通に外へと放出している。
それだけに、強大なエナジーを混沌龍からひしひしと感じ取る事が出来るのだが……逆に言うと、ダメージを受ければエナジーが削られている事が手に取る様に良く分かる。
………っと、そんな事を考えている場合ではなかった!
私は素早く、上空へと飛んでみせる。
コイツのドラゴン・ブレスは、どう考えても危険だ!
こんな物を真横に吐き出された日には、私の後ろにある建物が全て跡形もなく消滅してしまう!
思った私は、混沌龍のドラゴン・ブレスが真上へと吐き出される様にする為、ロケットの様な勢いで垂直に大空を舞った。
混沌龍の口から暗黒色のドラゴン・ブレスが放出されたのは、この数秒後だった。
ボヒュゥゥゥゥゥンッッッッ!
……まるで波動砲だ。
なんだよ、これ?
お前は何処の殺戮兵器だっ⁉︎
直径数十メートルはあろう、強烈な漆黒のレーザーが混沌龍の口から放射され、光の速さと大差ない勢いで私へと飛んで来た!
ぐ……くくぅ……ぅぅ……っ!
「おねーちゃん! 大丈夫っ⁉︎」
地上の方から、アリンの叫び声が聞こえて来た。
暗黒色のレーザーによって視界が完全に塞がっている為、声しか聞き取る事が出来なかったが……きっと、かなり私を心配していたに違いない。
ともすれば、衝動的に私を助ける為に動いていたのかも知れないが、
「待て、アリン! ここはリダを信じろ! 俺達はパラレルを守る役目があるだろ!」
程なくして聞こえたリガーの言葉を耳にして、アリンを引き止めてくれている事が、何となく分かった。
「離して! 私はそこの変態よりもおねーちゃんの方が心配なのっ!」
……いや、気持ちは分かるけど、ここはリガーの言い分が正しいぞ!
変態より私を優先してくれるのは嬉しいけど。
……って言うか、変態と比較されるのは甚だ不本意だけど!
けれど、今は変態を優先してくれ!
それに、だ?
アリンちゃんよ? お前は自分の姉がこの程度のドラゴン・ブレスでくたばるタマだと思っているのか?
この世界では違うかも知れないが……私は世界最強の冒険者にして会長でも名高い、リダ・ドーンテンさんだぞ!
……そう!
「……なるほど? やはり、レベル5は『少しやり過ぎた』かも知れないな?」
私は誰に言う訳でもなく呟いた。
少し前の私……超龍の呼吸法を覚えたばかり程度の実力であった頃の私であったのなら、あるいは致命的な大ダメージにすら至ったかも知れない。
下手をすれば即死級のダメージを受け、そのまま自分の肉体を消滅させていた危険性だってある。
そう考えるのであれば、出会ったタイミングが悪ければ、私は高確率で死んでいた。
もっと、早くここに来ていたのなら……上位魔導師の試験を受けるよりも先に、ここへと来ていたのなら間違いなく混沌龍のドラゴン・ブレスを受けた瞬間に致命傷を受けていたに違いない。
やっぱり、日々の精進ってのは大切だな!
数々の修羅場と……地道にコツコツと毎日やって来た睡眠学習スキルは……その努力は決して私を裏切らなかった。
暗黒色のブレスがやって来る直前の所で張った魔導防壁は、一切崩れる事なくブレスを防ぎ切ったからだ!
自分でも実感する事が出来るぞ……。
まさか、世界を混沌へと還す、あの混沌龍のブレスを直撃で受けても、しっかりと完封する事が出来るまでに堅牢な防壁を自力で生み出す事が出来る様になるとは……な?
しかも、私にとって幸運だったのは、さっきのドラゴンブレスによって混沌龍のエナジーが一定数削られた事だ。
まぁ……本来であれば地形が変わってしまう様な強烈さを持つ一撃だったからな?
街の真ん中で放出されていれば、間違いなく死者が甚大だった一撃だったからな?
そりゃ、相応のスタミナを消費するのは当然と言えた。
私の目的は、コイツを倒す事ではない。
コイツを弱らせる事だ。
よぉぉぉぉぉし!
「首尾は上々だな!」
暗黒色のドラゴンブレスを完全に防ぎ切った私は、ニヤリと好戦的な笑みを色濃く見せた。




