同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【18】
極論からするのなら、混沌龍をある程度まで弱まらせる必要性が存在する。
まぁ……結局は、混沌龍と戦う訳で。
しかも、今回はそればかりではない。
パラレルが、混沌龍を元の世界へと追い返す為の魔法を発動させている間、ナンバー・パラレルとか言うヤツから、パラレルを守る必要もある。
これもこれで笑えない。
言うなれば、パラレルを守る防衛戦になるのだが……これだけでもかなりの苦戦を強いられる可能性は十二分にある。
ナンバー・パラレルと言う存在が、どの程度の能力を持っているのかは、今の私には分からないが……一筋縄では行かないと考えた方が無難であると、私は考えている。
それに……ナンバー・パラレルとか言う相手が、もし私の妹をしていた存在、カリンであったのなら……だ? これはもう、大苦戦は必死と言える。
奴は、私の爆破魔法をアッサリとシャットアウトしていた。
喰らっていたフリをしていたが……実際には、全くダメージを受けては居なかった。
尤も、私も本気で爆破魔法を放った訳ではなかったから、私が本気で放った魔法を、完全に防ぐ事が出来るのかまでは分からないのだが。
言うなれば、未知数。
相手の能力は、結局分からないと言うのが、私なりの答えであり、全てだ。
強いて言うのであれば、ナンバー・パラレルとか言う存在が、まだカリンではない可能性がある……と言う事。
ただ、私はもう……この可能性は、限りなく絶望的だと思っている。
理由は簡素な物だ。
今、この場にカリンが居ないと言う事。
確かにカリンは、部活をしている関係上……実質、帰宅部の私達よりも帰りが遅いのは自然の成り行きではある。
あるが、そこを差し引いても遅い。
ともすれば、突然の混沌龍到来により、電車がストップしてしまった等のアクシデントが発生し、駅で足止めでも食っているのかも知れないのだが。
その他、色々と事情がある可能性を考える事が出来るのだが、どれもこれも憶測の域を超える事は出来なかった。
……カリン。
私自身には、全く縁もゆかりもない……赤の他人も同然の相手ではあるんだが、私の中に存在するリダにとっては、れっきとした妹であって……。
だから、私の中に尋常ではない切なさが生まれている。
だから……だから。
カリンを、私は救いたい。
こんな事を言うのは他でもない。
カリンがもし、この世界では当たり前の様に存在しているのであれば、カリンとナンバー・パラレルの二つをイコール線で結んでは行けない気がしたのだ。
理由は、今の私とリガーにある。
今の私は、この世界に最初からいる、並行世界の私。
つまり、精神だけこの世界に存在し、肉体は別の場所にあるのだ。
精神だけ、別の世界へと飛ばす能力を相手が持っているのであれば、それをやっている当人だって、同じ事をしている可能性は十分にある。
むしろ、そっちの方が可能性として高い。
何故なら、本体は安全な所で待機しつつ、全く関係のない身体を操る事で、自分の本文を達成した方が、色々と都合が良いからだ。
そして、カリンは私の妹だけあって、基本的な能力が高い。
操り人形として使用するには、まさに打って付けと述べても過言ではないだろう。
普通に小汚い事をするな……ったく!
これら諸々を総合的に考えるのであれば、私達は実質、人質を取られているも同然だった。
カリンは、この世界で普通に生きている、私やアリンの大切な妹であるからだ。
……くそ。
ここも面倒な話だよ。
そもそも、カリンの身体にナンバー・パラレルとか言う、良く分からない存在が宿っているとして……それをどうやって引き剥がす事が出来るのか? そこらの方法も全く分からない。
ただ、パラレルの話を聞く限り、私やリガーと同様に、精神が反融合しているだけの可能性が高いらしいので、カリンの中から外へと追い出す事はそこまで難しい事ではない……かも知れない、らしい。
最後は、ビミョーに自信のない口調になっていたのは、パラレルの言葉をそっくりそのまま言っているからだな?
パラレルも、ここに関してのみ言うのであれば、完全にそうだとは言えないのだろう。
飽くまでも、私達と同じであればそうなる……と、こう言う理屈だ。
どちらにせよ、カリンに関して言うのなら、まだまだ確実にこうだと言う情報が少ない為、パラレルも自信を持って言える事が少ないらしい。
まぁ、そうな?
相手は、パラレルの予測を大幅に超える様な事を、当然の様にやって来てもおかしくない。
そこらを加味するのであれば、パラレルが予想すら出来ない様な、とんでもない何かをやっている可能性だってある。
出来れば、打開策がすぐに判明出来るレベルの物であってくれると、私も助かるんだがなぁ……。




