同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【17】
……うむ。
無茶苦茶過ぎて、私もちょっと頭がついて行けないな!
何にせよ、ナンバー・パラレルと言う存在は、ズバリ言って平の管理者に過ぎないパラレルにはどうする事も出来ない存在であり……もちろん、ナンバー・パラレルが召喚した混沌龍をパラレルの力でどうにか対処するなど、やれる筈もない。
まさに四面楚歌と言える、困難極まる状態だ。
しかしながら、それでもまだ方法がある。
パラレルが言うには『これはルールを無視した反則行為』なのだと言う。
混沌龍の召喚は、ナンバー・パラレルとか言う、かなりの上位に位置するパラレルにしか権限が与えられて居ないと述べたが、それは飽くまでも権限を持ってはいる……と言うだけの話で、実際に使用するとなれば他のナンバー・パラレルからの賛同を得る必要があるのだとか。
それらの認知・認証を受けた上で、ゼロ・パラレルと言う最大級の権限と能力、権威を持つパラレルがゴー・サインを出して、初めて実現可能なんだとか?
これらをまとめれば……ナンバー・パラレルと言うのは、単独で混沌龍を召喚する手段こそ持ってはいるし、単独で召喚する権限の様な物を立場上は持っているが、実際に使うとなれば他のパラレルとの相談をした上でしか使う事が出来ず……事実上、単独で召喚させる権限は持っていない。
よって、今やって居る行為は、紛れもない暴走行為にして反則行為でもあるのだ。
だが、例えそれが反則行為であり、行っては行けない代物であろうとも……実際に召喚されてしまったのだから、ちゃんと対処する必要がある。
そこで、どんな対処をすれば良いのか?……そうと、パラレルに尋ねた所『祈りましょう』と答えたので爆発して置いた。
こんな時にまで冗談を言ってんじゃないよ!
そう言うのは、もう少し笑える事案の時に言っておけよ!
その後、アリンの治癒魔法によって回復したパラレルが、今度こそちゃんとした対抗手段を述べた所……元の場所に送り返す方法が、最も有力的かつ現実的だ……と言って来た。
ただ、最も現実的と述べてはいたが、飽くまでも非現実な選択肢しかない物の中では現実的な代物でしかなく……確実に困難を極めると補足を述べていた。
そうだな……確かに、余り現実的ではない。
混沌龍を元の世界に戻すなんてのは、尋常ではない労力を用いる必要がありそうだ。
……とは言え、召喚して来たと言う事は、間違いなく召喚される前には、別の所に存在していた為……召喚される前の世界へと引き戻せば良いだけ……ではある。
よって、召喚される前の場所が特定出来たのであれば、元の場所へと戻す事だって出来るのだろう。
幸いにして、パラレルは平であっても並行世界の管理者だけに、召喚された混沌龍が何処に居たのか? 召喚前の位置を特定する事が出来るのだと言う。
よって、後は送り返せば良いだけ……となるのだが、問題はここだ。
混沌龍が意図的に、この世界へと召喚されてしまったのなら、混沌龍は召喚した存在の意思に沿って行動する様になるのだと言う。
つまり、この世界に混沌龍を呼んだ存在が、元の世界へと戻そうとしている私達を排除せよ……と命令すれば、混沌龍は私達へと襲い掛かって来るのだ。
……まぁ、笑えない話だな。
混沌龍の強さが強大……なんて事は、私の口から言うまでもない事だろう。
要は、暴れる混沌龍の隙を突いて、どうにか送り返す魔法を使うので、それまでの時間稼ぎをして下さい!……との事だった。
パラレルが言うには、混沌龍を送り返すだけの魔法を発動させるには、軽く十分は必要になるのだと言う。
それじゃあ、予め魔法を発動させる段取りを前々から作って置いて、混沌龍の間近にやって来た瞬間に魔法を発動させれば良いんじゃないのか?……と言う疑念が湧く。
しかしながら、この魔法を発動しようとした時点で、混沌龍を召喚した犯人……ナンバー・パラレルにバレてしまう為、激しい妨害を受けてしまうんだと言う。
これは、魔法を発動している、いないに関わらず、魔法を発動する事が可能であるパラレルをナンバー・パラレルに見付かった時点で、妨害行為が始まるらしい。
可能性からすれば、今すぐにでも妨害行為が起きてもおかしくない……極めて危険な状態なのだとも言う。
更にパラレルが言うには……現状の混沌龍のエナジーは余りにも膨大過ぎる為、強引に送り返すにしても混沌龍の抵抗力が強過ぎて送り返す事が出来ないらしい。
強引に送り返す……と言うのがポイントだな?
つまり、相手も送り返される事に対し、抵抗する事が出来る部分がネックだ。
簡素に言うのなら、混沌龍の抵抗力が大幅に弱体化されない限りは、送り返す事が出来ないらしい。




