同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【16】
……ただ、パラレルの話を聞く限り、それはホトホト困った時の最終手段であって……この手段を使われた事は、今の所ないんだとか?
飽くまでも、方法として存在していると言うだけの話で、現実的に実行するかどうかは、また別の話になる……らしい。
まぁ、あれだ。
水素爆弾の様な核兵器と同じ代物だな。
破壊兵器として存在はするが、未だに試験以外の理由で発射された事はない……と言っているのと、大体同じ様な理屈だ。
私としては、こんな物を実行して欲しいとは思っても居ないので、可能であるのならば未来永劫使われないことを祈りたい所だ。
……と、さて。
今の所は使った事のない、並行世界の管理者達に置ける最終手段が、この混沌龍の召喚なのではあるのだが、通常で考えると召喚は常識では考えられないとの事。
当然と言えば当然だな?
生きとし行けるモノを根こそぎ破壊し、全てを混沌へと変える様なハチャメチャな存在を、簡単にポンポン召喚されてしまったのなら、ハッキリ言ってたまった物じゃない。
並行世界の管理者であったとしても、パラレル単体の意思では召喚する事は、限りなく不可能なんだとか。
ポイントは『限りなく不可能』と言う部分だな。
元来は、不可能と述べても過言ではないらしいのだが、混沌龍を召喚出来るだけの能力を得るだけの力を得れば、一応は召喚も可能になるらしい。
ただ、それだけの能力を得ると言うのは、一介の管理者程度の実力では天地がひっくり返っても無理で……通常は、一定の管理を受け持つ、上位の管理者と相談した上で色々と取り決めが為されるらしい。
仮に混沌龍を召喚しなければならない事案が発生したとしよう?
その場合、混沌龍を召喚させる世界の平行世界の管理者……パラレルが、それより上位に値する、数百以上の並行世界を管理する上司の様な存在と打ち合わせをするんだとか?
何やら、妙な単語が出ているのだが……どうも、パラレルと言う存在には上下関係がある模様だ。
一つの世界をそれぞれ担当するパラレルは、言うなれば平社員の様な存在で、現地に赴いてその管理を担当している。
この話を耳にした事で、その世界には各それぞれのパラレルが居る事が、私にも分かった。
そうかぁ……それぞれの世界に居るパラレルは、やっぱり別の存在だったんだなぁ……。
こう言うシステムがあるなんて、普通の人間は知らないからな。
ある意味、今回の一件で知った新事実と言えるだろう。
まぁ、そこはさて置いて。
現地を担当するパラレルの上司は、概ね数百から数千程度の並行世界に存在するパラレルを監視・管理するらしい。
名前は同じパラレルなのだが、これだと名前がごっちゃになってしまうので、一般的には『チーフ・パラレル』と呼ばれるらしい。
そして、このチーフ・パラレルを数千から数万程度束ねている『ハイ・パラレル』と言うのが居て……更に、ハイ・パラレルを統括する『パラレル・マネージャー』とか言うのまでいるらしい。
ここまで来ると、もはやパラレルの世界も、実社会のソレと大差ないな?
強いて言うのなら、その規模がとんでもなく大きいと言うだけの話なのかも知れない。
そして、パラレルが言うには、このパラレル・マネージャーを更に統括する、ナンバー・パラレルと言う存在まで行くと、混沌龍を単独で許諾する能力……または権限が発生するらしい。
ナンバー・パラレルと言うのは、その名の通りナンバーを持っていて……1から60億程度まであるとの事。
なんでそんなにいるんだよ……と言いたくなるのだが、並行世界って言うのはそれだけ無数に存在しているからなんだとか。
ポイントとなるのは、このナンバー・パラレル。
話しによると、60億程度『しか』居ない希少な存在であり、平のパラレルからすれば雲の上の存在らしい。
私の視点からするのなら60億『も』居る様に見えて仕方ないんだがな。
まぁ、パラレルの母体数が、例えばうん千垓とか、阿僧祇とか、不可思議などの様な、もはや無量大数に近い数値であったのするのであれば、60億と言う数値は確かに少ないのかも知れないんだけどな……?
まぁ、ここに関して述べると、話が進まなくなるので、数の話はここまでにして置こう。
この世界に混沌龍が召喚されて居たとするのであれば、このナンバー・パラレルが今の世界に降臨して居なければ考えられない話なのだと言う。
仮にこの世界を廃棄する事が決定するにしても、この世界の管理者であるパラレルの耳に届かない……なんて事は、流石にないらしく、なんの通知もないままにいきなり混沌龍が出て来る事は、まず有り得ない。
そこで、現実的ではないにせよ……仮に出現させる事が可能だったと仮定すれば、どんな方法があるのか?
パラレル曰く、それでも非現実的ではあるが、あるにはあるらしい。
ナンバー・パラレルの様な単独で混沌龍を召喚させる事が可能な存在が出現し、そのナンバー・パラレルの独断と偏見で混沌龍を召喚すれば、理屈の上ではちゃんと混沌龍が召喚されるのだそうだ。
リダが表現している数字の単位は分かり難いので、補足して置きます。
垓=10の24乗。
1000000000000000000000000の事。
阿僧祇=10の56乗の事。
前途の垓と同じ要領で0が56個続く。
数え切れないまでに無数……と言う、比喩としても使う。
不可思議=10の64乗の事。
書くのも馬鹿らしい程の0が続く。
阿僧祇と同様、比喩として使われる言葉でもあり、常識では測れない数値ないし、常軌を逸脱した計り知れない概念や物事……と、言う意味でも使う。




