同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【11】
アリンの言葉を聞いて初めて知った。
私とリガーの二人……その後ろにぴったりとくっ付いている形で、謎の胡散臭いフードで身体をスッポリ覆った男……つまり、パラレルが普通に立っていたのだ!
なんて奴だ!
全く、気付く事が出来なかったぞ!
つか、私ら電車でこっちに戻って来たんだぞ?
お前も乗車してたのなら……ちゃんと金を払ったのかっ⁉︎
その他、まるで背後霊染みた感覚で立っていた所が、思い切り気持ち悪い……などなど、色々と言ってやりたい気持ちで一杯になる私がいたんだが、
「うぉい! お前までここに来るんじゃないよ! 一体、何の権利があって私の自宅にまで上がり込んでるんだよ? 割とマジで⁉︎」
「権利ですか? それはリダさんと私の仲ですよ? これ以上の権利はないと思うのですが?」
「ふざけんな! 家に居る人間の許可がない以上は、完全なる住居侵入じゃないか! 普通に『お巡りさん、この人です!』の案件だぞ⁉︎」
一番言いたのは『勝手について来るな!』だ!
せめて、私の自宅にやって来るにしても、ちゃんと私に断ってからにしろよ! マジで私やリガーまで驚いたじゃないかっっ⁉︎
「……それで、その人は誰?……もしかして、おねーちゃんの二番目?」
どう言う意味で二番目としたんだ? お前は?
かなり困惑した顔になりながらも、頓珍漢な台詞を口にするアリン。
常識的に考えて、そんな発想が出来るのはお前だけだと思う。
「安心しろ、アリン……私はお前が考えている以上に、男の好みにはうるさいんだ」
「えぇっ⁉︎ そ、そうなのっ⁉︎ てっきり、男の人なら誰でも良いのかと思ったよ」
「そんな訳あるかぁぁぁっっ‼︎」
かなり真顔になって言うアリンに、私はこれ以上ないまでの勢いで喚き声を返してみせた。
……全く。
私の妹として、それなりに長く一緒にいたのなら、こんな事なんぞ言わなくても分かる事だろうに……。
「そ、それで? 二番目じゃないのなら……三番目?」
……オイ。
「取り敢えず、二番も三番もない。つか、恋愛関連から離れろ! 私は、フードを被っている様な不審者を好きになる趣味なんてない!」
「……ふ〜ん。それじゃあ、この人はなんでここに居るの? リダお姉の彼氏とか、彼氏二号とかじゃないのなら、こんな所に来る必要なんてないじゃない?」
「お前の頭は、男の知人を自宅に連れて来ると言う発想が出来ないのか……?」
更に言って来るアリンの言葉に、私はホトホト呆れてしまった。
……尤も、だ?
私としては、パラレルを自宅に招くつもりなんて、最初からなかったんだがな?
結局の所、不本意な気持ちが私になかったわけではない。
つか、どぉぉぉぉしてパラレルが私の自宅に上がり込んでいるんだよっ⁉︎
思った私は、間もなくパラレルの方へと顔を向ける。
そして、厳しい顔になってから口を開いた。
「オイ、パラレル……お前、マジでここに用事なんてないだろ? こう言うのは本気で困るんだよ? 頼むよ……100マールやるから、今日の所は帰ってくれないか?」
「……この世界の通貨は円ですよ? 100マール銀貨を持っているのなら、むしろ見てみたいぐらいなのですが?」
「そう言う細かい事は良いんだよ!」
くそ! 確かに100マールを持ってなかった!
……だけど、私が言いたいのは、そう言う事じゃないのだ!
「そもそも、お前は何の目的があって、私の自宅に来たんだ?」
「そんなの決まってます。リダさんの寝室にお邪魔して、紳士の嗜みを……いや、ウソウソ! 冗談です! 冗談ですから、右手! それはやっては行けません! 行けませんからね!」
しれっと変態行為を口にして来たパラレルがいたのだが、仄かな殺意を込めた右手を向けられた瞬間に、バタバタと両腕を振ってふためき始めた。
そう言う冗談は笑えないからよせ。
「分かってますよ! 本当はアリンちゃんの部屋に行って、紳士の嗜みを……」
ドォォォォォォォォンッッッ!
パラレルは爆発した。
だから、やめろと言ってるだろうにぃぃぃぃっっっ⁉︎
「……よし、変質者は爆発した。アリン、悪いけどこの犯罪者を下の管理人室の前に捨てといてくれないか?」
「……ええぇ……嫌だよ……この人、汚そうだし……触りたくないよ」
くそ! 私も触りたくない!
し、仕方ないな。
しかめ面したアリンを見て、間もなく私はリガーへと顔を向けた。
「そんな訳で、リガー。お前が捨ててくれない? 邪魔だし?」
「どんな訳だよっっ⁉︎」
「どんな訳……って、そ〜ゆ〜訳だよっっ!」
物凄い不本意な顔になって言うリガーに、私も思い切り素早く反論した。
言いたい事は分かるけど、私だって嫌なんだよ! 変質者の身体を触るのはっっ!




