同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【10】
けれど……何だろう? 物凄く頼もしい。
はは……やっぱりこれも、私の中にいるこの世界のリダが持っている感情なのかね?
それとも……私の……?
………。
こ、これ以上は考えるのを止めよう!
なんと無く……うん、なんとなぁ〜くではあるんだけど、危険な気がする!
そ、そもそも、さぁ?
この世界のリダは別として……私はちゃんと知っているんだよ。
リガーが私であると言う事実を、さ?
性別が違うと言うだけで、私と同じ記憶を持った、れっきとした同一人物なのだ!
そんな相手に……そ、そのぅ……こ、恋をするとか……ないない!
そんな事、あってたまるか!
心の中にある、珍妙な感情を強引に振り払うかの様に、心の中で叫びつつ……私はカリンが居るだろう自宅へと向かった。
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商店街から駅に向かい、そこから電車に乗って帰宅する。
……う〜むぅ。
何とも不思議な気分だ。
……いや、違うな?
なんて言うか、こうぅ……。
「こう言うのに乗ると、妙に懐かしい気分になるな?」
……そう! まさにそんな感じだ!
私なりに言葉を探していた頃、独りごちる感じで答えたリガーの台詞を耳にし、私も即座に共感していた。
結局の所、ここは色々と東京のソレに近い。
地理的な物は全く違うし……何なら、似通っている部分が点在していたとしても、やっぱり違う世界と言うか、異なる都市であるのが分かる。
まぁ、根本的に風景の中にある文字からして全然違うんだから、ここが東京であろう筈もないんだがな?
今乗っている物だって、外見こそ電車に見えるけど、実際には電気で走って居ないだろうし。
色々と細かい部分を考慮するのであれば、やっぱりここは全く異なる世界である事は、誰彼に説明するまでもなく分かる事だった。
けれど……そうだな?
「やっぱり、私達の世界よりも、色々と進歩しているって言うか……進歩の仕方が前世の時と似ているからなぁ……どうしても懐かしい気持ちになるのは、私も分かるよ」
私はちょっとだけ苦笑する形でリガーに答えた。
……と、こんな感じで軽く会話をしつつも……二駅で電車から降りる。
二駅ってのは、やっぱり早いな。
定期とは言え、ここまで距離が短いと……別に自転車でも良い気がする。
……あれかな?
自転車を買う金よりも、定期を買った方が良い……とか、そう言う考えで定期にしているのか?
まぁ……実際の所は、私にも良く分かっていないのだが。
何にせよ、私とリガーの二人は駅を降り……今の私が住んでいるマンションへと向かった。
「結構、良い所に住んでるんだな?」
「まぁ、否定はしないよ? 私の両親がそこそこの金持ちなんだろ? あるいは、頑張って貯金でもしてたか? どちらにしても、私が頑張った訳じゃないから」
「……まぁな? だけど、ちょっと羨ましいぜ? どう言う訳か、俺の家は下町にある長屋みたいな所だったからさ……?」
それはそれで、味があって良いと思うんだが?
ふと、そんな事を考えつつ……しかし、口に出して言うとリガーからの反感を受けそうだったので、敢えて言う事はなかった。
何となくだが……分かるんだよな。
こう言うのは、やっぱり同一人物マジック……と言う所なんだろうか?
ガチャッ!
自宅玄関前にやって来た私は、バックにあった鍵を差し込んでは解除する。
最近は、カードなのな?
良く、ホテルとかで見た事はあったけど……まさかマンションの鍵を解除するのもカードになっていたのは驚きだ。
もしかしたら、私の知る前世よりも、この世界の方が少しばかり進歩しているのかも知れない。
キーロックを解除し、玄関ドアを開けた私はリガーと二人で自宅のリビングへと向かって行く。
「おかえり〜! 遅かったね? リガーさんとは上手に……やり過ぎだよ、お姉ちゃん! 一回目のデートで自宅に連れて来るっ⁉︎ 来ないでしょう! 普通わぁっ⁉︎」
間もなく出迎える形でやって来たアリンのダミ声を、真っ向から受ける羽目になった。
……ただ、アリンの言い分も分かる。
そうな? 私だってそう思う。
けれど、ここにはちゃんとした理由があるんだよ?
「そして、リガーさんは百歩……ううん、一万飛んで五十歩百歩ぐらい譲っても良いけど! その後ろにいる、あからさまに怪しい人は誰っ⁉︎」
……はぁ?
私なりに事情を説明しようとしていた直後、アリンがおかしな台詞を私に叩き付けて来た。
一体、何を言っているんだ? この妹は?
一万飛んで五十歩百歩譲っている時点でおかしなボケ技をかましていると言うのに……この上、どんなボケが隠されて……え?
そこで気付いた。
アリンの言っている事は地味にボケてはいたけど、実はボケでもなんでもない意外な存在が、そこに立っていたと言う事実に!
つか、何でお前がいるんだよ! パラレルゥッッ⁉︎




