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同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【9】

「え? もしかして、既にある程度の目星を付けているのですか? それは素晴らしい! これで私もすぐにようつべを見て、普段のライフスタイルに戻れますね! では、早速その怪しい存在をぶちのめしに行きましょう! 善は急げです! さぁ、行きましょう!」


 ……コイツは。


 どうにも気乗りしない顔になっている私がいる中、パラレルは己の都合を全面的に出しながらも、陽気にはしゃいで見せる。


「そうだな? 確かにこう言う事は早めにやって置くべきだ。そこは私も否定しない……が、その前に」


 そこまで答えた私は、スゥ……っと右手をパラレルに構えた。


「へ? えっ⁉︎ い、いきなり何をするんですか、リダさん! あなたはちゃんと約束しましたよね? 私があなた達に話をすれば、爆破はしないと!」


 ……ああ、確かそんな話をして居たなぁ……リガーと。


「そうだったな? きっと、爆破魔法を使う事はないと思うぞ? 危害を加える事も約束していると思う……『リガーは』な?」


「……そ、そう言う屁理屈がまかり通ると思っているんですか! 横暴です! 虐待です! イジメ駄目! 絶対!」


「爆破はイジメに入らないから大丈夫だ!」


 ドォォォォォォォン!


 パラレルは爆発した。


 全く……本当に、人の心情と空気を読まない奴だ。


「……さて、行こうか」


 思いきり爆破された事で、完全に気絶していたパラレルを横目に、私は神妙な顔付きのまま歩き出した。


「行こう……って、何処に?」


「私の自宅だよ?」


「お前の自宅?」


「……ああ、そうだ」

 

 リガーの問いに私は短く頷いて、ゆっくりと歩き出した。

 程なくして、リガーも私の後を追う形でついて来る。


「パラレルの提示した条件に見合う人間が、密かに私の自宅には居るんだよ」


 真横にリガーがやって来て間もなく、私は口を動かした。


 パラレルが答えた条件。

 私の居る世界には存在して居ないが……この世界には存在する人間が、一人だけいるんだ。

 

 それは、元来の世界には存在していない、私の妹。

 

 そして、その妹の内……一人は続柄こそ違うが、ちゃんと存在している。

 

 そうなれば、残りはもう……一人しか居ない。



 カリン・ドーンテン。



 ……この世界でのみ、私の妹として存在する人物だ。 


「出来れば違ってくれたのなら、私としは嬉しいんだがな?……はは」


「……そうだな」


 ちょっと陰りのある笑みを作って答えた私に、リガーは短く相づちだけを打って来た。


 結局の所、コイツはやっぱりもう一人の私なのだろう。

 今ある、私の気持ちとか……そう言う物を、感覚だけで感じ取る事が出来るに違いない。


 はは……なんと言うか、言葉が要らないってのは便利な様で不便だな。

 私の中に生まれた疑念と葛藤まで、曖昧ながらもしっかり気付いてくれているのだから。


 ……そう。


 今の私は、少し葛藤している。

 ともすれば、これは私の感情ではなく、私の中に存在しているこの世界のリダが持っている感情なのかも知れない。


 ……これもまた、地味に厄介だ。


 理由はそこまで難しくはない。


 今の私にとって、その妹は……今朝会った程度の面識しかないレベルの相手であったからだ。


 だから、本当であるのならそこまで面識がある訳でもなく……まして、情が生まれる様なレベルには至らない……『筈』なのだ。


 しかし、どうだろう?

 物凄く……胸が痛い。

 まるで締め付けられるかの様に……心が痛い。


 記憶なんてない。

 全く……これっぽっちだって無くて、相手に対する妹としての愛情すら、欠片も生まれ様がないと言うのに。


 それでも……切ないんだ!

 昔から……物心付いた時からずっと一緒に居た家族を想うかの様に、胸が強く激しく締め付けられて仕方ないんだよ!


 こんなの……普通に考えたらあり得ない話で。

 私の記憶から考慮するのなら、天地がひっくり返っても起こる筈もない心理で……。


 それでも、現実として心が苦しくて。


 ……カリン。


 お前が、この世界へと私達を送った……黒幕だと言うのか?


 ……そうじゃないと言って欲しい。

 今の私が……ではなく、この世界に生きているリダが、そうであって欲しいと切実に願っている。


 実際に、この世界のリダが私へと直接言っている訳ではないんけど……そう言っている様に感じて仕方ない。


「リダ……まだ、確実にそうと決まった訳じゃないんだろ? そこまで気を落とすなよ」


 ……と、そこでリガーが私へと声を吐き出した。


 かなり言葉を選んでいたのが、私なりに分かった。

 きっと、それは私とリガーの仲だからこそ、すぐに分かった事柄なのかも知れない。


 私はリガーであり、リガーは私なのだから。


 ……やれやれ。

 今は、この世界のリダが持っている、余計な感情のおかげで麻痺しているのかねぇ……?


 どうにもこうにも、リガーが男前に見えて仕方ないよ! 全く!

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