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同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【8】

「……ふふ、私は知っています。リガーさん、あなたは言った『爆破はしない』と! つまり、別の方法で私を半殺しにするつもりですね? いけませんよ、リガーさん? そう言う言葉遊びは?……ちゃんと、あなたは私に約束するべきです! 私に一切の危害は加えないと!」


 直後……パラレルは、まるで鬼の首でも取ったかの様な態度で、ビミョーに疑り深い台詞を口から放って来た。


 いや、今のは普通にリガーが大人の対応を取っただけだろ?


「……チッ」


 ……あ、あれぇっ⁉︎


 今、軽く舌打ちした?

 ちょっと、リガーさん? 実は図星だったのかなっ⁉︎


「分かった、何もしない……これで良いだろう? ほら、宣言してやったぞ? サッサと言え。そうじゃないのなら、お前を地の果てまで追っては、完膚なきまで叩きのめすぞ?」


「わ、分かりました! 分かりましたから……そんなチンピラ紛いな目で睨まないで下さい! てか、まんまチンピラ……」


「まだ言うのか?」


「分かりました! 言います! この世界は、あなた達の知る世界と『基本的に変わりません!』変わっている様に見えるのは、別世界級に文明のレベルが違うからそう見えるだけで、それ以外は変わってません。だから、あなた達にとって『違いがある』何かは、怪しいと言えます」


 今にも胸ぐらを掴んで来そうな勢いになっていたリガーに対し、パラレルは早口で叫んで見せる。


 ……ふむ、なるほど。

 言いたい事は分かった。


 確かにこの世界は……私の知る世界と違う……違い過ぎる。

 それだけに、まるで異世界であるかの様な違和感を抱いているレベルではあるのだが……反面、共通している部分も確かに存在している。


 そこらを加味するのであれば、コイツの言わんとすべき内容も理解出来るのだ。


「……ただ、あなた達の知る事柄と異なりがあるからと言って、必ずしも怪しい存在と言う訳ではありません。この世界にだけある特徴的な相違と言うか、そう言う物が少なからずあります。例えばこの世界の通貨は『円』です。マールではありません。けれど、この差異は独特の概念に過ぎず、あなた達が調べなければならない怪しい物ではありません」


「じゃあ、どんなのが怪しいんだ?」


「……さぁ?」


「よーし! 爆発しようか?」


「待って下さい! 私も分かってないんですよ? 強いて言うのなら、対象を対人に絞って見ては如何いかがですか? 一番怪しいのは『あなたの世界には居なくて、こっちの世界には居る者』が怪しいです! 何なら、その人間こそが……あなたの世界に居る筈のパラレルかも知れませんよ?」


「……なんだと?」


 パラレルの言葉に、私は目を大きく見開いた。


 私やリガーの世界には存在せず、この世界にだけ存在する者。


 もし、この条件に見合う者が答えだと言うのであれば……。


「……うむぅ」


 私は思わず唸り声を上げてしまった。


「心当たりがあるのか、リダ?」


「……まぁ、無くもない」


 ただ、解せない。

 ソイツがパラレルだとして……私に何をやらせたかったのだろう?


 確か、この世界にやって来る前……ヤツは、私達に罰を与えると言っていた。


 しかし、実際にやって来た世界は罰を与える様な場所では無かった。

 むしろ、驚くまでに平和で、快適な生活すら可能な世界だった。


 仮に、私やリガーに罰を与えるのであれば、もっと悲惨な……壮絶な世界へと連れて行き、そこで私達を思う存分苦しめれば良いのだ。


 ……そう。

 ここは、決して地獄と表現出来る場所なんかじゃない。

 楽園には程遠い世界ではあっても、だ。


 そして、私の予測に間違いがなかったのなら……ヤツは……私達をこの世界に送り込んだ張本人は、物凄く身近な場所で安穏としている!


 これも分からない。

 私やリガーの二人が、この世界に居るパラレルと出会い……そして、この話をすれば、私がすぐに勘付く様なレベルの話でもあったからだ。


 ……まぁ、私の仮説が当たっていれば、なんだが。


 どちらにせよ、まだ確定ではない。


 この世界と私やリガーの世界との間にある相違は、この世界に生まれた独自性に過ぎない可能性だってあるのだ。


 個人的には、当たって欲しくない……と言う願望も加味しているんだがな?


「……正直に言うと、当たっては欲しくない相手ではある……な」


 私は呟く。

 近くにリガーが居たが、限りなく独り言に近い言い方をした。

 

「……そうか」


 リガーは頷きだけを返した。

 きっと、他に何か言いたい事があったんじゃないのか?……そう思える顔をしていた。


 けれど、敢えて何も言わない。

 恐らく、リガーなりに気を遣ったのだろう。


 少なからず、私の表情は……決して明るい顔をしては居なかったからだ。

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