同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【6】
「ともかく、私がリダさんが異世界の人間である事にすぐ気付く事が出来なかったのは、この半融合にあります。肉体的な物は完全にこの世界に生きているリダさんの物でありましたし……精神も精神で、半分はこの世界に生きているリダさんの物が存在しておりました」
……ふぅむ。
つまり、私が異世界の人間である事が、極めて分かりにくい構造になっていた……と言う事か。
「それで? この半融合と言うのは、すぐに戻せる物なのか?」
「……そうですね……半融合を解く事だけなら簡単です。解くだけならね……」
私の問いに、パラレルは少し含みのある台詞を口にしつつ、苦い顔になっていた。
……?
「……どう言う事だ?」
「さっきも言いましたが……半融合状態である為、完全に融合している状況と比較するのであれば恐ろしく簡単に引き剥がず事が出来ます。まさに着脱式であるかの様にアッサリと……が、です? 問題は二人の存在に戻した後にあります。精神を分離させる事は簡単であったとしても、その分離した先がない」
「……な、なるほどな!」
パラレルの言葉を耳にして、私は即座に理解した。
見れば、隣に立っていたリガーも納得する感じの顔になっている。
簡素に言うのなら、今の私は……私であって私でないのだ。
元来、この身体を扱う主は、私と精神を半融合しているらしいリダが使っている肉体に過ぎない。
私の肉体は別の所にある……そう、パラレルは言いたいのだろう。
けれど、そうなると……だな?
「それじゃあ、私の身体と言うか……私達の身体は何処にあるんだ?」
「……さぁ」
「いや『……さぁ?』じゃないよ! しかも、メチャクチャ他人事の様な態度で小首を傾げてんじゃないよ! こっちとしては他人事じゃ済まないんだぞっ⁉︎」
私は一気に怒りの思考が精神に充満しまくり、ソッコーでパラレルの胸ぐらを掴んで叫んだ!
「お、落ち着いて下さい! 私の素直な意見を言うのなら、まるっきり他人事です!」
「お前の意見を聞いてなど居ないんだよ、私わぁぁっ!」
元を正せば、貴様の親戚みたいなヤツがしでかした惨事じゃないか!
責任取って、お前も協力しろよ! 誠心誠意を持って! だっ⁉︎
「落ち着けリダ! 確かにパラレルさんは薄情かも知れないが、言っている事に間違いない!」
「待って下さいリガーさん! わ、私は全然薄情ではありませんよ! こんな、別のパラレルがやった不祥事なのに……それでも、ちゃんと親身になって対応してるではありませんか! 本当は適当にあしらって、サッサと自宅でようつべ見て過ごしたいのに! 御当地Vチューバーのゲーム実況とか見たいのに! それでも、あなた達の相手をして上げているんです! どうですか? これでも不誠実だと言うのですかっ⁉︎」
並行世界の管理者が、ようつべでゲーム実況動画見てんじゃねーよっ!
怒りで興奮状態になっていた私を制止する感じの声を吐き出すリガーへと、ツッコミ所満載な台詞を胸まで張って断言して来たパラレル。
本当にコイツは並行世界の管理者なんだろうか?
俗世界のエンターテインメントにどっぷりハマっている時点で、私的に言うとコイツは単なる胡散臭い占い師だ!
「ともかく……まずは、あなた達の本体を探す事。それが先決です……あ、それと、一つだけ言い忘れましたが、この世界に居るリダさんやリガーさんもあなた達の中でしっかりと『覚醒』しております。今はあなた達の記憶がメインとなっている為、思考が完全にシンクロしている『だけ』です。だから、例えば……感情とかですか? そう言うのは元来のリダさんをベースにしている場合もあります。今のリダさんやリガーさんが、互いに相手へと特殊な感情を抱いていると思うのですが、その感情はこの世界に居るリダさんやリガーさんの感情が混ざっている結果、そう言う感情になってま……え? リダさん? なんで右手を私に向けるのですか?……って、リガーさん? どうして私を押さえ付けるのです? いや……待ちましょう? 私が何かおかしな事を言いましたか? え? ちょっ……二人共、目が怖いんですが……ちょ、ちょっ! 助けてくだちぃぃぃっっ!」
ドォォォォォォォォォォンッッッ!
パラレルは爆発した。
……ふ。
馬鹿なヤツだ。
最後に余計な事さえ言わなければ、爆発しなかったと言う物を。
「私の身体……か」
私は、誰に言う訳でもなく呟いた。
「どうやら、ソイツを探す必要がありそうだが……何処にあるのかまでは分からない……か。面倒な話だぜ、ったく……」
程なくして、リガーが苦々しい顔になってぼやきを入れる。
しっかりと逃げられない様にする為、パラレルをガッチリ羽交い締めにしていたのだが、爆破と同時に素早く逃げてみせたらしい。
こう言う所は、やっぱり私だな?
あの一瞬で、しっかりと逃げ切る事の出来る身体能力には惚れ惚れするぞ。
……ん?
い、いや! 今の言葉のアヤだ!
べ、別に、コイツの事なんて……その、何とも思ってないぞ!




