同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【4】
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訳が分からない?
この世界のパラレルは特殊な存在なのか?
それとも、この世界のパラレルの目だけ節穴だとでも?
私の知る限り……初めて会ったパラレルは、私が言うまでもなく即座に気付いた。
私と言う存在が、完全に別の世界で生きている存在であると言う事実を……だ?
けれど、この世界に居るパラレルは違った。
「あなたはリダ・ドーンテンさん。ここから二駅程度先のマンションに住んでいる、銀乃内高校の学生……で、隣に居るリガーさんは同じクラスの男子生徒。違いますか?」
……うむ。
間違ってないな、これ。
パラレルは、スラスラと……まるで最初から知っていたかの様な口調で私とリガーの二人へと言って来た。
こんな事を可能にしている時点で、やっぱりコイツは普通の人間ではない。
そもそも、パラレルは人間などではないのだろう。
確か、秩序ある世界では、一定の束縛を受けてしまう為、人間の様な格好をしないと行けないルールがある……見たいな事を言っていた気がしたし、眼前に居るパラレルもまた同じ事情から人間の様な格好をしているんだろうと予測する事が出来る。
すると、やっぱり……コイツはパラレルである事に間違いはない。
でも、パラレルが……並行世界を管理している人間が、完全なる異世界人である私やリガーの二人を見て『この世界の人間』と言う台詞を、臆面もなく口にする物なのだろうか?
……おかしい。
「………」
それとなく横目でリガーを見ると……かなり難しい顔になって何かを考えていた。
もちろん、口は全く動かない。
そして、それは私も同じであった。
何とも悩ましい限りだ。
奇跡的にも、並行世界の管理者に再び遭遇する事が出来たと言うのに……全く予測する事も出来ないだろう台詞を、私達二人に浴びせて来たと言うのだから。
しばらくして。
「……お前が信用してくれるかは知らない。だが、俺やリダの二人はお前を探していた。並行世界の管理者であるお前であるのなら、俺達を元の世界へと帰る手段を教えてくれると考えていたからだ」
リガーは神妙な顔付きのまま、パラレルへと答える。
「……本当に不思議な事を言いますね? 私が並行世界の管理者である事は否定しません。貴方の連れと言えるリダさんが、私の加護を受けてますからね?………ん? 加護?」
リガーの言葉を耳にし、パラレルもまた肯定的な口調で声を返し……そして、小首を傾げた。
……ああ、そうか。
ここに来て、パラレルは一つの矛盾に気付いたのだろう。
「……変ですね? 私はリダさんに加護を与えた記憶がありません。するとどうでしょう? リダさんは私ではない別のパラレルから加護を与えられた……となります。うぅむ……これはおかしい。異世界に生きて居なければ成立しない」
しかし、パラレルには私がどうしても異世界人には見えないのだろう。
……それなのに、加護はちゃんと私にあるのだから、パラレルからすれば強烈な矛盾があり過ぎて、思い切り困惑してしまったに違いない。
「すいません、リダさん。ちょっと机の前に座っては頂けませんか?……あ、お代は結構ですので」
程なくして、パラレルは占いをする為に用意しているのだろう机の前に座ると、私を軽く手招きしてみせた。
「当たり前だ。私は占いをしに来た訳ではないぞ」
「そうですね? そこは否定しません。ただ拝観料千円で、貴女の未来を占う事は出来ますよ? 今のあなたなら……そうですねぇ? 恋愛運なんてどうです? かなり正確な診断と、今後のベストな展望を占う事が出来ますよ?」
「……へ?」
パラレルの言葉に、私はピクッと反応してしまった。
そ、そうか……恋愛運、かぁ……。
しかも『ベストな展開』を示唆する占いとか、出来たりするのか?
それで千円はオトクだな!
…………。
……って、違うぞ、私ぃぃぃっっ⁉︎
恋愛運なんか占って貰うんじゃないよ、私!
しかも、割と本気でドキッ! っとしている自分にムカつく!
挙げ句、後ろにはリガーが居るんだぞ?
コイツの前で、しれっと恋愛運とか占って貰えるかぁぁぁっっ⁉︎
「………………そう言う冗談は言わなくても良い。何か私に用事があるのなら、サッサとやってくれないか?」
「冗談と言う割には、随分と言葉の間が開いた気がしますし、ビミョーに顔が赤い気がしますが……ああ、はいはい。そう言う話ではありませんでしたね? だから右手をこっちに向けないで下さい。そして魔導式を紡ぐのを止めてはくれませんか? この肉体は貴方の超魔法に耐えられるほど強固には出来てません。案外、デリケートな身体なのですから」
余計な事を言うパラレルは、そこから言い訳紛いな台詞を口にしつつ……何か、特殊な魔法を使い始めて行った。
どうやら、ちゃんと真面目に行動をしている模様だ。
出来れば、最初から余計な事を言わずにやって欲しい所だった。




