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同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【3】

 実際問題、これには私も驚きを禁じ得ない。

 完璧に隠れていたとしか、他に表現する事が出来ない状態だったからだ。


 ちゃんと肉眼で捉える事が可能になった今であっても、いきなり降って沸いたかの様な現況には、やっぱり驚きの感情が何歩も先を行っていた。


 しかし、これだけ不思議な事が起こっているのにも関わらず……周囲に居る面々は一切驚く様子はない。


 これはどう言う事だろう?

 もしかして、この世界では人がポンッと、何の前触れもなく出現する事が、そこまで珍しい光景ではないと言う事なのだろうか?


 ……もしそうだとしたのなら、この世界にあるテクノロジーは凄まじいな!


「この私と共鳴する人間がいらっしゃるとは……少し驚きましたよ。あなたは『誰ですか?』少しばかり特殊な性質を持っている事だけは分かるのですが……?」


 少し間を置いてから、占い師をしている机の前に座っていた男……フードを被っていたので本人であるかの確認を取る事は出来なかったのだが、恐らくパラレルだろうと思われる人物が、私達に向かって声を掛けて来た。


 姿は、私の記憶と合致している。

 如何にも胡散臭いフードを被り、すっぽりと顔が覆われていたその姿は、まさに怪しい男の教科書見たいな奴だ。


 こんな格好のまま、商店街の片隅で占い師なんぞをしていたのなら、確実にお巡りさんが職質をして来るに決まっている。

 その時はなんて答えるのだろう? 職業は占い師です……とかって言うんだろうか?


 まぁ、そこはどうでも良い事なので、考えるのはここまでにして置こう。


「私の名前はリダ・ドーンテン。ちょっと事情があって、あんたを訪ねて来た」


 私は標準装備の怪しさを持つパラレルへと声を向けた。

 彼の言葉から冷静に判断するのであれば……きっと、このパラレルは初対面であったに違いない。


 この瞬間、私は一定の仮説を頭の中に立てていた。


 この世界に、どれだけの数の並行世界が存在しているのかは知らないが、複数ある並行世界の数だけ、パラレルは存在しているのではないのか?……と言う仮説だ。


 ともすれば、世界の数だけパラレルが存在しているのではなく、複数の世界を一人のパラレルが管理してはいるのだが、たまたま別のパラレルが担当している管理区に飛ばされていたから、世界が変わる度に別のパラレルと出会っているだけ……と言う可能性もあるんだが、そこを知る方法は私にはないし、今の所は詳しく知る必要性もないので、一応の仮説を立てると言う程度にして置こう。


 何にせよ……この世界に現存するパラレルは、私にとって友好的だったパラレルでも無ければ、私達をこの世界へと強引に送ったパラレルでもない、第三のパラレルであると言う事だけは分かった。


 すると、コイツは私達にとって、どんな行動をするのか分からない存在と言う事になるのか。


 場合によっては敵視される可能性もあると言う部分を考えた私は、慎重に言葉を選ぶ形で話をしようと心掛けた。


「リダ・ドーンテンさんですね? 分かりました。今後は名前を覚えて置きましょう? それで? 隣にいらっしゃる方は誰ですか? 彼氏さんですかね?」


「ち、ちが……い、いや、違わなくもないけど、違うんだ!」


 そして、パラレルの言葉を耳にした瞬間に、私の顔から湯気が飛び出そうになってしまう。


 直後、わたわたする形で、無造作に両手をバタバタと仰ぐ様な動きをしてみせる私がいた所で、


「アンタには嘘を言う必要も無さそうだな……ちょっと、この世界でリダと一緒に行動する関係上、恋人と言う体裁を取っている者だ。名前はリガー・ドーンテン。セカンド・ネームは一緒だが、単に同姓ってだけの話で、戸籍上は赤の他人だ……まぁ、この世界では、の話だがな?」


 リガーが、いつに無く神妙な顔付きになってパラレルへと口を開いた。


 ……ああ、そうか。

 私達が恋人と言う体裁を取っていたのは、飽くまでも自分達の世界へと帰るのに都合か良いから、仮初かりそめの恋人をしていたんだった。


 そうなれば、パラレルを相手に恋人風味な態度を互いに取る必要は無かったな!


 そうだよ……うむ! 全く以て、リガーの言う通りだ!


 でも、なんか物凄く否定したい気持ちがある……あるけど、この思考自体がおかしい事だから、思考の片隅へと強引に締め出して置こう!


「……そうですか。けれど変ですねぇ? あなた方の話を聞いている限り、あなた達は異世界からやって来た……そう言いたいのでしょう?」


 リガーの言葉を耳にしたパラレルは……何故か、ここで小首を傾げる様な仕草をしてみせた。


 そして、言うのだ。


「見た所……私にはあなた方が『異世界の人間には見えない』のですよ?」


 私とリガーが唖然となる様な台詞を、だ!

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