リダさん、死闘の果てに!【1】
もう、これで何回目になるんだろう?
三回目か?
ともかく、またも私は夢を強制的に見せられていた。
今回の夢は随分と酷い。
何と言うか、趣味が悪いな。
強烈かつインパクトは過去最大で、願わくは二度と見たくもない悪夢。
それが今回の夢だ。
具体的に言うと、私が死んだ時の夢だった。
ドンッッッッ!
二回目の時に見た夢で、前世の記憶がある程度まで私の中に入って来たせいか、それが何なのか分かった。
八tトラックだ。
私の最期は、居眠り半分に運転していた......実に無責任な運転手の顔だった。
瞬間......私の全思考が停止した。
飛ばされると思ったんだが、結構人は飛ばないのな?
そのままなぎ倒された私は......うぁ。
頭から血を流し、虚ろな瞳で転がっていた。
覆い被さる様にしてアインが倒れているのも分かった。
どうしてこんな事が分かるのかって?
事故後、完全に自分の死体を客観視してる、もう一人の私がいたからだよ。
きっと、他の人間には見えていないのだろう。
まるで透明人間にでもなったかの様な気持ちになっていた私。
あちこちが騒然となっている中、私は冷静な眼差しで私の死体を見た。
ああ......これはダメだな。
完全に即死状態だ。
ま、当然か。
そうじゃなかったのなら、今の私が透明してる訳がないのだから。
『......ん?』
その時、私の身体がフワリと浮いた。
まるで、私の身体が水素をパンパンに入れた風船にでもなったかの様に。
あるいは、飛行魔法を初めて覚えた時の様に。
思えば、初めて飛行魔法を覚えた時は、身体が勝手に浮き過ぎて......思いきり戸惑った記憶がある。
まぁ、ともかく......その時と似た様な、フワッとした感覚が私の中で生まれると、
『......ちょっと、待て』
そのまま、重力を完全に無視する形で上空へと飛んでしまう。
当然、私の意思とは無関係な為、抵抗しようにも抵抗のしようがない。
『どうなってるんだい......全く』
仕方ないから、そのまま抗う事をやめにした私は、そのままフワフワゆっくりと上昇して行く。
そこから、どの位の時間が経過しただろう?
もの凄く長かった気もするし、逆にアッと言う間だった気もする。
この透明な身体になってしまうと、時間の概念があやふやになってしまうのかも知れない。
なんとなくだが、私はそう思った。
気付くと、これまで青空だった周囲が暗くなって行き......建物の屋根が見えなくなると、天気予報とかで見た様な地図状の物に変化して行って......最終的には青い球体になった。
ああ、なるほど。
確かに地球は青いや。
かなり達観した事を胸中でのみ呟いていた時だった。
『......今度はなんだ?』
いきなり、周囲が早くなった。
これまでゆっくりと、ただ浮いてるだけにしか見えなかった星の様な物が、まるで流星にでもなったかの様に素早く飛んで行っては消えるを何度も何回も繰り返して行く。
そんな状態がしばらく続いた。
幾分かの時間が経過してから気付く。
......ああ、そうか。
星が早くなってるんじゃなくて、私自身が物凄い早さで飛んでいるんだ。
......と言う答えに辿り着いた所で、周囲の視界が開けた。
当然、全く分からない場所だった。
私が分かる事と言ったら、目で見て分かる事くらいか?
そこは宇宙の中にある神殿の様な......見事に不思議な場所だった。
全く......なんて日だ。
夢とは言え臨死体験させられた挙げ句、不可思議の集大成染みた場所にやって来る羽目になるとは。
正直、これが夢だと言う事はもう分かっている。
だから、ついつい思った。
『いい加減、目を覚ませよ......私』
これで目を覚ます事が出来たのだったら苦労はしない。
一体、いつまで私はこんなヘンテコな夢に付き合わないと行けないんだろう?
辟易しながらも、重くなってる足取りそのままに、宇宙の中にある神殿へと入って見せた。
中は、普通に神殿だった。
中世ヨーロッパとかでは、比較的良く建造されてたんじゃないかな?
ふと、客観的な感想を抱きつつ先を進んで行くと、
『今回のお客さんは、随分と若い娘なのですね』
.........。
穏やかな声を私に向ける女がいた。
いや、いるんだ。
いるんだけど、だ!
『おい、キノコ頭......これは何の冗談だ?』
私はしかめ面で言う。
いや、だってだ?
神殿の中にいた女は......どー見ても、私の知るマッシュルームな女。
頭はキノコなのに、名前は柑橘系とか言うふざけた名前の女。
『どうして、ここにお前がいるんだよ、みかんっ!』
私はツッコミ半分にがなり立てた!




