同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【2】
商店街までの道のりは、不気味なまでに一緒だった。
周囲にある建物は全く違うし……なんなら、道を歩く通行人の服装などを取っても、全くの別世界にいる様にしか見えないと言う感想しか、私にはなかったりもするのだが……反面、地理的な物は寸分の狂いもなかった。
ここまで一緒であると、やっぱりここは異世界の様に見えて、実は私の世界にあるのだろう何処かの時間軸から枝分かれした事で生まれた並行世界である可能性も否めない。
結局の所、その予測が当たっているのかは不明ではあるし、それが当たっていたとしても、なんからの打開策が生まれるとも思っていない。
まぁ、つまり……私からするのであれば、どちらでも構わないと言うのが、正直な所だな。
なんにせよ、地理的には私の知る世界と全く同じだった為、一切迷う事なく商店街へとやって来る事が出来た。
「こう言う光景を見ると……なんつーか、前世を思い出すよな」
商店街にやって来て間もなく、リガーはそれとなく私へと声を吐き出して来た。
この言葉に、私は素早く相づちを打つ。
思えば、コイツも私であるのだから、前世までは全くの同一人物であったに違いない。
なんなら、リガーが持っている記憶だって、寸分の狂いもなく全く同じ物を持っているだろう。
本当……どうして、前世までは全くの同一人物と言えた人間と、こうして普通に会話をする事が出来ているのか?
アメーバーじゃあるまいし……何処かで分離でもしたとでも言うのだろうか?
何とも奇妙で奇天烈な体験をしているなぁ……と、改めて実感してしまう。
私とリガーの二人は、そのまま二人で商店街の中へと入って行った。
記憶が確かであるのなら、パラレルは商店街の外れの方で、ひっそりと占い師をやっていた。
本当にひっそりと……街の背景になっているレベルで、静かにやっていた事だけは、今でも印象に残っている。
意識する事がなかったのなら、街の背景程度の感覚しかなかっただろうが……余りにもインパクトのある台詞をこの時に言われていた為……結果として、印象に残ってしまったと言うイメージだ。
「この辺に居たな? 確か」
だからと言うのも変な話ではあるが、しっかりと正確な場所を記憶していた私は、以前の並行世界にて、三歳児のアリンと一緒に出会ったパラレルの場所までやって来ては……その場所を軽く指差してみせた。
果たして、
「……何もないな?」
ポツリと答えたリガーの台詞が全てを語っていた。
実際、そこには何もなかった。
ある物と言えば、肉屋の建物と思える壁のみ。
それ以外は特に何もない……単なる歩行者の通路と形容出来る場所だった。
……まぁ、そうだよな?
他の世界でパラレルが、ここで占い師をやっていたからと言って、この世界でも同じ事をやっているとは限らない。
可能性からするのであれば、こんな所で怪しい占い師をしている方が低いに決まっているのだ。
「……どうやら、無駄足になってしまったか」
私は肩を竦めてリガーに答えた。
当然と言えば当然の結果に、少し残念な顔になりつつ……しかし、理解も出来る結果でもあった為、苦笑して諦める感じの態度を取っていたのだが、
ポゥゥゥゥ………
その時、私の胸元から、淡い光の様な物が生まれた。
「……っ⁉︎」
私は思わず目を白黒させてしまった。
他方のリガーは、
「これは、もしかしたら……何かあるかも知れないな? はは、やっぱりお前を連れて来たのは正解だったぜ」
少し期待する感じの笑みを浮かべて口を開いていた。
そうと答えたリガーの言葉通り、私も知らない特殊な何かが、私の中で起こっていた。
本当に訳が分からない!
ちょっと困惑の色を隠せない私がいたのだが……しかし、それでも心の何処かで納得する私もいた。
きっと、これが能力の共鳴だろう。
つまり、私の中に存在しているパラレルの加護が生み出した、能力の共鳴だ。
そして、この予測が当たっているのであれば……この場所にパラレルは居る。
今の私達には見えないと言うだけの話で、実際にはパラレルは自分達の視界に入るだろう場所に存在していると言う事になるのだ。
……と、ここまで考えていた時だった。
今の今まで全く存在して居なかった物が、徐々に……うっすらと姿を現して行き、最終的にクッキリと肉眼で捉える様になって行く。
「こいつは驚いたな……どんな潜伏能力を使っていたのか知らないけど……ここまで完璧に隠れる事を可能にしていたヤツがいた事に驚くぜ」
完全にクッキリと目に見える様になって行き……これまで無かった占い師の机とセットで出現した胡散臭い占い師の格好をした男を見て、リガーは顔でも驚いた表情を作りながらも声を吐き出した。




