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同一人物の筈なのに、何故か別の人間として存在している世界【1】

「いつまで手を掴んでいるつもりだ、リガー! もう良いだろ? 離せよ!」


 校門を抜け、小走りに近い状態のまま私の手を引っ張り続けたリガーに、私は声を大にして叫んだ。

 微妙に緊張していたせいで、地味に声が上擦うわずっていたのは秘密だ。


「……そうだな。確かに手を握っている必要は無さそうだ」


 私に言われたリガーは、間もなく歩くスピードを遅くした上で、掴んでいた私の手を放した。


 ……う。


 なんだろう?

 手を離された瞬間、ちょっぴり寂しい気持ちになってしまったのだが?


 ………。


 い、いや! 違うぞ、リダ・ドーンテンッ! それは大きく間違った思考だ!

 

 普通に考えろ? リガーは別に恋人としての感情を持って、私の手を握っていた訳ではない!

 それ以前に、人の手を勝手に掴んで来たリガーの束縛からようやく開放されたんだぞ? むしろ、清々した気持ちになるのが道理ではないのかっ⁉︎


 ……な、なのに、どうしてこんな……物足りない気持ちと言うか……握ってくれた時に感じた温もりを、もう一度味わいたい気持ちになってしまうんだっ⁉︎


 ……く、くそ……。

 マジでおかしい。


 自分でも良く分からない部分で、妙な感情が無秩序になだれ込んでいるかの様な?

 そんな……自分の事なのに、自分の事ではない様な……どうにもこうにも、言葉で表現する事が難しいアクシデントの様な感情が、私の中に生まれていた。


 こんなおかしな感情は排除だ!

 ともかく、冷静になって考えて見るのなら、間違いなく今の私が変なのだ。

 

 そもそも、コイツはもう一人の私なんだぞっ⁉︎

 もう、何回も自分に対して訴え掛けている、至極当然の事実なんだぞ⁉︎


 ……なのに……それなのに……どうして、こんなにもドキドキするんだよ? 私わぁっっ!


「……さっきから、顔が無駄に赤いが、大丈夫かリダ? 実は熱があるとかないよな?」


 ……って、そう言う事を言うんじゃないよ!

 妙に緊張して、ソワソワした感覚が、意識の表面上を支配していた頃、不思議そうな顔になったリガーが私へと口を開いて来る。


「……熱があった方が、私としてはむしろ助かったよ」


 私は、地味にうそぶいたセリフを口にした。


「……? 取り敢えず、熱はないんだな? それなら良し」


 本当は良くないんだがな!

 けれど、気にしないでくれた方が、私としては嬉しいから、そのセリフで良いや!


 一定の確認を取る形で声を返したリガーは、間もなく私の前をゆっくりと歩き出した。


 ……あ。

 なんだろう?

 なんか『素っ気ないなぁ……?』などと言う気持ちとか生まれるんだが?


 ………。


 いやいやいや!

 今のは普通だろっ⁉︎


 なんで、今の私はリガーに期待してるんだ⁉︎

 つか、何を期待してるんだぁぁぁっ!


 くぅぅ!

 笑えない! 今の私は、完全に頭がおかしな事になっている……おかし過ぎて、自分でも大きく困惑しまくっているぞ!


 と、ともかく……こう言う時は深呼吸だ。

 もっと落ち着いて……冷静になるべきタイミングだ!


「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」


「……なんで深呼吸してるんだよ? お前?」


「喧しいよ! 放っておいてくれないかっ!」


「……わ、分かった」


 深呼吸した直後、不思議そうな顔をして言うリガーにがなり声を返すと、リガーも根負けした感じで口を開く。


 ……本来、平静になる為にやった行為ではあったのだが、リガーに見られた事を悟った瞬間、顔から湯気が出て来る勢いで顔が火照ほて上がってしまい、余計に精神が乱れる羽目になってしまった。

 完全に裏目に出てしまったではないか!

 つか、こっち見るんじゃないよ! お前は素直に前を見てろ!


 ……でも、私を意識してくれた事は、嬉しかったぞ……。


 …………。


 よぉ〜し、分かった!

 私は悟った!


 つまり、これはリガーを意識しなければ良いのだ!

 

「リガー……お前は、前だけを見ておけ。良いか? 商店街に到着するまでは私を見るな? もし破ったら爆発するからな?」


「……は?」


 リガーはポカンとした顔になって私を見る。

 ……と、同時に私は素早くヤツの眼前に右手を向けた。


「………」


 リガー、絶句。

 その顔は、とてつもない理不尽を抱いている者にしか作り出す事の出来ない表情をアリアリと見せてはいたのだが、


「……わ、分かったから、その右手を俺に向けるんじゃない」


 ワンテンポ置いて、私の本気度を知ったリガーは素早く前を向いて、再び商店街へと向けて歩き出した。


 ……それで良いのだ。


 ……そう。

 これで……良い。


 良いんだけど……ちょっとぐらいなら、私を見てくれても構わないぞ?


 ……って、違う!


 ともかく、これでリガーはこっちを見ない!

 私もリガーを不必要に意識しない!

 これで、商店街までは貫き通すぞ!


 私はそうと自分に言い聞かせる形で、リガーと二人で学校の付近にある商店街まで向かった。

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