全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【22】
……そう。
ポイントはそこなのだ。
この世界に居るアリンは、本当にこの世界に存在しているアリンだ。
私の世界に存在しているアリンではない。
つまり、この世界に居るアリンを不用意に巻き込む訳には行かない!
並行世界を管理する者……パラレルの怒りに触れ、なんの関係もない筈のアリンに危害が及ぶ可能性は、決してゼロなんかじゃない。
私の知り得る限り、パラレルと言う存在は複数人存在している模様ではあるし? この世界にパラレルが居たとして……私達に友好的なパラレルである可能性だってある。
しかし、その逆もまた然りだ。
場合によっては、この世界に存在するパラレルも私達にとって害悪な存在である可能性だって十二分に考えられるし、アリンが巻き込まれてしまう危険性だって相応に存在していると言わざる得ない。
こんな状況なのだ。
アリンには悪いが……ここは素直に騙されて欲しいと、私なりに強く思っていた。
故に、私はリガーとの関係をしっかりと認めてくれたアリンを見て、ホッと安堵の息を漏らしている所だった……んだけど、だっ⁉︎
「……なんか、地味に気不味いな」
こんな事を言うリガーの言葉通り、なんともビミョーな空気が出来上がっていた。
私達二人がハッと我に返った事により、周囲にいた野次馬チックな生徒達は、そそくさと蜘蛛の子を散らす様に下校して行ったのだが……やらかした感は拭えない。
この調子だと、明日には妙な噂が学内で立っている可能性だってある。
場合によっては、さっきのシーンをスクショしていた輩なんぞが居て……更にフェイスブック辺りに投稿なんぞしていた日には目も当てられない!
教師の目に止まったら……マジで何を言われるか分からないぞ!
「と、取り敢えず……行こうか」
リガーは苦笑しながら答え、私の手を握りながらも歩き出した。
……って! 普通に手を握るんじゃないよ! 馴れ馴れしいなっ⁉︎
そして、私!
リガーに手を握られた程度で、どぉぉぉぉして顔を真っ赤にしてるっ⁉︎
しかも、みょ〜に意識して……なんか、手汗が止まらないんだがっ⁉︎
……って、私は乙女かよっ⁉︎
……いや、乙女だった!
………。
く、くぅぅっ!
色々と否定したいが……否定出来ない所があり過ぎて笑えんっ!
コイツは私だ……コイツは同じ存在だ!
違うのは性別だけなんだっ!
心の中で何回も叫ぶ私が居る!
なのに……それなのにっ!
どぉぉぉぉして心がこんなにも揺れてしまうんだぁっっ⁉︎
反発したい意思と……徒らに押し寄せて来る感情の二つが、私の思考を大きく暴れまくる!
くそ!……ほ、本当に……私の頭は、どうなっていると言うんだ⁉︎
途方もなく困惑する私が居る中、
「……えぇと、いってらっしゃい。ちゃんと晩ご飯までには帰って来てね?」
私とリガーの関係を認めていたアリンが、止める事なく手を振っていた。
……で、出来れば止めて欲しかったなぁ……。
け、けれど、リガーと二人で商店街へと向かうと言う選択をしたのは……他でもない私だ。
つまり、リガーに手を連れられて歩くと言う、恐ろしく恥ずかしいシチュエーションを生み出す切っ掛けを作り出したのは、他でもない自分自身だった!
クソッ!
そんな事は分かってる!
今更、それを止めて欲しいなんて言うのは、かなり矛盾しているし、とんでもなく虫の良い話なんだ。
けれど……でも。
さっきの私と今の私は……こうぅ……心の中にある心境が全く違う!
なんと言うか……このまま心が暴走してしまうと、戻って来れない所に行ってしまう様な気がして……物凄く怖いんだっ!
だから、このタイミングでアリンが止めに入っていたのなら、私は素直にアリンの肩を持って、そのまま自宅へと帰って行ったであろう。
しかし、もう……遅過ぎた。
アリンは、私を止める事はない。
……うぁぁぁ。
こ、これ……ど、どうなるのっ⁉︎
わ、私、何処に行くのっ⁉︎
………。
商店街に決まってるし! それ意外の何処に行く気だ、私!
何やら、妙におかしなボケを自問自答する形でかましていた私は、手を引っ張られる形で早足のまま商店街へと向かおうとしているリガーと一緒に、その場を離れて行くのだった。
……と言った所で、今回はここまで!
次回に続く!




