全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【20】
どうやら、私はアリンをかなり甘く見ていた模様だ。
思えば、三歳のアリンですら、そんじゃそこらの三歳児とは比較にもならないまでの頭脳を当然の様に持っていたのだ。
そう考えるのであれば、十五歳になっているだろう今のアリンが、三歳のアリンを大幅に凌駕するだけの頭脳を持っていても、なんらおかしな事ではなかった!
そして、三歳児と比較すれば、話にもならないまでの推理力があると言う事も!
まずいぞ……このままでは、アリンにリガーとの間にあるフェイク恋人の関係がバレてしまう!
そうと、心の中で大きく狼狽していた時だった。
私は、リガーにグイッ! っと身体を引っ張られた。
「……へ?」
思わずポカンとなってしまう私。
まさか、リガーがそんな事をして来るとは思わなかった!
まさに想定外であった為、私は抵抗する事も出来ないまま……リガーの胸元にすっぽりと収まってしまう。
……っ⁉︎
こ、これは……どう言う構図なのかな?
思わずオロオロした私が居る中、
「口で言っても分からないのなら、態度で示してやるよ? どうだい? これで俺とリダが恋人だって分かったかい?」
リガーは、爽やかに微笑みながらもアリンへと言う。
すると、アリンも何処か納得混じりになって声を吐き出した。
「なるほど、そう来ましたか?……確かに、恋人同士じゃなかったのなら、校門の前で男女が抱きしめ合うなんて事は出来ないと思います。この状況を生活指導の先生が見たら、その場で指導室へと連行されてしまう可能性だってあるレベルです! そして、周囲を歩いている下校途中の生徒からすれば『こんな所でイチャ付いてんじゃねーよ!』と、無駄な反感を買う様な行為を平然とやっている事も認めます!」
ぐはぁぁぁぁぁっっっ!
叫ぶアリンの台詞を耳にした瞬間、私の顔から火炎放射しちゃってるんじゃないのか? って形容したくなるまでに真っ赤な状態になってしまった。
これでは、良い見世物じゃないかっ!
私は、そこまで晒し者になるつもりはないぞ!
「……って言えば、リダお姉ちゃんは顔を真っ赤にするでしょ? そして、思い切り慌てるでしょっ⁉︎ どうして慌てるのかは知ってるよ? お姉ちゃんとリガーさんは、まだ恋人とかの関係じゃないから! リガーさんは、上手に演技しているけど、私の目は騙されない! 何故なら、おねーちゃんは演技なんて全然出来ない、残念な子だからだよ!」
アリンは勝ち誇った顔をして、ビシィッ! っとリガーと私を指差して来た。
……って、勝手に人を残念な子にするんじゃないよ!
どんだけ私をバカにしてるんだ? お前はっっ⁉︎
「リダが緊張しているのはさ? まだ付き合って時間が経ってないからだ。俺もリダの彼氏になって、まだ数時間程度しかないからな?……けれど、こう言うのは時間が解決してくれる。そう思わないか?」
間もなくして、リガーはしっかりとアリンに反論してみせた。
「……う」
この言葉にアリンは思わず口籠る。
確かに一理ある台詞でもあったからだ。
恋人同士になったからと言って、次の瞬間からいきなりイチャイチャ出来る様な関係になんぞならない。
それが出来るのであれば、既にある程度の経験があり、既に恋人同士に近い関係を築いていたに違いないのだ。
しかし、世の中に存在するカップルと言うのは、必ずしも紆余曲折の様な物があった末に付き合う……と言う感じのカップルばかりではない。
中には、互いに対した面識もないままに、お付き合いを始めるカップルだって居るだろう。
例えば、男なり女なりが、それぞれ異性に対して恋情を抱き、相手へと告白をする形を取ったとしよう。
そして、そこまでの面識があった訳ではないとして……この告白が成功した場合、紆余曲折があるドラマなんぞ経由せずとも恋人同士と言う構図が出来上がるのだ。
つまり、私とリガーの関係は、この状態だ……と言っているのである。
「それでも、やっぱり腑に落ちないんです、リガーさん! だってあのおねーちゃんですよ? 同人誌とコスプレに命を懸けていて、恋人は乙女ゲーのキャラと言う、あのおねーちゃんが、こうもアッサリとリアル彼氏を作るなんて……考えられませんっ!」
しかし、アリンは食い下がる。
どうしてお前は、そこまでしつこく食い下がるんだよ……?
そして、お前はお姉ちゃんを何だと思っているんだよ!
もう少し、姉を敬えよ!
「……仕方ない。これだけは使いたくなかったんだが……」
無駄に食い下がり……私をディスっているとしか、他に表現する事の出来ない台詞を連発して来たアリンに対し、リガーは少し意を決する形で口を動かして行った。
……?
リガー……お前、何を?




