全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【19】
「……あれがアリンなのか? なんか、お前ソックリだな? へぇ……可愛く育つのか」
その頃、私の隣を歩くリガーが、まるで品定めでもするかの様な目線でアリンを見据えていた。
きっと、この世界のアリンを見たのは、これが初めてだったのだろう。
当然と言えば当然か……私だって、今朝初めて見たんだからな。
「……? この人は?」
私の姿を見付けて間もなく……隣を歩いていたリガーを見て、少し不思議な顔になっていた。
そりゃ、まぁ……そうな?
初めて見る相手……しかも、男子生徒が隣を歩いていたのだから、小首を傾げる様な心境になってしまうのは仕方がない話ではあった。
「ああ、コイツはリガーって名前で、私の……」
「恋人のリガーだ。よろしくな!」
「……って、いきなりストレートに言うんじゃないよっ⁉︎」
何で、お前はそう言う話を簡単にポンポンと口から出す事が出来るんだ!
「……え? こ、恋人っ⁉︎」
アリンは、リガーの言葉を耳にして、思い切りびっくりする。
そして、ササッ! っと、私の前にやって来ては、ソッ……っと耳打ちして来た。
『お、おねーちゃん……それ、本当なの? もし本当なら、明日は大雪が降りそうな気がするんだけど?』
中々に大概な台詞を、真剣な顔して言うんじゃないよ! バカなのか? この妹はっ⁉︎
「一つ言おう。私はお前が考えている以上に魅力がある女をしているぞ? 私がその気になれば、男の一人や二人……超楽勝に作る事が出来るんだぞ?」
「いや、そう言う妄想は良いから? 私が聞いているのは、妄想とか願望とか、そう言うのではなく現実だから」
間違いなく真実と言えるだろう私の正論に対し、アリンはあたかもイタイ人でも見るかの様な態度で声を返して来た。
マジで可愛くないヤツだなっ!
お前は、私の何を根拠にして、そんなふざけた事を吐かしてるんだよっ!
腐女子か? コスプレ好きな所かっ⁉︎ 某イベントには欠かさず行く所かっ⁉︎
くそっ!
確かに、男ウケする要素がないではないかっ!
自分で言うのも難だけど、確かにアリンの言い分は分かった!
マジで、この世界の私よ! もう少し、自粛しろ!
「良くは分かってないが……リダと付き合っているのは間違いないぞ? そこは俺が保証する! 何年保証が良い?」
保証書付きですか?
しかも、保証期間をこっちで選べるんですか?
アンタは何者ですかねぇっ⁉︎
大概過ぎて、どんな返答をして良いのか悩んでいた私がいた頃、
「可能であれば、無期限にしてくれませんか?……ほら、ウチのおねーちゃんって……アレなんで!」
アレって何だよっ! アレって!
にこやかに失礼スペシャルな事をしれっと言っているアリン。
本当に、コイツは……。
「無期限か……まぁ、頑張ってはみるよ」
そして、お前も良い加減、そのボケを引っ張るんじゃないよっ!
しかも、悩むなよ! 私と恋人でいる権利なんだぞ!
そこで、大きく悩まれたら、私の立つ瀬がないだろ! むしろ喜べよ!
何とも不本意な状況が続く物の……しかし、恋人と言うフェイクだけは、しっかりと続ける必要がある。
恋人と言う関係を持つ事で、二人きりの状況で居ても何ら不自然な事ではなく、行動自体もリガーを優先する事が、ある程度までなら口上として使う事が可能になるだろう。
「まぁ、そう言う事でな? 突然ではあるんだが……ちょっとばかりリガーと一緒に商店街の方に向かう用事が出来てしまってな? 悪いが、今日の所は一人で先に自宅へと帰ってくれないか?」
私は申し訳ない顔になってアリンへと答えた。
「……なるほどねぇ? 言いたい事は分かったよ?……分かったけど」
私の言葉を耳にしたアリンは……なんだろう? 微妙に怪訝な顔になって声を返して来る。
「なんて言うか、さ? お姉ちゃん……私に隠し事してない? 妹の私に? 同じ家族なのに?……なんか、それ……寂しいんだけど?」
おうふっ!
「隠し事なんてしてないぞ?……ほ、ほら! どう見ても私とリガーは恋人同士だろ? それ以上でも以下でもない!」
「……本当かなぁ? そこも、なんか怪しい」
平静を装いながらも答えた私の言葉に……しかし、アリンはむしろ余計怪しむ様な態度を見せて、私へと声を返して来た。
……ぐぅむ。
何と言うか、アリンはやっぱりビミョーに鋭い。
きっと、そこに大きな根拠はないのだろう。
しかし、それでも私がアリンへと嘘を吐いていると言う事だけは、なんとなく勘付いている模様だ。
更に鋭いのは、だ?
「お姉ちゃんってさ? 何か、物凄い悩みと言うか、問題を抱えているんじゃないの?……だから、リガーさんだっけ? その人と『恋人をする』事になったんじゃないの?」
かなり怪訝な顔になって言うアリン。
もうね、心を見透かされている様な気持ちにさえなってしまったよ!




