全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【16】
「……まぁ、そんなに怒るな。俺もちょっとからかい過ぎた……反省してる」
程なくして、リガーはいつになく真剣な顔になって、私へと頭を下げて来た。
……そう言う態度に出られると、私も悪い気はしない。
きっと、リガーも私に気を許しているからこその冗談であったんだろうからな。
……けど、ルミやフラウに恋人宣言した事だけは、許せんのだが?
「まぁ、この場は許してやらん事もない……ないが、お前は何を考えているんだ? ルミやフラウの前で付き合ってます!……とか、冗談でも怒るぞ?」
「……ああ、あれな? そっちの方が便利だろ? 色々と」
「……便利?」
「そうだ。考えても見ろ? 現状でこの世界にやって来ているだろう人間は、俺とお前の二人だけだ……で? 俺とお前の二人が一緒に居ても怪しまれない様にする手っ取り早い方法と言えば、どうなる? 恋人って事にしておけば、そこまで不自然な理由を考える事なく、すんなりと言えるだろう?」
……まぁ、確かに。
「それに、恋人……って言っても、だ? 俺やお前はこの世界の住人じゃない。早ければ数日もしない内にオサラバする様な存在だ。そんな人間が、この世界の連中にどんな目で見られても問題はないだろう?」
「……う〜むぅ」
リガーの言葉を耳にして、私は少しだけ唸り声を出してしまった。
この世界にどの程度滞在する事になるのか分からないが……確かに、短期間で終わる可能性は否めない。
私とリガーが恋人関係……って事になった所で、それは短期間のみ限定のフェイク恋人だ。
この間だけ、恋人……って言う事にさえして置けば、私とリガーの二人は割と普通に二人で動く事が可能になるし、この世界にいるもう一人の私に対しての良い復讐にもなる。
……そう!
これは、私なりの仕返しだ!
この世界にいる私が、もっと学生らしい健全な生活をちゃんと送っていたのなら、ルミやフラウだって、もっとちゃんとした学生になっていたろうし? 私だってディープなオタクとして見られる事もなかった!
現代の世では、割とオタクである事をオープンにしている人間も多いし、そう言う人間はむしろ自分に素直な人間として、私個人は称賛しても良いとさえ思える。
明るく正しい……と言うか、嘘をつかないと言う意味では、素晴らしい性質だと思っている。
……いるけど、私は本当にその手の事をしてないのだ!
それが悪いと言う訳でもないし、好きな物を好きと言っているだけなら、個人の自由で一向に構わないのだが……最初からやってもいない事を、さもドップリ漬かっている! って感じで言われると、やっぱり気分が悪いのだ!
だからして、この世界にいる私には、なにか趣きのある仕返しをしてやりたくて仕方がなかった!
……ふふふ。
面白い!
自分の世界に戻って来たら、何故か身に覚えのない彼氏が出来ているとか……面白すぎるっ!
これは、是が非にもやらなければっ!
「その話、乗ってやろう。確かに今の私達にとっては、とても都合の良い妙案だな?」
「……なんか、今のお前って……違う事を考えてないか? 本来の目的とは別の……なんか、浅ましいと言うか、余りにも酷い理由から俺の提案を受け入れている様に感じるんだが?」
「気のせいだ」
……ぐぅ。
やっぱり、コイツは私なんだな。
普通に私の考えて読んで来たぞ!
しかし、私はポーカー・フェイスでシラを切ってやった!
少し、口元がヒクヒクと痙攣していた様な気がしたけど、ポーカー・フェイスって事にして置いた!
「……まぁ、良いんだけどな? けど、あんまり陰険な事を考えると、友達無くすぞ? お前も寂しがり屋なんだろう?」
ほっといてくれ!
「なんの事か知らないな? 私は純粋に自分の目的を果たすだけの為に、お前のフェイク恋人を演じる……それだけの話だ」
正直、バレバレなのは分かっていたが、もう完全に嘘を貫き通す事に決めた私は、そのままリガーの言葉にシラを切り通した。
正直、ビミョーに変な事をしていると言う自覚はあった!
つか、もう……そこを掘り下げるのは止めにしないか?
ボチボチ、昼休みも終わりに差し掛かっているのだから!
私は右手の腕時計を軽く指差してから、
「……そろそろ本題に入ろう。もう時間もそこまでない」
真剣な顔になってリガーへと答えた。
「……お前、今時腕時計なんかしてるのか? 時間なんてスマホで良くね? 意識高い系でも気取っているのか?」
「うるさいよ! むしろ、最近は腕時計タイプの端末とかあるし! 割と便利だし、スマホより便利な時もあるんだぞ!」
ラインとか、そのまま送れたりするんだぞ!
……腕時計に直接、返事を声で言わないと行けないから、ちょっと変な構図になったりもするけど! スマホより便利なんだぞ? 一言程度の短文であれば、だけど!




