リダさんの追憶【13】
「意気投合し、すっかり仲良くなった私とジャンの二人は、この街にある古い文献がたくさん眠る異形の地......ジンボーに辿り着きます」
「......いや、まぁ、古い本は売ってるかもだけど、別に異形でもなんでもないからな? ただの古本屋街だからな?」
「そこで、私達はジンボーに眠っていた古い書物を頼りに、未知との遭遇を果たすのです。デーモンブラッドの果実と呼ばれる、混沌の力を高める幻の果実がある事をそこで知りました」
「......要は、古本屋でジャンと二人して立ち読みしまくって、それを見つけた訳だな」
「そ、そうなんですけど、もう少し......何と言いますか、こうぅ......シリアスかつドラマティックに展開してるっぽい演出があった方が良いじゃないですかっ!」
いや、そんな演出いらないから。
どうでも良さそうな顔をして、私はユニクスの言葉に耳を傾けていた。
「そして、度重なる苦難と苦闘......長い旅路の果て、悪魔の果実が眠る禁断の地......アキーバへと向かい、林立するジャンクショップを掻き分け、私とジャンの二人は、ついにデーモンブラッドの果実を手にいれたのでした!」
「いや、アキーバって、ジンボーの隣じゃないかよ。もう、それ散歩レベルの距離だよな」
もう、なんかツッコミを入れる気力すらも無くなった私。
私的に言うのなら、その下りはもっと短くても良い気がする。
とりあえず、混沌に飲み込まれる危険を犯しつつ、それでもかじる事で秩序の一部を無事に解放したユニクスが、性別の縛りを無くしたって事を言えばよかったんじゃないかなって思えた。
いや、まぁ......良いんだけどさ......どうでも。
「......で? スペクタクルな街中散策の末に、果実をかじって男になる能力を得ました......と?」
「スペクタクルなのに街中散策って言うのが、妙に引っ掛かりますけど......あらましはそうです」
「なら、ここまで大袈裟に言うなよ。バカなの?......まぁ、良いけどさ」
嘆息混じりに答えた私がいた所で、ユニクスが何を勘違いしたのか? いきなり瞳をキラキラ輝かせて叫んで見せた。
「良いのですね! 良かった! じゃあその辺にある、愛を育める場所でさっそく新しい命を!」
ドォォォォォォォンッ!
ユニクスは爆発した。
返事をするのも面倒だから、問答無用で大爆発魔法を放った。
下位魔法である爆発魔法だとケロッとしてるから、今回は上位魔法にして置いた。
......はぁ。
やれやれだ。
結局、男になってもやってる事は一緒だった。
......むしろ、本当に子供が生めてしまえる身体になってる分だけタチ悪いわっっっ!
「リダ様の愛がアツい!」
物理的にアツいだけだよ! アホなの!
余談だが、デーモンブラッドの果実をかじる事で混沌の力を得たユニクスは、更に強くなったらしい。
......うむ。
まぁ、強くなったのなら、それはそれで良い事だ。
けど、こいつの場合、特に身体を鍛えるとかしてる訳でもないのに、色々あって偶然強くなってるんだよな......。
もう、最初にあった時のムカつく女だった頃と比べると、素のステータスで十倍以上の差が出来てるんじゃないだろうか?
この調子で、なんか色々な偶然が起きて行ったら、ユニクスが最強になる気もするなぁ......これこそチートなんじゃ?
余談続きで申し訳ないのだが、混沌の力は自分の意思でコントロールする事が可能らしく、混沌の力を弱めると秩序の束縛が復活し、女に戻ってしまうんだと言う。
逆に言うと、女に戻る事も可能なわけで。
もはや、そうなると......やってる事はイリと大差ない。
なにはともあれ。
かくして、私にまた新しい悩みの種が生まれたのであった!
てか、こんなのいらんわっっっ!
......と、言う所で、次回に続く!




