全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【12】
ただ、ルミの態度と口調から察するに、この世界でもルミは姫様をやっている模様だ。
……う〜むぅ。
やっぱり、この世界は並行世界の一種なのかも知れない。
色々と変わり過ぎてしまっていたせいで、全くの異世界だとばかり思っていたのだが……何と言うか、根本的な部分はあんまり変わって居ない気がする。
それらを考慮するのであれば、ここはやっぱり文明だけ私の知る世界よりも大きく進歩してはいるけど、私の知る世界をアレコレと変えてみた『だけ』の世界なのかも知れないな。
……ま、それを知った所で、今の私に得があるとは思えないのだが。
「それでさ? 次のイベントで某・鬼が滅せられる刃な子のコスプレしようとしてたんだけど、もちろんリダもやるよね? フラウはどうする?」
そして、ルミは陽気な顔して、地味にディープな話をするんじゃないよっ⁉︎
つか、私はやる事が決まっている見たいな話になってるんだが? そこもちょっと色々と物を申したい!
「そうだねぇ? 私もファンだし? 実は、二人のコスプレ衣装を何にするかで迷っていたから、私的にはここで作る物が決まれば楽かな〜?」
……って、貴様もかっ! フラウッッッ⁉︎
当たり前の当然の様に口を動かしているルミに、フラウも極めて自然な成り行きと言わんばかりの口調で声を返して行った。
会話の流れを聞いている限りだと、どうやらフラウがコスプレ衣装を作っているみたいではあるんだけど……何で、お前はそんな物を作っているんだ? 割と本気で!
この世界の二人には当然の事なのかも知れないが……私には全くついて行く事が出来ないんだがっ⁉︎
「……取り敢えず、私はコスプレとかイベントとか、良く分からないと言うか……興味が全くないとは言わないが、そこまで興味がある訳でもない。ルミやフラウの二人が何かするのであれば、多少は付き合うのも、やぶさかではないのだが……」
私は、自分の譲歩出来る、最大限の所までを口にすると、
『えぇぇぇっ⁉︎』
ルミとフラウの二人が、とんでもない勢いで驚いては……私の方を思い切りガン見して来た。
程なくして、
「ほ、本当にどうしたの、リダ⁉︎ アンタから女性向け同人誌と乙女ゲーとコスプレ趣味を全て無くしたら、他に何が残ると言うの? 絶望?」
私を何だと思っているんだ? とマジで言いたくなる様な台詞を、真顔になって叫ぶフラウと、
「私をこの世界に引き込んだのは、他でもないリダじゃない! 酷いよ! 私をこんな風にして置いて……自分一人だけ普通の女子に戻る気っ⁉︎ そんなの許せない!」
私にとって、全く身に覚えのない台詞を赤裸々に力説しまくって来るルミの二人がいた。
そんな事を私に言われてもな……。
朝の時も思っていたが、本気でこの世界の私は何者なんだろうか……?
同人誌とゲームとコスプレを無くすと、絶望しか残らない女子高生なんて、あまりにも残念過ぎて仕方ない気がするんだが……?
そして、ルミを腐れた世界に引き込んだ張本人が、この世界にいる私だったと言う事実もまた、軽く絶望を味わった気がする……。
どちらにせよ、お前らの話を聞いていると、私の自己嫌悪レベルが徒らに上昇しまくって行くから、もう口を動かして欲しくない私がいた頃、
「……あら、リダさん。こんにちわ」
聞き馴染みのある声が転がって来た。
私の予測に間違いがないのであれば、この声は……ユニクスだ。
私の眉が地味に捻れた。
正直、ルミとフラウの二人だけでお腹一杯な心理状態だったのだ。
これ以上、おかしなヤツと会話をするだけの精神力なんざ残っていない。
それだけに、
「……こんにちわ」
私は、テキトーに挨拶だけを返した。
これだけ言えただけでも、私の中では敢闘賞だ。
ここから、更に何かに繋がる様な台詞とかあったら、私的にコイツを爆破するしか、他に選択肢は残されていないだろう。
……と、こんな事を考えていたのだが、
「……あれ?」
軽く挨拶をしただけで、ユニクスはスゥ……と、抜けて行ってしまった。
……?
何だろう?
妙に素っ気ないと言うか、違和感があるまでにアッサリしてたな?
普段のユニクスならば、こうぅ……コッテリと言うか、ねっとりした絡みを、当たり前の様にやって来ると言うのに。
「……なぁ? この世界の……じゃなく、ユニクスって私に異様な行動とかして来ないのか?」
不思議に思った私は、近くにいた二人へと尋ねてみると、
「……異様な行動って、何?」
ルミは小首を傾げ、
「良くわかんないけど、ユニクス姉ならあんな物じゃない?」
フラウもまた、良く分からないって感じの顔をして私に言って来た。
……な、なるほどなっ!




