全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【9】
この世界に魔素が存在しているのは、既に私も分かっている。
怒りに任せて、カリンを爆破していたからな!
普通に、大して何も考える事なく、魔導式を頭の中に紡いで魔法をぶっ放していた時点で、この世界にも魔素が存在している事は明らかだ。
如何に私と言えど、自力で魔素を生成する事は出来ないし、周囲にある魔素を自然と身体が吸収しているからこそ、魔法を発動する事が出来る。
厳密に言うと、体内にある魔力が時間の経過と共に自然回復している時点で、この世界には魔素が豊富に存在していると言う事実がそこに存在しているのが、私にも分かった。
ちなみに、魔素と言うのは、私が知る世界ではポピュラーな自然のエネルギーだ。
空気中に豊富な量が混じっているので、普通に生活しているだけで、自然と体内に入って行くぞ?
……と、軽く説明を入れた所で、話を戻そう。
これら諸々を加味するのであれば、この世界にも魔素は現存し……かつ、この世界では当たり前の様に資源エネルギーの一つとして活用されているのだろう。
この調子なら、電気やガスで動いているだろう代物の大半が、魔素を使って動かしている代物も結構あるのではないのか?……とさえ思えてならない。
……実際、私の鞄に入っているスマホには、充電するジャックの様な物なんて無いからな?
簡素に言うのなら、これも空気中に存在する魔素を吸収する装置の様な物が搭載されていて、勝手にそれをエネルギー源にしているのだろう。
ある意味、とても便利なエネルギーと言える。
ただ、これだけ広く社会にスマホが広まっている状態で、徒らに魔素を消費しまくったら、流石に何処かで魔素が枯渇してしまうんじゃ無いのか? と、地味に不安を感じずにはいられない部分も間々あるのだが。
恐らく、そう言った部分は、別の資源も使う事で色々と補ってはいるんだろうが……まぁ、そんな事は私の考える事ではないから、取り敢えず良しとして置こうか。
何にせよ、純粋に文明の利器が私の住む世界と比較すると百年程度は先を行ってるんじゃないのか?……と思われる場所だと言う事さえ理解出来れば、他は難しく考える必要はないな。
それ以外、取り立てそこまで大きく変わっている部分はない。
何なら、登下校時の下駄箱の場所や、学年とクラス……果ては席の位置まで全部一緒だったしなぁ……。
正直、席の位置だけは別であって欲しかった。
それとなく、ルミやフラウの二人に聞いて、自分の下駄箱の位置やクラスの場所、自分の席とかを聞いた結果……密かに自分の記憶と大差がないと言う事実が判明した訳なのだが、席まで黒板前の特等席とか言う、いつもの代わり映えしない位置でもあったのだ。
居眠りの常習犯であったが故に、黒板の真前と言う、全く以って嬉しさの欠片も感じられない残念な席だったんだが……まさか、こっちの世界でも同じ席だった事には驚かされたよ……真面目な話。
「こっちの世界に居る私も、居眠りの常習犯だったのだろうか……?」
自分の席に座った所で、私は誰に言う訳でもなく独りごちた。
腐女子である時点で私としては、思わぬ十字架を背中に背負わされた気分で一杯だと言うのに……この上、居眠りの常習犯まで同じとなれば、もはやこの世界に生きていた私は何者なんだ? と言いたくなる。
……主に、悪い意味で。
「……はぁ」
この世界であったとしても、私である事には変わりない筈だと言うのに……どうして、ここまでヤンチャな生活を送る事が出来るのだろう?
胸中でのみぼやき……ふと、無意識に重々しい吐息を口から吐き出した時だった。
「よっ、リダ」
軽い感覚で声を掛けて来た男子生徒がいる。
……何やら、妙に馴れ馴れしいヤツだな。
もしかしたら、この世界のリダにとっては気楽に話せる男友達なのかも知れないが……今の私は、言うなれば異世界人だ。
この世界にいたであろうリダと同一人物であっても、記憶まで同一ではない以上、普段通りの態度なんて………え?
そこまで考え、声がした方向へと視線を向けた時……私はフリーズした。
そこに居たのは、
「リガー……なのか?」
私は唖然とした面持ちで、リガーへと口を動かした。
間違いない。
髪の色や目の色こそ、何故か黒髪黒目に変わってこそいたが……その顔立ちや立ち振る舞いなどを総合的に考慮すると、リガー以外の何者でもないと言う答えしか、私にはやって来なかった。
「……リガー以外のヤツに見えるのか? お前には?」
「いや……うん、そうだな。はは……」
私の言葉に、リガーは不思議そうな顔になって声を返して来た。
やっぱり、私の隣に座って来た男子生徒はリガーその人だったらしい。




