全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【7】
二人を見送った所で、私も行こうかと歩を進めた所で……
「……私の教室は何処だ?」
……物凄く根本的な部分で問題があった事実に気付かされる!
え? あれ?
こ、これ……どうすれば良いの?
つか、これ……学年によって入る場所が違うって事は、下駄箱があるとか、そう言う奴だよな?
私の下足箱は何処?
「………」
まさか、学校の校門にやって来て、こんな間抜けな形で途方に暮れる羽目になるとは思わなかった!
……さて、どうしよう?
取り敢えず、学生手帳とかあったよな?
そうすると、学年とクラス程度は、これで分かる筈だ!
ここから自分のクラスに行って、クラスメートに下駄箱の場所を聞けば……。
そこまで考えていた時だった。
「おはよ〜リダ! 何してんの?」
快活な声が、私の鼓膜に入って来た。
こ、この声は……っ!
「ルミか! お前、ちゃんと生きてたんだなっ⁉︎」
私は、声を方を振り向き……そして、歓喜の声を飛ばした。
見れば、そこには見間違え様の無い親友の姿が!
良かった……やっぱりルミだ。
ハッキリと分かっていた訳ではないのだが……ワームホールの様な物が発生したあの時……周囲に居た全員が、あの良く分からない次元の狭間へと引き込まれて行った様に見えた。
実際問題、今の私はこうして異世界としか他に形容する事の出来ない場所にやって来ては……自分のクラスはおろか、下駄箱の位置すら分からずに四苦八苦しているのだから。
「……? そりゃ生きてるよ? ちゃんとご飯も食べてるからねぇ〜?」
私の言葉に、ルミはキョトンとした顔になって言う。
そんな顔は、私へと無言で語っていた『何を当然な事を』と。
……あれ?
なんか、反応がおかしい。
まるで、異次元の狭間に飲まれた記憶が、スッポリ失われているかの様な……?
この時の私は、自分の世界でも馴染み深い親友と再開出来た事で、すっかり失念していた。
この良く分からない世界には、年齢と続柄こそ異なる物の……ちゃんと『アリンが存在していた』事に。
そして、この世界に存在していたアリンは、完全に『異世界の住人』であった事も……だ。
「なぁ、ルミ? 一つ聞きたいんだが? この異世界には、いつやって来たんだ?」
「異世界? ここが? ちょっと、何を言ってるのか分からないなぁ……? なんか、変なアニメでも観たの? 今時、厨二は流行らないよ〜?」
……いや、そう言うつもりはなくて。
「じゃあ、ルミはこの世界にずっと居たのか? そう言う事にしているとか、そう言うのではなく……?」
「……いやいや、リダさんや? 私は去年からずっとトウキにいるよ? リダの言う世界がどの世界を言っているのか『知らない』けどさ〜?」
……っ!
しれっと、笑みのままナチュラルに答えて来たルミの言葉を耳にし、私は確信した。
このルミは、この世界にいるルミだ!……と。
くそ……そうか。
すると、やっぱり得体の知れない時空の狭間を飛び越えて来たのは……私だけって事になるのか。
………。
内心、これで同じ目的を持つ仲間が増えたと喜んでいたが……完全にアテが外れてしまった。
正直、ちょっと落胆が隠せない。
けれど、眼前にいるルミが悪い訳では無いし……まして、話しても良い物でも無い。
ルミが、この世界に生きるルミであるのなら、下手に巻き込む訳にも行かなかった。
「……ごめん、なんかちょっと異世界モノのラノベとか読んでて、さ?」
「へ? リダってそう言うの読むの? てっきり私はショタ系美少年がわんさか出て来るBLの……しかも、かなりエグいのしか読まないモノだとばかり思ってたよ!」
この世界の私! ちょっとトイレに来い!
「やっぱり受けはショタの方が良いよね? つか、最近の学園モノはワンパで萎えるんだけど?……とかって、昨日も笑いながら言ってなかった?」
マジで、この世界の私、死んでくんないっ⁉︎
「そこに関しては、ちょっと私も考える部分がある……一つだけ確かな事は、そう言った台詞は今後一切言うことは無い……と、思う!」
「えぇぇっ⁉︎ 本気でどうしたの、リダ⁉︎……熱はないよねぇ?」
ルミは本気で心配して来た。
意外とまともな事を言った筈だと言うのに、どうしてここまで心配させられるんだ? 私はっ⁉︎
「いつも、某・女性向け同人誌の即売会へと瞳を凛々に輝かせて向かったり、私に推しキャラのコスプレさせて、一緒にスマホで写真撮った後、自分のSNSに堂々と載せていた……あのリダは何処に行ったの?」
本当に何処に行ってるでしょうねぇ……この世界のリダ・ドーンテンさんはっ⁉︎
つか、ルミまで巻き込んでSNSにアップしてんじゃねーよ! この世界の私っっ⁉︎




