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全てが異なるのに、周りに居るメンバーだけ全て同じ(一部誤差あり)の世界【6】

 ……そして、ここまで読んで気付いてくれた方が居るかも知れないのだが……今いる異世界は、私の前世に思い切り似ている世界でもあった。


 ……そう。


 ここは、かつての私が生きていた世界……日本にソックリだった。


 ただ、日本国ではない事だけは分かっている。

 何故なら、私が学校へと向かう道中で乗った電車はJRではなく、トウキ鉄道だったからだ。

 簡素に言うのなら、今いる私の世界は普通にトウキ帝国だった。


 なんとも不思議な気分だ。

 まるで前世の様な世界観が当たり前の当然の様に展開していると言うのに……その実、地名だけを耳にすると、完全に私が生きている現世の世界と完全に合致するのだ。


 それは……あたかも、前世と現世の二つが融合してしまったかの様な? そんな不可思議な錯覚にさえ陥ってしまう。

 元来の人間は、一度死ねば前世の記憶なんて失ってしまう訳だから、常識の上で行くのなら、この様な不可思議な気持ちになんぞなりはしないのだろうが……。


 まぁ、なんにせよ……だ。


 この世界がどんな所であれ、今の私がやるべき事は、パラレルを探す事。


 特に根拠があった訳ではないが……私は、この世界の何処かに、私を飛ばしてくれた並行世界の管理者とやらが存在しているんじゃないかと考えていた。


 もちろん、こんなのは私の予測に過ぎない。

 否……半分以上は私の願望も込められているだろう。

 極論からするのなら、パラレルがこの世界にいると言う根拠すら示す事が出来ないと言うのが、現状の私だったりもするんだからな。


 ………。


 ここに関しては、もう少し落ち着いてから考える事にしよう。

 

 現状、異世界としか他に形容する事の出来ない場所に飛ばされたばかりで、頭が完全に纏まっていないと言うのが、私の正直な所だ。


 今は、自分が飛ばされてしまった世界がどんな所なのかをしっかりと把握した上で、パラレルを探す行動に出た方が良いんじゃないのだろうか?


 幸運にも、この世界は恐ろしく平和だ。

 ただ平和なだけではなく、治安まで良いと来た。


 私が知るトウキと比較しても、話にならないまでに治安が良い。


 窃盗や強盗、置き引きは言うに及ばず……公共の場で行ってはならないルールやマナーをしっかり守る人間が多い。

 

 なんて事だ……ここは本当にトウキ帝国なのか?

 チンピラ風情が闊歩する裏路地すら、この街は皆無に等しい。

 一応、探せばあるんだろうが……逆に言うと、探さないと無いレベルなのだから……これには驚く。


 にもかくにも。


 この世界は、私の知る世界と比較するとあまりにも平和で治安が良く、比較対象にするのもおこがましいまでに安全な街だ。


 商店街の店先に、店の商品を露骨に置いたままにしていた所を見た時は、マジでビビったぞ?

 いや……これ、盗んで下さいと言わんばかりじゃ無いか?……と。


 トウキにも露店商はあるけど、そこには常に店員がいて、営業中はしっかりと見張っているぞ?

 ここ……店員は、みんな店内に入っているし……見てない訳で。

 

 それでも、盗む輩が限りなく皆無に等しいと言う側面があるからこそ、ここまでオープンな……オープン過ぎる商売の仕方が出来るんだろう。

 やはり、この世界は……尋常では無いまでに平和だ。


 ……と、さて。


 脱線ばかりが先に行ってしまった所で、話を元に戻そう。


「じゃ、リダ姉、私達は行くね?」


 学校の校門まで到着した所で、アリンが笑みのまま答えて自分の校舎へと向かってしまった。


「またね、リダ姉……あ? そだ! 今日帰ったらさ? ちょっと数学を教えてくれない? マジで赤点取りそうでさ……?」

 

 そこからカリンもアリンの後に続く形で歩き出したのだが、間もなく私に軽くお願いする感じの台詞を口にして来る。


 ……いや、お前の知るリダ姉なら、それを可能にしているかも知れないが、今のリダ姉が出来るかどうかは分からないぞ?


 まぁ、良い。


「私が出来る範囲の物であるのなら、教えてやる」


「ありがと〜! やっぱりリダおねーさま! 頼りになるぅ〜♪」


 頷いた私を見たカリンは、まもなく陽気な笑みを作って私に抱き付いて来た。


 やれやれ無駄に元気な奴だ。

 お前は子犬か?


 そして、地味に調子の良い妹である事も分かった。

 ……でも、悪い気はしないな。


「カリン! 何やってんの! 早く来なよ!」


 直後、私に抱き付いていたカリンに向かって声を吐き出すアリンがいた。

 

 ……まぁ、学内の校門で、女同士が抱き合うと言うシチュエーションは確かにおかしい。

 つか、ビミョーに気持ち悪い。

 まして、それが自分の身内なんだから、アリンとしては少し恥ずかしい気持ちにすらなっているかも知れない。


「ああ、ごめんごめん! 今行く〜!」

 

 程なくして、アリンに声を掛けられたカリンは、パタパタと小走りにアリンの方へと向かって行った。 


 ……ふむ。

 こうやって見ると、アリンは結構しっかりしているな?


 私の知るアリンは三歳児だったから……と言うのもあるのだろう。

 今のアリンは、やたらとしっかりした性格の持ち主に感じた。

 そう言えば、舌足らずな喋り方もしてないや。

 ……こっちのアリンは十五歳なんだから、当たり前かも知れないが。

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