全てが同じなのに、性別違いの私がもう一人居る世界【22】
そこからガッチリと握手をし、私はリガーとの最後の別れの挨拶を済ませた。
さよならだ、もう一人の私。
私生活の面では、おおよそ誉められる点は無かったかも知れないが、お前の存在感とおおらかで前向きな性格は好きだったぞ。
……こんな事を考えつつ、私は右手を振った。
「それでは、リガー! 貴様との勝負はお預けにしてやる! ありがたく思え! そして、さっさと平行世界の彼方へと送り届けてやろう! ここも大いに感謝するが良い!」
程なくして、バアルがやたら高圧的な態度を取ってリガーへと叫んでいた。
台詞だけを聞いていると、妙に剣呑な上に、喧嘩を売っている様にも感じる台詞ではあったが、間違いなくリガーを自分の世界へと送りますよ……と言う台詞を口にしているんだろう。
私的には、どうしてここまでリガーを毛嫌いしているのか?
もしかしたら、私が向こうの世界に行っている間に何かあったのかも知れないな。
……ま、興味ないから、聞く気もないけどなっ!
バアルの態度はともかく。
こうして、リガーは自分が本来住むべき世界へと帰って行く…………筈だった。
リガーが平行世界へと旅立って行くと思われた……まさに、その瞬間。
ピシッ……ピシピシィッ!
空間に亀裂が入った。
なんとも超自然的な光景だった。
見る限り、そこには何もない。
あるのは、単なる空間であり……そこに物体の類いは一切存在して居なかった。
物なんて無いと言うのに……どうしてか? そこには恰もガラスの様な物が存在していたかの様に、大きな亀裂の様な物が出現した。
これが、平行世界へと移動する為に作り出した物なのかな?
やたら歪な造りだな?
もしかしたら、単なるアクシデントで作り出す事が出来た関係で、こんな不自然な動き方をしているのかも知れない。
「……な、なにぃ……っ!?」
その瞬間、バアルは大きく眉をよじった。
……?
おかしい。
バアルの様子が変だ。
どう見ても、明らかに動揺しているのが私にも分かる。
すると……これは、平行世界へと移動する為の物ではないと言う事なのか?
同時に、私の中にあった根拠のない胸騒ぎが大きく私へと訴え掛ける!
危険な事が起こる!
直ちに避難経路を確保して、この場から逃げろ!……と。
……その時だった。
「自分で勝手にやった事を、そのまま無かった事にするつもりですか?」
後ろの方から声がした。
「……っ!? お前はっ!」
声がしたと同時に振り向いた私は、瞳を大きく見開いた。
そこに居たのは、平行世界を管理する者……パラレルだった。
パラレルは、やけに高圧的な笑みを色濃く作りながらも私達へと口を開いて行く。
「あなた達の行った事は……平行世界に大きな矛盾を産み出す危険性を持った、極めて重大な罪……当然、相応の罰を与えなければならない。違いますか?」
「言いたい事は分かる……しかし、パラレル? お前は言わなかったか? これは自分の管理者としてのミスだ……と?」
パラレルの言葉に、私は素早く反論した。
すると、パラレルは言う。
「……はて? そんな事を言った記憶はないんですがね? 一体、あなたは何処のパラレルを相手に、その様な言葉を頂いたのです?」
かなりエキセントリックな台詞を……だ!
こいつの言う事に嘘がないのであれば、私が知っているパラレルと、ここに居るパラレルは『全くの別人』と言う事になる。
……果たして。
「あなた方の行った罪は万死に値する……否、死すらも生ぬるい!」
怒りに顔を歪ませたパラレルは、間もなく右手を振り上げると、
ズォォォォォォォォッッッッッ!
私達の眼前に、巨大な渦が生まれ……って、おい? な、なんだこれ……私達を吸い込んで……うぉわぁぁぁぁっっ!
突発的に出現した空間の渦の中に吸い込まれて行った。
……一体、何がどうなっているんだっ!?
リガーとの別れの直前で現れた、パラレルの様な存在。
そして、これまた突発的に出現した空間の渦。
問答無用で吸い込まれてしまった私達。
この先にあるのは何か?
そして、パラレルと言う存在は複数人いる?
そうだとすれば……私の知るパラレルと会う事は……出来ないのか?
その前に……これ、死ぬとかないよなっ!
……と、言う所で今回はここまで!
次回に続く!




