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全てが同じなのに、性別違いの私がもう一人居る世界【21】

「……さて、ここら辺で良いでしょう? アシュア? お前は周囲の通行人が、間違って平行世界へと張り込まない様にする為、公園を封鎖しに行ってくれ」


「分かりました! なるべく、私達には関係のない庶民を一人でも多く巻き込む為に、誠意ある行動を心掛けます!」


「よし、分かった! じゃあ、フラウとルミ、ルゥの三人に頼もうか?……あ、アリンちゃん? ちょっとそこのアシュアおばさんを羽交い締めにする魔法を使って拘束した後、逃げない様に見張っててくれないかな?」


「安心して下さい、バアル様! 私はあなた様の忠臣! あなた様の未来を誰よりも明るく照らす太陽! そして、二人の輝ける明日を構築する努力も24時間フルタイムで妄想しているのが私です!」


「うん、分かった。寝言は寝ている時に言ってくれ?……と言う訳で、アリンちゃんよろしくな?」


 妙に気合いの入った語気で言うアシュアの言葉を耳にした後、うんうんと頷いてはいる物の、実際には全く理解するつもりが無かったバアルが、笑みのまま近くに居たアリンへとお願いすると、


「分かったお! アシュアおばさんを束縛しゅるんだお!」


「待ってアリンちゃんっ!? あなたは一つ、大きな……致命的な間違いをしている事に気付いて欲しい! 私はおばさんではないと言う、誰がどう見ても分かる事実があると言う事だ! これはとてつもない間違いであって、徹頭徹尾に置いて大きな相違点である事を私は断言したい!……したいので、縛るのは手足だけにしてくれませんか? 流石に猿轡(さるぐつわ)をするのは抵抗感があるんですよ? ほら、私って綺麗でしょ? 美人でしょ? そんな私がだらしなく口からヨダレを垂らしてしまいそうな事をしたくないと言うか? せめて口ぐらいは自由にさせ……むごほぉっっ!」


 アシュアはロープで口を塞がれていた。

 普通、タオルでやる物なのだが、きっとロープしかなかったのだろう。


 口からヨダレが出てしまうと言うのは、ロープを強引に口へと嵌め込まれている為、結果的に口を完全に閉める事が出来ず、口から唾液が漏れてしまうからだ。


 ……なんだろうね? この罰ゲーム。


 何にせよ、これでアシュアが私達を妨害する事が出来なくなった。


 周囲を見る限り、公園に人は居ない。

 これから入って来る事もないだろう。


 フラウやルミ、ルゥの三人が公園の入り口に立って、お願いをしているからだ。


 これで思わぬ事故が発生する事もあるまい。

 こんな所でも、三人の仲間が良い役割を担ってくれたな?

 やっぱり、こう言う時はもつべき者は親友だと思えるよ。


 かくして。


「準備は整いました。いつでもリガーを平行世界へと消し去る事が出来ます」


 バアルは真剣な顔になって私へと言う。


「消し去ると言う表現が少し気になるが、分かった。ちゃんとリガーが元の世界に戻る事が出来るのであれば、私は特に気にしないぞ? 今回の事も水に流してやる。半分程度」


「有り難き幸せにございます。元を正せば、リダ様に多大なるご迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ございません。リガーは私の全責任を以て、今直ぐ戻す事に致しますので、もう半分は自分の身体で清算と言う事でよろしいでしょうか?」


「分かった。それでは身体で返して貰おう。リガーがこの世界から元の世界に戻った1秒後にお前を爆破する……と言う事で、今回は水に流す。これで良いな?」


「それは自分の代わりにアシュアが受けると思いますので、爆破の方はクレーム受け付け係のアシュアに行って下さい」


 そんな係があった事に驚きなんだが?


「ふぐぉごぉぉぉぉっっ!」


 そして、クレーム係のアシュアが、これでもかと言うばかりに何かを訴えている様に見えるんだが?

 何やら、悲痛に顔を歪めてブンブンと高速で顔を横に振り、この世の終焉を目の当たりにしているかの様な絶望的な雰囲気を醸し出している様な気がするのだが?


 まぁ、良い。

 取り敢えずはバアルの案を受け入れよう。

 面白いから。


「分かった。それでは今回の責任はアシュアに取って貰う事にし、リガーが平行世界へと旅立った直後に爆破してやろう。それで良いな?」


「ふぉぉぉおおおおぉぉおっっ!」


「はい、もちろんです!」


「ふぐおぉぉぉぉぉっ!」


 私の問いに、バアルは二つ返事で頷いて来た。

 途中、おかしなダミ声が聞こえて来たが、気にしないで置いた。


 果たして、私はリガーを見る。


 同時にリガーも私を軽く見据え、微笑んで見せる。


「それじゃあ、元気でな?」


 程なくして、リガーが笑みのまま答えた。


「そっちこそ、元気でな?」


 リガーの言葉に、私も同じ台詞を短く返す。


 互いに、もっと口に出来る言葉はあったのだろうが、その全てが無意味で必要のない物に思えた。

 同じ私であるリガーには、無用の長物でしかなかったからだ。

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