【1】
「リダ、起きなさいよ」
どっかで、私を呼ぶ声がする。
なんだよ? 私は今、スゴく眠いんだ。
「もう、お昼休みになったよ? 早くしないと学食混むよ?」
ああ、もうっ! うるさいなぁ……。
学食なんか混んだって……ん?
「いや、それは困る!」
私は一気に覚醒した。
ガバッと起きた。
いや、本気で昼間は戦争なんだ!
同時に私は駆け出した。
「あ! ちょ……リダ! 起こして上げたんだから、待ってよ!」
後ろからルミの声がした。
やれやれ、相変わらずノロマなお姫様だ。
……と、いきなり私の美しい覚醒シーンから始まった分けなのだが、学園生活も数日程度が経過し、それはそれなりにやっていたりはする。
まぁ、普通かな?
ただねぇ……授業がねぇ。
どうしても眠くなるんだよねぇ。
……簡単過ぎて。
「取り合えず、ルミはサンドイッチとミルクで良いか?」
「それで良い……けど、置いてかないでが一番の注文!」
ルミは本気で言ってた。
ちぃ……ルミに合わせてたら、マジで学食に何も残らないぞ!
学園生活も数日が経ち、その生活を向上する上で、今の私が一番頑張らないと行けない事は学食のパンを逃しては行けない事だ。
なんと、ここの学食は、パンの類いしかない!
一応、弁当もあるにはあるが……人気メニューであり、大体即完売してしてしまう。
そして、授業が終わったら即、死に物狂いで買いに行かないと、売れ残りの黒パンくらいしか残ってないと言う、最悪の事態に陥る。
話しによると、学生の時代から冒険者としての基本的な理念、弱肉強食を日々の生活から学ばせる為、わざとこんな仕組みにしてるらしい。
「くそぅ……何が弱肉強食だ! こんな下らない仕組みを考えたヤツ、バカなのか?」
「そうだよね! 私も思う! こんなおかしな事を考える、冒険者協会の会長って、どんなバカなのって思うよね!」
あたしだったよコンチキショー!
「そ、そうか……きっと、その会長は……わ、悪い人ではないと思うなぁ……」
「そう? すごーく意地悪な人だと思うけど?」
意地悪とかしないから!
会長、それ聞いたら号泣するから!
「とにかく、私は先に行く」
「ここにも意地悪がいた!」
ルミはガーン! って顔になった。
さっきも言ったけど……お姫様の足に合わせてたら、本気で黒パンしか食えない。
もしそうなったら、これで二日連続黒いパンだ! 白いフカフカしてるのが食べたいんだ、あたしは!
そこから、私は一気に加速させる。
すまない……ルミ。
ちゃんと、アンタの分も買って置く。
私の分があればな!
「それじゃ、学食で会おう!」
「わーん! 裏切り者ぉぉっ!」
泣き叫ぶルミの声が少しづつ遠ざかって行く。
それにしても、足が遅すぎじゃないか? これじゃ……モンスターから逃げる時、必ず回り込まれるぞ。
そんな事を思っていた時だった。
廊下を全力疾走していた私の前に、いきなり逆方向の角から一人の少女が物凄い勢いで飛び出して来た。
「うぉわっ!」
慌てて飛んだ。
……あ、あぶな……私じゃなかったら、側面衝突だったぞ。
なんとか寸前でジャンプして、少女を飛び越える形で回避した。
その瞬間、私は強い殺気を感じた。
………?
なんだろう? 今のは?
良くわからない。
けど確実に強い殺気をひしひしと身体全体で感じたんだ。
だが、今の私には白いパンを食べると言う、超高難度のクエストがまっている。
悪いけど、構ってる暇はないんだ。
もう、黒いのは嫌なんだ!
少し気になった私だが、その場は全力で学食に向かう事を優先した。
……数分後。
「良かった! 今日はちゃんと白い!」
「良かったね……」
ちょっと涙が出てた私と、ぶっすぅ! としたお姫様の二人がいた。
なんだよ、ちゃんとルミの分も買ってやったじゃないか。
「ちゃんと、起こしてあげたのに……何回も『待って』って、言ったのに……」
「悪い悪い。私さぁ、白いパンじゃないと、元気出ないんだよねぇ」
「ふーんだ。リダに貸そうと思ったニイガ魔導書集なんか、貸して上げない」
「えええ! あ、あれ、暇潰しに最高なんだよぅ! テスト勉強見てあげるから、貸してよぅー」
私は結構まじめに焦った。
魔導大国と言うだけあって、会長である私ですら謎な魔導式が何個か掲載されている。
それを探して、自分なりの公式を作り、独自の魔法に磨きを掛ける事が、もっぱら私の暇潰しだ。
ちなみに、魔導式と言うのは簡単に言う所の呪文みたいな物だ。
魔法を組み立てる上で必要な物だな。
魔法と言ってもその数は豊富で雑多で千差万別の効果と威力がある。
それは、この魔導式の組み立て方がモノを言う場合もある訳だ。
てか、魔法の約七割位がそうだ。