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二人の英雄奇譚  作者: 深崎史明
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兄妹が異世界転生するフラグ立て

「妹よ、俺の夢を此処に示す。その夢についてきてくれるかい?そして、ずっと隣にいてくれるかい?」

「えぇもちろん、同じ夢を追いかけ続けます。」

「じゃあまずはこいつらの相手をしないといけないな」

そして、託された思いを一身に受け前を向き、戦場に向かう。俺たち兄妹に生きる意味を…名前を与えてくれたエレナの為にもそして、俺たちを初めて受け入れてくれたフラング王国のみんなの為に…

腰に吊るした剣に手をかけるのだが、手が震えて全然鞘から抜けていない俺に妹が声をかけてくれる。

「あのね兄さん、きっと私たちもう一度この景色を見る時必ず隣には私がいます。そしてこの国のみんなが笑顔で迎えてくれます。」

そんな情けない俺を温かな声で励ましてくれる妹がいて

「いつの日か変わるきっかけをくれた、何より名前をくれた小さな王女様とか、毎日剣の稽古を付けてくれた誇り高くて優しいお姉さんになってくれた騎士さんとか、稽古終わりに紅茶を入れてくれたメイドさんとか、買い物に行くとオマケしてくれるおじいさんとか、なぜか懐かれた子供達。」

思い返せば沢山の仲間と出会い支えられた。

他人には一切関わらないそんな俺たちが人を頼り、助けられて助けようと自ら行動して、変わったんだな。最初の一歩を踏み出した時は気まぐれだったが、今はちゃんとした意志をもって動ける。

俺が帰ったらおかえりを言ってくれる人がいる。そして居場所がある。好きだと思える仲間たちがいる。何より…

「そんな幸せを感じたり、笑ったり、喜びあい、助けあい、私たちを家族として、あるいは仲間として迎え入れてくれたこの国の人たちに恩返をしないといけないですね」

今までの事を思い出しながら、妹に励まされる俺氏。よえぇなぁと思いながらも一歩前に出て妹の方を向く。自分の弱さ認めて誰かに頼ろうとして、案の定人助けしてるんだもんなぁ。

変わったなぁ。と今度は小さな声で呟くと俺は今まで生きてきた中で一番大きな声で叫ぶ。世界中に響かせる勢いで、此処に存在している事を証明するように、何より妹の心に届くように。

「俺の夢は—」



ボーッと窓の外を覗く。

何も考えずに。


日が落ち暗闇が空の半分を支配するこの時間俺たち兄妹は学校の図書館を出る。校内に残っている生徒はほとんどいない為静かな帰り道を演出できる。素晴らしい。あの叫ぶしか脳のないサル供と同じ高校に通っているだけで同列種されるという屈辱を味わい、さらには自分のグループ以外の人間を傷つける。この学校という場所に自分たちの居場所を見つけるのは容易ではない。

とりあえず今日のところはサルに絡まれることなく帰れそうだ。面倒ごとは避けるのが一番いい。

「妹〜、今日学校大丈夫だったか?」

この質問は俺たちの日課だ。それというのも、俺たち兄妹はこの学校のカースト?というのだろうか、くだらない学校のシステムによると底辺でからかわれる事が多かった。

そんなわけでこんなくだらない質問から話し始めているというわけで、本当に人とはくだらない生き物だ。学校の教師も生徒も親も…

「兄さん、私は兄さんが居れば大丈夫ですから。くだらない事に首を突っ込みませんよ。それにあんな下郎に本気になりません。同じ土俵に立ったら負けでなのでしょう?」

凄い強い言葉が、流石の俺でも少し思うところがあるぞこれ、ではなくてだなぁ。

「おうおう。では本題、今日の晩御飯何食べたい?」

俺たち兄妹は親に暴力を振るわれていた所を保健所の人間に見つかり孤児院で暮らしていたのだが、今年妹が高校に上がったのをきっかけに2人暮らしを始めている。主な収入源はゲームの大会賞金やその大会で知り合いとなった会社の新作ゲームのデバッグやテスターで中々に安定している生活を手に入れている。

「今日は兄さん大会前だから私作るよ。」

「待て。今日は妹の番だ。このあいだの勝負俺の勝ちだったよなぁ!」

このあいだの勝負とは、無論ゲーム大会の事である。カードゲームの大会での決勝戦にて、俺たち兄妹は戦って勝ったのが俺である!

「ちっ、覚えてたのね、頭殴って記憶変えてあげようかしら」

なぜ上目使いで目をパチパチさせてこちらを見ているのにそんなに可愛くのない舌打ちと言葉使いなのだ、まぁけどねぇ今日は久しぶりにRPGを脳死でやるのだ。今日から始まるイベント絶対に外せない!アニメ亡国の騎士王とのコラボイベント!あのアニメは良い。異世界転生でもしてあのアニメの主人公みたいに騎士王にでもなれないかなぁ。

「忘れるものか、なんといっても妹に大会で勝つの3ヶ月ぶりだったからなぁ〜頭だけは良いよなぁ妹や。」

ちなみにだがここでフラグは立っている。俺は今騎士王になるフラグが立ってる。もう一度心の中で言おうとした時脛に衝撃が走った。

「おい、蹴ったな。そっぽみんな、無視しないで悲しいよぉお兄ちゃん妹いないとダメなのだから…無視しない…」

横にいたはずな妹が消えた為後ろを振り向き妹の方を見ると何かを見ているようだった。その視線の先を見ると1人の女の子が横たわっていて、この時代に似合わない服装をしていて腰についてるのは西洋の剣だろうか、完全にコスプレ?だよな。

「まぁ道路の真ん中で倒れてるし、声くらいかけて見るか?」

「うん、私ここにいるからお願い!」

倒れている女の子に近づき…

「おい、なぜ来ない?ねぇこわいのは妹だけではないからね?」

「お兄さん、うるさい。みんな話が進まなくて帰っちゃう、本閉じられるから早くね。」

「みんなって誰だよ、てか帰るなよ?」

なんか知らんが急かされたので、取り敢えず声を掛けて見るのだが、ここに来て自分が人見知りなことに気づいた。ちらっと妹の方を見るのだがすでに、電信柱の裏に隠れていた。心の中で後で仕返すと誓い、男になる!あっこの男とは、勇気を出すことだから。ほんとだから。下ネタと思った人は悪い子。よぉし。

「あぁ…あ、あのぉっ……だ、大丈夫で、す?か?」

出てしまった〜俺の必殺、コミ症気持ち悪い喋り術。と心の中で叫びながら妹の方を見る。引いてるし…心痛むわ〜マジで、引きこもりゲーマーの心は優しく扱おうね。3ヶ月ぶりに学校に行った俺を褒めてくんないかなぁ。

足元から微かな声が返ってくる。

「助けて…」

何かで押しつぶされていそうな苦しそうな呼吸。そこから聞こえてくる魂の声。

俺は知っている。この声を。この苦しみを。

本当に助けて欲しい時に何かにせがんだ声。それでも手を指し伸ばしても指し伸ばしても引いてくれる事のない。そんな時に出る声。

ただ今ここに俺がいる、手を引く事が出来る人がいて、苦しみが、辛さを理解出来る。

なら…

俺以上に苦しむ人間を見たくない。例え解決できないにしても隣に立つことは出来る。ただ隣に立ってくれる人間がいるだけで頑張れるのを知っている。何故なら、俺たち兄妹がそうだから。

ならこの声を聞いたなら、手は差し伸べるしかないだろっ!

伸ばされた手に答えるのは俺だけじゃない俺たちはその手を撮る。

「「今助けるから!」」

その少女の手を握ると白い光に包み込まれた。その光は強く目を閉じることしかできない。それでも、差し伸ばされた手を握り続ける。そして左手の温もりを、妹と繋がれていた手を離す事はしない。



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