表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第8話 神里 響子


「さて、答え合わせといこうか」


 口にしつつ、手が震えてることに気づいた。俺、緊張してるんだな。鬼が出るか蛇が出るか。鬼も蛇もお呼びじゃないから、妖狐みたいに絵的に映えるファンタジー生物とか出てこねぇかな。


 俺は意を決してインターホンを押そうと手を伸ばした。が、俺の手が呼び出しボタンに触れる前に、そのドアが開かれた。


「うわっ」


 思わず声を出してた。俺ってこんなにビビりだったか? たぶんだが、さっきの佐倉さんの殺されるかも発言が尾を引いてる。まさかと思う一方、世界を巻き込む計画よりはずっとあり得る気がするのだ。


「お待ちしておりました」


 開かれたドアから現れたのは白衣を身に纏った女性だった。20代後半くらいだろうか? 化学の先生っぽい雰囲気だ。それは白衣のせいか。


「あなたが飛鳥 響子を騙っている人ですか」


 飛鳥さんがその女性に問う。飛鳥さんは睨むような表情で結構迫力があるのだが、女性に動じた様子はない。


「飛鳥 響子は私ではありません。飛鳥 響子は中にいます。私はただのアシスタント。助手です。助手さんとお呼びください」


 助手さん? さすがにそれは呼びづらい。


「名前で呼ばせてくれませんか?」


 そう言ったものの、


「私の名前は助手です。それ以外の呼称であれば、アシスタントとお呼びください」


 と返された。名前が助手って……。


「中で飛鳥 響子が待っています。どうぞお入りください」


 助手さんに促されるままに、俺たちは家の中へと足を踏み入れた。外面は古びていると言うか、言ってしまえばボロボロだったのに、中は案外綺麗だ。


 助手さんについて、家の中を歩く。結構広い。迷いそうだ。1分ほど家の中を彷徨うと、部屋の前で助手さんは足を止めた。


「この部屋の中で、飛鳥 響子は待っています。どうぞ、お入りください」


 そう言いつつも、助手さんは廊下で立ったまま動かない。この人は部屋には入らないということか。


 俺たちの中で初めに動いたのは飛鳥さんだった。促されるとすぐに襖を開いた。俺たちはその後ろに続く。


「あなた方を待っていました。ただ、飛鳥、あなたに招待状は送っていないはずなのだけれどね」


 部屋の中には、俺たちと同年代くらいの女子がいた。髪はショートカットなのだけど、顔つきが飛鳥さんに似ている。まるで、姉妹のような……。


「…………」


 当の飛鳥さんは驚愕の表情を浮かべて絶句していた。


「久しぶりね、飛鳥」


「…………姉、さん」


 飛鳥さんの呟きを、俺は聞き逃さなかった。姉さん。そう言った。姉妹。


 俺たち3人は、飛鳥さんともう1人の飛鳥とのやりとりを見守るほかなかった。


「……どうして? どうして! 姉さんは死んだのよ! あなたは誰!?」


「私は紛れもなく、あなたの姉。神里 響子よ」


 神里? 飛鳥 響子ではなく? 俺にはどうも状況がわからない。


「違う! 姉さんは2ヶ月前に死んだ。私は、その瞬間だって、見たんだから……」


「なら、私は何? どう見ても、神里 響子でしょう? 飛鳥。私は、生きている」


「本当に、姉さん?」


 飛鳥さんの頬に涙が流れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ