第3話 メールは何処から?
*(トモヤ)
当てが外れた。迷惑メールなら、1クラス聞き込めば2,3人は受け取ったやつが出てくるものだと思ったのだが、うちのクラスにリョウ以外に例のメールをもらった人はいなかった。放課後になって、テキトーに他のクラスのやつにも訊いてみたが、全て空振り。
「あの迷惑メール、結構レアっぽいな」
聞き込みをするにも、ほとんどの生徒が帰るか部活に行くかしてしまった。そんなわけで、俺たちは2人、教室に戻っていた。
「迷惑メールにレア度とかあるの? でも、他に誰もいないとは思わなかった」
「案外、リョウ狙い撃ちだったりしてな」
「それはないでしょ。僕を狙って、睦月に呼び出してどうするのさ」
「誘拐して身代金要求とか?」
「それ、なんで僕? うち、ただのサラリーマンだよ」
確かに、リョウを狙って迷惑メールを出すというのもあまりありそうじゃない。なら、あり得るのは、
「最近怪しげなサイトに登録したりしたか?」
リョウの情報が漏れた先に、他の生徒が接触していない場合。
「うーん、心当たりはないよ。変なアプリを入れたりもしてないし。迷惑メール自体は今までも来てたから、アドレスはどこかから漏れてるんだろうけどさ」
「本当か? 高校生は普通見ないような、アングラなサイトにアクセスしたりとか」
「してないよ」
リョウには本当に心当たりがないらしい。アングラなサイトなら、リョウより俺の方がアクセスしてるだろうな。
「じゃ、偶然かね。迷惑メールの本文はどんなんだっけ?」
「ああ、これ」
リョウはスマホの画面を俺に見せた。メール自体の削除はしていないようだ。
『差出人:飛鳥 響子
宛先:Oku0816ryo@×××.ne.jp
件名: 明日が怖いものの集い
本文: 明日が怖い。未来が怖い。不安定で、不確定で、どうなるかわからない。だから、怖い。
怖い、怖い、怖い。
あなたもそう?
だったらここに来て。そこには救いが待ってるから。
《このメールには添付ファイルがあります》』
明日が怖いものの集いねぇ。なんというか、いかにもスパムっぽい気もする。でも、明日が怖いという主張そのものには、なんとなく共感できるかもしれない。
「差出人の飛鳥 響子ってのに覚えはないのか?」
「ないよ」
「まっ、そうだよな。なんなんだろうな、このメール」
俺たちが「うーん」と唸っていると、教室のドアが開かれた。