表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第2話 2人の少年

*(リョウ)


「で、その添付ファイル、なんだったわけ?」


 昼休み。昨日の迷惑メールの話をトモヤにした。別に面白い話のつもりでもなかった。不注意に添付ファイルを開いたという、大して面白くもない自虐ネタだったのだが、トモヤはなぜか興味を持ったようだ。


「地図。マップの画像だった。GPS情報を本文に入れればいいのに、わざわざ画像。マップには丸印がついてるところがあって、そこが来いって言ってる場所なんだと思う」


「へぇ。行くのか?」


「迷惑メールの指示になんて従わないよ」


「普通は、迷惑メールの添付ファイルだって開かない」


 揶揄(からか)うような口調のトモヤを見る。


 一ノ瀬 智也。僕の中学からの友人だ。人付き合いがちょっと苦手な僕と違って、とても社交的。高校に入学して1ヶ月くらいしか経ってないのに、1年生250人全員と話したことがあるらしい。そのルックスも相まって、女生徒たちから、すでに人気があるとかないとか。こんな僕が、そんなトモヤの友人でいられることがびっくりだ。


「ただ、迷惑メールの中では珍しいよな。リアルの場所を指定して、ここに来いってのは」


 確かに。迷惑メールは山のように受け取ったことはあるが、こんなのは初めてだ。


「普通の迷惑メールは、URLがあって、ここにアクセスしろって感じかな?」


「もしくは返信を求めてくるか。アドレス変えましたってやつ。お前誰だよってな」


 トモヤの言葉に僕は頷いた。その手の迷惑メールは何通も来たことがある。


「行くか行かないは置いといて、指定された場所ってどこだったんだ?」


「いや、行かないけど。えっと、睦月駅の近くだったと思う」


「案外近いんだな」


 睦月駅は、僕たちの住むここ師走から電車で1時間弱くらいだっただろうか。無人駅で周りにも特に何もないから行くこともない。ちょっと地方に出るときに、快速急行で通過して行く駅の1つだ。


「行こうと思えば普通に行けるのか」


「トモヤが行く気ならマップ送るよ?」


「俺1人で行けってかよ。そうだ、その迷惑メール来たのいつ?」


「昨日の夜かな」


「なら、他にも受け取ったやついるんじゃね?」


 確かに、迷惑メールなら、同じ内容のものが大量にばらまかれているだろう。


「いるかもだけど、それがどうしたの?」


「いや、そいつが行く気なら便乗すっかなって」


「トモヤって、フットワーク軽いね」


「こういう都市伝説みたいなの、結構好きなんだよ」


*(トモヤ)


「トモヤって、フットワーク軽いね」


 そう言うリョウは他人事風だった。自分に届いたメールで、添付ファイルすら自分で開いたくせに。


「こういう都市伝説みたいなの、結構好きなんだよ」


 そう答えながら、リョウの方を見た。


 奥村 涼。俺の中学からの友人。リョウを紹介するなら、一言で言える。いいやつ。リョウはとにかくいいやつだ。周りに気は使えるし、人の嫌がる仕事なんかは引き受ける。文句なしに引き受けるんじゃなくて、文句を言いつつ引き受けるところが好感を持てる。いいやつ故に、人と話すときは一歩引いて見るところがあるリョウが、俺とは結構近い距離感で話してくれるのを、俺は密かに自慢げに思っている。


「リョウは興味が湧かないか、このメール」


「気にならないって言うと嘘になるかも。でも、わざわざ睦月まで行こうと思うほどじゃないよ」


 この言い方、うまくお膳立てすればリョウも来そうな言い方だ。


「じゃ、睦月に行くんじゃなくて、学校で同じメールもらったやつ探すくらいなら、やってもいいってことだよな?」


「別に乗り気でもないけど、それくらいなら付き合ってもいいよ」


 リョウはため息混じりにそう答えた。


「そうと決まれば、昼休み終わる前にクラスのやつに訊いてみようぜ」


 昼休みが終わるまであと5分。予鈴を聞いて戻ってきたクラスメイトたちに、俺とリョウは聞き込みを開始した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ