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第11話 未来予知


*(サクラ)


 この人は化け物なんじゃないか。バカなあたしは本気でそう思っていた。


 この人の声を聞いてすぐにわかった。この声は、電車の中で聞こえたあの不気味な声だ。その時点で、あたしはこの人を警戒していた。


 それからすぐに、この人はすでに死んでいると聞かされた。死んで蘇ったなら、それは間違いなく魑魅魍魎の類だ。ゾンビ? アンデット? なんて言うのかはよくわからないけど、人間じゃない。


 そして極め付きが、未来予知。この人は化け物だ。妖怪だ。アスカちゃんのお姉さんの皮を被った異形のものだ。そんな考えが頭の中を駆け巡る。


 でも、冷静なあたしが一言、「あたし、バカなの?」と頭の中で言ったお陰で、その考えは止まった。


 異形のものって、本当にそんなのがいるわけがない。未来予知はただの冗談。蘇りはアスカちゃんの勘違い。なら、あの声は? あたしの聞き間違い? はっきりこの人の声だったと思うけど……。


「今の私には未来がわかる」


「なら、僕のスマホのホーム画面の壁紙がなんだかわかりますか? 響子さんが答えた後に、僕はそれをあなたに見せます」


 奥村くんがそう言った。賢い。それなら未来予知が嘘なのがすぐにわかる。


「2匹の猫の写真ですね。あなたの家で飼っているものでしょう?」


 響子さんはそう即答した。奥村くんの顔が驚愕に染まる。


「そ、その通りです」


 奥村くんはスマホの画面を響子さんに見せて、それからあたしたちにも見せた。確かにそこには2匹の猫が写っていた。


「確かに、この2匹はうちの飼い猫です」


「私は未来がわかることを信じてもらえましたか?」


 やっぱり化け物? それともトリック? もしかして奥村くんがグルとか。


「未来がわかるなら株とかで大儲けでますねー」


 一ノ瀬くんが呑気にそんなことを言った。株で大儲けとかそんな場合? 本当に未来予知ができるなら、この人化け物だよ?


「はい、可能ですよ。私は今、そういった収入で生活しています」


「おぉ、それは羨ましいですね」


 なんで和やかに会話してるの? 逃げた方がいいんじゃないの?


「そうでしょう。それで、私が招待状を送ったのは他でもない、皆さんに同じ力をあげようと思ったからなの」


 響子さんは微笑んで言った。


「未来予知の力、欲しくないかしら?」


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