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プロローグ1

 時が止まった。世界が終了した。


 時間の移動がなくなったという事は、空間における変化がなくなったという事である。

 当たり前だが、氷が水になるのには時間が必要。如何なる環境でもそれは変わらない。つまり、空間の変化には時間が必須である。

 氷が水に変わるという単純な変化に対しても時間は必須であるなら、複雑な機能を要している生命に時間という概念がなければ、何か出来るはずがない。

 もし疑うならば、ストップウォッチの Start/Stop ボタンを2回押してみるといい。そこには限りなく少ないかもしれないが、短時間の記録が残るはずだ。それが人間には『動作を行うには時間が必要』という事を教えてくれるだろう。


 ――さて、ここで時空間の話をするとしよう。

 退屈になるかもしれないが、しばし聞いて欲しい。


 ――時間と空間は密接に関係している。

 しかし、お互いにお互いが『必要』という訳ではない。

 空間であれば、時間を失ってもなくなる訳ではない。ただただ、変化を失うだけだ。

 その証拠に、写真には時間はないが、空間だけは映し出されている。決して空間が存在しないという訳ではない。

 時間であればどうだろうか。

 時間は空間の有無にかかわらず、流れはする。しかし、空間がなければその証明は出来ない。

 そのためには空間が必須であると言えるだろう。


 それはそうとして、疑問に思った人はいないだろうか。

 この世界の時間は止まった。

 勿論、比喩表現ではなく、ましてや非常に時間が遅くなった訳でも、作者から特権を貰った訳でもない。

 私は生命である。その理論外にいる訳でもない私が動けるはずがない。


 では何故か。

 至極簡単な事だ。

 ――別の時空間が存在すればいい。ただそれだけ。


 神と極めて近似した存在が、各々の時空間の管理をしている。

 神は今なお存在するが、「管理が面倒くさい」などと言って、全く働こうとしない。


 ――まあ、時空間なんて数え切れない程あるし、それぞれの特徴などに合わせて管理方法を変えないといけないし、時空間の流れはどれも一緒って訳でも……(ぶつぶつ)

 兎に角、時空間ごとに管理者を置くという管理方法は非常に合理的だと言えるだろう。時空間を跳躍して遊んでいる唯一神なんていなければ、素直にそう思える。

 ――ただ、1つ問題があるとすれば……


 管理者がとてつもなく暇だという事だ。


 さて、久々に時が止まる現象(タイムアウト)が起こった。

 時が止まる現象(タイムアウト)後は、決まって何かが起こる。



「やあ、久しぶり、りーちゃん」


 ニコニコして真空から現れた、地球の日本で言うとチャラい男子高校生みたいな奴が、管理者(わたし)の愛称を交えて話しかけてきた。


「何ですか、唯一神(かみさま)?」

「ちょっとお願いがあってねー。――さっき、知ってるかもしれないけど、ある世界の時が止まったの。多分、あの調子だと寿命かな? それで、りーちゃんの世界に2人程転生させたいんだけど、大丈夫かな?」



 ――『転生』。

 それは、生命に宿る魂は時空間の例外的な変化によって消耗・消滅、またはそれに近似するような事があってはならない、という神自身の思想によって行われる。

 転生は何処の世界にさせてもいいのだが、ある程度知識や知能を持った生命が転生する場合は、同一の時空間の知的生命体はなるべく近付けないようにするという規則が存在する。

 もし、近付いてしまって、お互いの事を知っているとなると、他の同族を探し、彼らの本来使われるはずだった時間を無駄に浪費させてしまう可能性があるからだ。

 そんな訳で、大体の場合は1回に付き1人までの転生となるのだが……


「……まあ、仕方ないですね、断る理由もないですし。その世界は人口でも多かったんですか?」

「そんなところ。でもよかった、断られるかと思ったよー」

「そんな事は出来ませんよ。受け入れなくてもいい様な事ではありませんし、2人という事はそれなりの事情があるという訳ですからね。それについ最近、大規模な災害でこっちの人口が減少したので、単純に増えてくれるのが嬉しいっていうのもありますよ。……それで、その世界はどんな環境だったんですか?」

「ああ、そうか、そんな事を話してる暇じゃなかったね。……えーと……これこれ」


 ポンと分厚い書類が渡される。それのタイトルには『時空間管理番号 30123124』と書かれていた。

 管理者なら誰もが見た事がある、各時空間の詳細が記載された書類だ。


「必要な部分は赤丸で囲んであるから、そこだけ見てくれれば十分だから。じゃ、これから周らないといけないから。じゃあまたね、りーちゃん!」


 愛称を言い終わった直後に、唯一神は何処かに消えていった。

 そして私は、何もなかったかのように管理者(じぶん)の仕事に戻るのだった。



 ――――。

 あ、いつ来るのか訊くの忘れてた……。


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