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中編

 商店街は平日にもかかわらず、にぎわいを見せていた。漆喰の屋根は揃えて赤色に塗られ、統一感を増している。ケイレブは人通りの多い中をずんずん進んでいった。

「......見つからん。どこ行ったんだ、ジェドの野郎......!」

 ケイレブにはジェドがいそうな場所など全くといっていいほど分からなかったが、人通りの多い場所ほど効率的だと考えているらしい。太陽が街をやわらかに照らす。探し始めてから何時間経っただろうか、ケイレブはすでに首を動かして探すのをやめ、いつもの歩きの早さに戻っていた。

「しょうがない、誰かに聞いてみるか。......誰に?」

 ジェドはあまり探偵としての仕事をしていないようだから、知っている人は限られているだろう。誰か知っていそうなやつ、街の情報屋、......。

 ケイレブの頭の中に、一人の人物が浮かび上がる。街の怪しい骨董屋。確かジェドの幼馴染だったはずだ。裏で企みを起こしているようだが、何一つ掴めていない。彼の店には多くの客がいるが、常連の中には裏社会の人間もいるという噂だ。噂は噂だが、裏でのつながりを持っている(ように見える)彼なら、何か情報を持っているかもしれない。

「まあ、あいつを捜すついでだ、行ってみるか」


 骨董屋は商店街の端、ちょうど赤色の屋根が途切れた場所にあった。ほかの建物に負けず劣らず、木の質感がある古びた外観をしている。扉を押して入ると、カランコロンと透き通った鈴の音がした。出入口の近くにある風情あるカウンター座っていたのは若い男だった。

「いらっしゃい、初めて来たのかい?」

「あ、ああ。......いや、今日来たのは君が目当てなんだ」

「ああそうかい。嬉しい告白だなあ」

「初対面でいきなり野郎に求愛する野郎がいるか」というと、男は嬉しそうに、クツクツと笑った。

「ああごめんよ、つい。面白そうだったから。で、用件は何だい?」

「全く。ああ、今ジェドを捜しているんだが、どこにいるか知らないか?」

 すると男はほんの少し目を見開いて、

「ははあ、つまり君は、人捜しをしていてそんなにクタクタってわけか。でも残念だね、僕はストーカーなんかじゃないよ」と言った。

「あなたなら何か知っていると思ったんだがなあ、情報屋さん」

「なあんだ、知ってるんじゃないか」

 男は両肘をついてケイレブに近づいた。さっきよりも顔が笑んでいた。

「そうならそうと言ってくれればいいのに。隠したかったの?」

「いや、表向きどうしているか知りたかっただけさ」

「へえー、ふーん。僕に裏表があるって言うんだね?しょうがないなあ」

 男は一つため息をついてから答えた。

「でも本当に知らないさ、ほんとのほんとに残念だねえ。でも街には戻ってくるんじゃないの?」

「......そうか。時間をとらせてすまなかったな、ありがとう」

「はいはいどうも、見つかればいいね」

「ああ」と返事をして、ケイレブは扉を引いた。

「......まあ精々がんばって、ミスター・ケイレブ」


「......見つからんな」

 日はもう赤くなりかけている。商店街にも寂しさが垣間見える時間になった。あの警官は今何をしているのだろう。

「なんだ、誰かと思ったら同業者じゃないか」

 聞き覚えのある声が聞こえた。ジェドだった。しかし、ジェドのそばに顔を外套で隠した見知らぬ少年がいた。

「!、ジェド!お前、ずっと探してたん......誰だそれ?」

「ん?ああ、最近雇った助手だ。それよりも、探してたのか?」

「ああそうさ!一日中だ。聞きたいことがあってだな」と、ジェドにクリスの釈放と消えた凶器のことを話した。ジェドは怪訝な顔をしたが、すぐに困った顔をした。

「......いきなりだと思うが、俺は旅に出ることにしたんだ」

「どうして、いや本当にいきなりだ、何があった?」

「また新しく始めたいんだ......深くは聞かないでくれ」

 ケイレブは何かを察し、一言、そうかと言ってジェドと別れた。


 ジェドは夕日の商店街の中で、少しの間立っていた。

「ねえ、これでいいの?」外套の少年が不安げに聞いた。

「ああ、それが一番いい方法なんだ。俺にとっても、君にとっても」ジェドは淡々と答えた。

「......そうだね。それなら早く行こうよ」

「ああ」


「行こうか、クリスティア」

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