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前編

 人工的な灯りが適度に明るく照らしている、新しめの留置場の廊下で、二人の職員が歩いている。夕方、日はもう沈もうとしている。恐らく仕事は終わったのであろう。

「それで、例の食人姫は今どうしてるんだ」

「ああ、今はとてもおとなしいですよ。毎日の食事が健康的だっていうのに」

「ははは!レングも言うようになったなあ。でもいいか、大声でそんなこと言っていたらいつか大目玉喰らうぞ」

「分かってますって。でも僕は公私の区別はついてますから」

「ああ、期待してるぞ」


 僕の名前はケイレブ、いたって普通の探偵さ!仕事は順調、はかどってる。

「ああー、仕事ないかなあ」いや、少々はかどりすぎた。暇だ。確か前の仕事は、......

「あの食人僕っ子にでも会いに行くか。そうしよう」

 前の仕事、森の食人鬼を捕まえるという仕事で捕まえた、確かクリスという女の子。珍しく、と言っては何だが、一人称が男性的だった。そこが妙に引っかかっていた。留置場へ行ったところで会えるかどうかも分からないんだが、生憎時間はある。残念ながら。

 そして車で数十分かけて留置場へ。横切る警官たちに細々あいさつしながら受付に行く。

「やあ、クリスはいるかい?」

「ああ、これはケイレブさん。ちょっと待ってくださいね......」と、バインダーに挟まれた紙をめくる。

「いやあ、いませんね。クリスというと、あの食人姫ですね?」

「ああ、そうだが、何かあったのか?」

「それが、なぜだか釈放されたんですよ。証拠不十分だったかな」

 おかしい。証拠も何も、現行犯だったはずだ。確かジェドってやつが捕まえて、僕が警察に......

「資料はありますか?良ければ見せていただきたいのですが」

「ん、あー......まあケイレブさんだから大丈夫か。おい、レング!」

奥から活気のいい返事が聞こえ、若い警官がやってくる。

「レング、こちらケイレブさんだ。食人姫の資料を見せてやれないか」

レングと呼ばれた警官は一瞬驚いた顔をしたが、引き締めて返事をした。

「ケイレブさん、本官はレングルズ・トルバージであります。例の事件を担当しておりましたので、何かお役に立てれば幸いです」

「担当と話せるとは僕は運がいい。よろしく頼む」

「では資料室の方へ行きましょうか」


 空気が冷たい中、こんこんと廊下を歩く。

「......レングさん、聞きたいことがあるのだが」

「どうしました?知ってることなら話せますよ」

「クリスって......男なのか?」

レングは少し言葉を詰まらせ、「......ええ、可愛いですよね」と答えた。

なんだか複雑な気分になって、言葉を続かせるのをやめた。

「こ、ここが資料室です。えーっと、資料は、確か......あった、これです」

1つのリングファイルを引き出し開く。

「えーっと?」と二人は資料を読み始める。そこには、おそらく実行犯そのものだろうが、凶器となるものが見つからなかったこと、第一発見者のジェドが犯行自体を目撃していないと供述していること、そしてそのことから起訴に至れなかったことが書かれていた。

 しかし、ケイレブは覚えている。森で見た少女(少年)が持っていた錆びかけの包丁を。あれは押収されたはずだが、資料には記載されていない。このことをレングに伝えると、

「いや、見てませんね?」と首を傾げられた。

「ジェドには連絡とれるか?」

「もしかしたらとれるかもしれないですね、調べてみます」

「分かった、なら僕は足で調べるよ」

「あ、ありがとうございます......」


 警察署内のとある部屋にて。小さな部屋に、レングは一人壁に寄りかかり、電話をしていた。

「あーもしもし、ボム?さっきさー、狗さまが来てね、クリスちゃんのこと聞かれたんだよ。......あー、うんうん、そこら辺は大丈夫。......はいはい。んでさ、ジェド君を探してるみたいだからさ、クリスちゃんと一緒に行動しちゃダメよ、って言っといて。......ん?えっとね......あの時の凶器の話だって。...うん、そうそれ。なんかうまく話作っといて。......だーいじょぶだいじょぶー、知恵は掛け掛け、って言うじゃん?できたらまた折り返してねー。じゃ。...」

 相手が何か話しているのを気にせず、強引に電話を切ると、何事もなかったかのように部屋を出た。

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