夕食
いつもと同じ、そう同じ夕食
長いテーブルの端と端に座る私とお兄様
ミルキーが作った料理を黙々と食べる。
静かな部屋に銀食器のぶつかる音だけが響き渡る。
「どう?姫様!どうどう?おいしーいー?」
私の膝下でぴょんぴょんと飛び跳ねながら私の顔を覗き込む
「とっても美味しいわ。貴方はやっぱりこの国一の料理人ね。」
そして、この沈黙を破るのはいつも決まって貴方ね。
いつもと言っても毎日こんなに静かなわけではありませんのよ?
そう、お兄様が帰ってきた日の夕飯のときだけ…
頬をそっと涙が流れた
(いけない…また私ったら…)
とっさに涙を隠す。
「ひ、姫様…?」
「そ、そういえばお兄様!今回の旅はいかがでしたの?」
「ん?あぁ、凄く良い旅だったよ…初めて海というものを見た。
青く果てしなく、そして広く寛大なものだった。」
「へぇ…海、かぁ…私も見てみたいわ!いつか私も連れて行って頂けるかしら?」
他愛のない話を続けた…
苦しい胸の痛みに耐えながら。
いつになったらこの痛みから解放されるのだろうか?
もしかしたらそんな日が来ることは、無いのかもしれないわね…
知らずとしてまた沈黙が続く。
デザートが運ばれる頃、私はいつも睡魔に負けてテーブルで眠ってしまう。
そしてダヴィが部屋まで運んでくれるらしい。
ふわふわと宙に浮いたように、温かい彼の腕に抱かれている感触を感じる。
「ん…おにぃ‥さま…」
頬にまた一筋の涙が流れていた
「…クソッ」
彼の腕にギュッと抱きしめられたような気がした