日が沈む頃
遠く離れた地に旅をしていた兄が屋敷に帰ってきた。
だがどことなく悲しみに包まれている兄妹…
果たしてその訳とは…?
長い廊下が茜色に染まる頃、美しい自然の絵の具にも優る黄金の髪。
真っ白で透き通るようなドレスを身にまとい、宝石なんて必要ない、煌めいた目の輝き。
~~~♪
目には見えない花が宙を舞っているかのように、美しい歌声が響く。
ガシャン、キーーー
大きな門が開き、凛とした顔立ちの馬が引き連れ馬車が一台入ってきた。
屋敷の入口からレッドカーペットが敷かれ、丁度その前に馬車が停まる。
ゆっくりと扉が開き、スラリと長い脚が一歩、二歩と歩みをすすめる。
お帰りなさいませマルフィース様
「ただいま戻った。皆の者、長らくの留守を許してくれ。異変は無かっただろうか」
「そういえば、『お兄様ぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』」
ーボフンッ
「おぉ可愛い妹よ…元気なのは良いがもう少し姫らしくできないのか?」
「もぉ!お兄様ったら久々に会えたと言うのにすーぐお説教ですの?」
頬を膨らませ上目遣いで兄を見つめる
「ははは、そうだなすまない。お前を見るとついいつもの癖だ。悪い。
元気そうで何よりだ。少し痩せたか?愛しい妹よ会いたかったぞ。」
優しく微笑みながらそっと頭を撫でる
「うぅ会いたかったよぉお兄様ぁーすきすき!だいすきですーー//」
胸に顔を埋めギュッと抱きしめる。その頬には涙の筋がキラリと流れた。
しかしぽんぽんと頭を撫でると兄は早々に自室へ向かった。
「はぁ…お兄様……」
悲しそうな瞳でその背中を見つめ、ため息がひとつ悲しみと共に空気と混じり消えた。
日はすっかりと沈み、空には無数の星が散りばめられている。
その星たちに手を合わせ祈る。
「お兄様の心の鍵を…いつか解き放って自由を…そしてあの笑顔を、もう一度……
お兄様………」
ーーートントントン
「姫様、夕飯の支度が整いました。」
「ええ、わかったわ。すぐに向かう」
「しっかりしなくては…」
頬をパチっと叩くと大きく深呼吸し、ドアノブへ手をかけた。