必然の出会い
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
路地裏で男の悲鳴が響く。男のそばには背が高く、腰まである長い髪。そして、黒いパーカーに黒のスキニー。全身黒ずくめである。手には白く輝く包丁。
男がどんどん追い詰められ、壁にぶつかった。
「た、助けてくれぇぇぇぇ!」
この言葉が男の最後の言葉であった。後日、喉元を切られた状態で死体として発見された。
「なぁ、未来。朝のニュース見たか?」
机で寝ていた俺に明形 泰利、あだ名、やっすーは話しかけて来た。
「やっすー、ほんとに好きだな。殺人事件。」
「だってー、その人がどんな状況でどんな事をして殺されたのか、めっちゃ興味あるんだよ!」
やっすーはちょっと頭のネジが飛んでる。まぁ、やっすーは有名な学生探偵で難解な殺人事件では警察に協力し、何度も犯人を見つけている敏腕探偵なのだが…
「浮気かなー?それとも売春かなー?」
なんとも、探偵とは思えない思考回路をしている。普通、殺された理由なんか後のはずだろ。まぁ、殺されたのが「担任」だからなのもあるのだろうか。
そんなこんな話していると、
「お、うちのアイドルの帰宅だぞ!」
そう、やっすーが向いている方を向くと、うちの高校のアイドル的存在で俺の幼馴染である堤下 刀華だ。成績優秀で人当たりも良い。特に評判なのは髪だ。腰まである黒く艶やかな髪は男女問わず見惚れてしまうらしい。さっき、幼馴染と言ったが高校に上がってから話していない。人は変わるものだと思っている。
「んでさ、話戻すけどよー。なんで殺されたと思う?」
やっすーが話題を持ち出して来た。
「誰かの恨みを買ったんだろ。多分、俺みたいな目にあわされた誰かじゃないかな?」
「そうなると、お前も容疑者の1人だなー!」
「その日の夜はお前と電話してただろ!アリバイ成立!」
「そうだった。ごめんごめん♪」
そう。俺はあの教師の汚名を着せられて、やっすー以外は誰1人として近づかない。やっすーだけが真実を知っているからだ。
「このあと、どうする?俺は事件現場見に行くけど来る?」
「いや、いいよ。部外者の俺が行ってもすることねーだろ?」
「それもそうか。じゃあ、また明日なー。」
後で連絡するーとか言いながら、教室を出て行った。
帰り道を歩いていると、大学生くらいの男たちが絡んできた。
「よぉ、にぃちゃん。金出せ。」
「嫌です。」
即答。こうするのが1番なのは知っている。まぁ、当然、その場にいた男たち3人に殴られ、金は取られずに済んだが、体はボロボロだ。
「最近は荒い真似をしてくれるな…」
そんな事を思いつつ、怪我した体を引きずりながら家に帰っていると、知っている声が響いた。
「みーくん!どうしたの!?」
刀華だ。俺の名前は無積 未来で、未来の未の字からみーくんと幼い頃から呼ばれていた。
「こうして、話すの、久々だな。」
刀華が肩を貸してくれる。
「とりあえず、手当てしてあげるから、うちに来て。」
「お前の家、ダメなんじゃなかったっけ?」
「私が高校に上がった後すぐ、海外に出張に行っちゃったから、平気。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
刀華の家は厳しいとこで、幼馴染の俺でさえ、一度も入れてもらったことが無かった。どんな家なのか気になっていたから、楽しみだった。
そんな事を考えていたので、刀華の幸せそうにした顔を見ることは出来なかった。
今後、続きを書いていくので、ぜひ、その時は閲覧してください。