「戦~巳水関・虎牢関 弐~」
「追撃です! 出来る限り敵の戦力を減すのです!」
俺達は敗走する兵に追撃をした。
逃げる兵を撃つのは容易く、敵兵は屍を築いていった。
そんな中、俺は地面に倒れる馬超の姿を見つけた。
「馬超!? 大丈夫か!?」
「……木葉様……」
馬超の側には、馬超愛用の槍と倒れている愛馬がいた。
「馬超」
俺は馬超に向かい手を差し出した。
「こんな所にいたら危ないだろ? ほら、こっちに乗りなよ」
「……っ〜……」
一度、手を出した馬超だったが、拳を作り、武器を拾った。
「手助けは無用です。私はまだ戦える」
「あっ、馬超!?」
馬超は槍を持つと、戦場に駆けて行った。
「馬超なら大丈夫か。誰か!? 馬超の馬の手当てを頼む!!」
命からがら逃げられた張遼は、兵達と共に巳水関に向かっていた。
「一体、何故奴等の軍が巳水関にいたのだ!?」
すると、正面から軍隊の影が見えた。
「敵か!?」
「張遼、無事だったか!?」
「賈ク!?」
張遼の前に巳水関を守っているはずの賈クが現われた。
「どうしたんだ?」
「すまん。私の策が諸葛亮に読まれていた。虎牢関の敵兵は距離を取り、陣に数多くの旗を立て、呂布には兵がいる様に見せている隙に、巳水関に移動をしてきていたのだ」
「しかし、それならば兵が遠目から見ても、人のいない事くらいは気配で気付くはず」
「そこが盲点だった。呂布の軍は初戦にて勝利を収め、相手との兵力差から気持ちが緩んでいたのだ。そこを諸葛亮に付け込まれた」
張遼の表情が曇った。
「諸葛亮……恐ろしい奴だ。それで賈ク。これから、我等はどうする?」
「一度、巳水関に戻り、体制を立て直そう」
「わかった」
「門を開けよ!!」
巳水関に到着した張遼は、守備兵に告げた。
しかし、巳水関内からの反応はなかった。
「門を開けよと言ったのが聞こえないのか!?」
その瞬間、巳水関の城壁の上から矢が放たれた。
「なっ、何をするのか!? 私だ! 張遼だ!」
「馬鹿か!? 立ってる旗をよく見ろってんだ!?」
その時、城壁から張飛が姿を現した。
「何!?」
巳水関の城壁には、木葉軍の旗が立っていた。
「お前らが夢中で逃げてる間に、俺が軍師の言った通り巳水関に来てみたら、守備も何もなかったから、簡単にとれたぜ」
「まさか!? 私と張遼がいない時を狙って……」
賈クは悔しさを滲ませた。
自らの策が敵に読まれ、利用していたつもりが、逆に利用されていたからだ。
「……しょ、諸葛亮〜……」
「賈ク、ここにいては危険だ! 一度、長安まで退こう!」
「仕方ない」
そして、張遼、賈クは軍勢を引き連れ、長安に向かっていった。