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「戦~巳水関・虎牢関 壱~」

 呂布軍との戦から退き、距離をとった張飛軍の状況は悲惨だった。


「畜生! 兄貴から預かった兵の半分が……」


 二千いた張飛軍の兵は、半数まで減っていた。


「張飛将軍。まだ、戦は終わってません。我等が軍師様より受けた命は、敵兵の足止め。命を落としていった兵達に、勝利と言う花を贈りましょう」

「……馬超……」


 落ち込んでいた張飛だったが、馬超の言葉を聞き、顔をあげた。


「ばっかやろう! そんな事、お前に言われなくたってわかってるんだよ!」


 その張飛の態度を見て、馬超は小さく笑みを零した。


「それでは張飛将軍。次の策を立てましょう」

「もちろんだ」


 しかし、張飛から出る策はなかった。


「ば、馬超!」

「はい?」

「ちなみに、お前の策を言ってみろ」

「私ですか? いえ、いえ、私の様な新参者の策など」

「いいから言ってみろ!」


 張飛の言葉に負け、馬超はゆっくりと喋り出した。


「では失礼致します。先ほどの戦にて我等は軍の半数を失いました。このまま挑んでも負けは見えております」

「じゃあ、どうするんだよ?」

「奇策にて敵を翻弄し、時を稼ぐのです」

「その奇策ってのは?」

「はい」


 すると、馬超は懐から小さな巾着袋を取り出した。


「これは?」

「軍師様から預かってきました物になります。窮地の際、開く様に言われましたが、今がその時」


 そう言って馬超が開いた袋の中には、小さく折られた紙が入っていた。


「これか」


 張飛が袋から紙を取り出した。


「なに、なに?」






 関羽は諸葛亮の指示により、巳水関の近くに二千の兵と姿を隠していた。

 そして、張飛軍の虎牢関への攻撃が始まったのか、慌ただしく巳水関の扉が開かれた。


「来た……」


 関羽は馬上にて機を伺っていた。

 そして、ゆっくりと手を上げ、突撃の合図を送ろうとした。


「ぎゃぁぁ!?」


 突撃響く声に、関羽は慌てて振り返った。


「どうした!? 何があったのだ!?」

「後方部隊が敵の攻撃を受けております!!」

「なに!?」

 関羽も敵に背後から襲われると思っていなかったため、動揺が走った。


「関羽将軍! 味方は総崩れにございます!」

「くっ……一度体制を立て直す……退け!!」






「……はぁ、はぁ……ひ、被害は!?」

「はっ! 只今の戦により、兵は三分の二まで減りました!」

「……くっ……」


 関羽は拳を握り締めた。

 だが、体制を立て直すにも、相手との兵力に差があるため、どうにもならなかった。


「皆に伝えよ。これより我等は敵の追撃に備える。直ちに防壁を作るのだ!」


 関羽の言葉を受けた兵は、直ぐに軍内へ消えた。


「これ以上、被害を大きくするわけにいかない」






「さすが賈クだ。我が軍の勝利だ」


 張遼は関羽軍との戦に勝利し、勢いを持ったまま、追撃を命じた。


「今こそ好機! 敵将の首をとるんだ!!」

「放てぇ!!」


 だが、そんな張遼軍に対し、矢の雨が降り注いだ。


「な、何だ!?」






 張飛軍敗戦の報告を受けた俺と諸葛亮は、直ぐに軍を動かした。


「やはり、虎牢関には呂布が行った様ですね」

「あぁ、諸葛亮の言った通りだ」


 諸葛亮は今回の賈クの策を読み切っていた。

 自分の策を賈クが読み、裏をかかれる事も。


「木葉様。急ぎましょう! 関羽将軍がやられてしまっては、元も子もありません!!」


 そうして、俺と諸葛亮の本隊は関羽率いる軍が伏している場所に向かった。

 すると、既に関羽軍は退却した後で、追撃に向かう敵軍を発見した。


「諸葛亮!?」

「はい。全軍構えを」


 そうして移動する足を止め、弓兵は弦を引いた。


「今です! 放てぇ!!」


 その瞬間、勝利に酔い追撃をする敵軍に矢の雨が降り注いだ。


「ぎゃぁぁ!!」

「敵だ!? 敵の伏兵だ!!」

「何だと!?」


 敵将も俺達の登場は予想外だった様だ。


「木葉様。このまま、攻撃を続けましょう」

「よし! 馬超! 馬超!!」


 しかし、一向に返事は帰って来なかった。


「あれ? 馬超! 馬超!!」

「木葉様。馬超将軍でしたらあそこに」


 そう言って諸葛亮の指を追って行くと、虎牢関にいるはずの張飛軍の姿があった。


「えっ!? 何で張飛がここに……それに馬超まで……」

「話は後ほど致します。今は好機です。全軍に突撃命令を!!」

「わ、わかった」






「な、何だ……一体どうなってる!?」


 張遼は木葉軍の本隊と張飛軍の出現に混乱していた。


「くっ……血路を開いくんだ!!」


 さすが、武力にも優れた張遼である。

 向かってくる敵兵を次々に切り倒していた。


「見つけたぞ! お前がこの軍の大将だな!!」

「何者だ!?」

「涼州の馬孟起! 大将首もらい受ける!!」


 飛び込み際に馬超は槍を振ったが、張遼は見事にその一撃を受け止めた。


「お前があの涼州馬騰の娘か。なかなかのじゃじゃ馬だな」


 張遼は馬超の槍を力任せに弾き返した。


「っ……さすが大将首。そうじゃなくちゃ面白くない!!」


 そして幾度となく交わる武器。


「はぁぁぁぁ……っ!?」


 次に馬超が攻撃を繰り出そうとした時、乗っていた馬が地面に開いた穴に足を取られて転倒した。


「うぁぁぁぁ!?」


 そして馬超が顔を上げると、張遼の偃月刀の刃が目の前にあった。


「不運なれど、この勝負はお前の負けだ」


 そう言うと張遼は刃を引いた。


「お前は面白い。この様な決着は認めん。いずれまた、戦場で会おう」


 張遼は素早く方向転回し、馬を走らせた。


「ぁ……っ~!!」


 馬超は拳を堅く握り、地面を殴った。


「……っきしょう……ちくしょう!」




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