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「董卓軍 〜集結〜」

 それから、数刻前。


「董卓将軍よ。敵が攻めて来たと報告を聞きましたが、大丈夫なのですか?」

「帝のご心配に及びません。既に、我が軍の精鋭を集め、策を練っております」


 董卓は膝をつき、幼い帝に言った。


「そうか。董卓将軍がそう言うのなら、全て任せます」

「はっ! この董卓。身命に誓って帝を御守り致します。では、敵が迫っているため失礼させて頂きます」


 そう言って、董卓は立ち上がって、部屋を出ていった。

 ば~か。お前は、俺の手のひらで転がっていればいいんだよ。誰が命賭けて守るかってんだよ。


「おい、呂布! 呂布はいるか!?」


 一向に名前の人物から返答がなかった。


「え~い。張遼!!」

「はっ! お呼びでございますか?」


 董卓の前に鎧をつけた若い青年が膝まづいた。


「呂布を儂の下に連れて来い! 今、すぐにだ!」

「かしこまりました」






「あ~、全く、呂布の奴は……」


 張遼はため息を吐きながら、ある場所に向かっていた。

こう言った事は今回が初めてではなく、その度に張遼が呂布を迎えに行っているのだ。






 張遼が長い通路を進むと、やがて広い庭に出た。

その隅には一人の女の子がいた。


「おい、呂布。また、ここに来ていたのか」


 呂布と呼ばれた女の子は、くるりと振り返り小さく頷いた。


「董卓様がお呼びだぞ」

「行きたくない」


 呂布は軽く首を横に振って拒否をした。その行動もいつも通りのため、張遼は少しも戸惑うことなく呂布に言った。


「はい、はい。お前が、嫌いなのはわかったから、さっさと行くぞ。でないと、俺が董卓様に叱られるんだからな」

「い~や!」


 呂布は両足に力を込めて子供の様に抵抗をした。


「またかよ。たまには大人しくついて来いよな」


 全く、腕は俺より達ってのに、何でこんな性格なんだよ!?

 しょうがない、いつものでいくしかないか……


「呂布。大人しくついて来れば、その後、お前の好きな物を腹一杯食わせてやるぞ」


 張遼の言葉を聞いた呂布は、突然、両足の力を緩めた。そのせいで、張遼は勢いをつけて前方に転がっていった。


「でぇ~~!?」


 そして、呂布は転がっていった張遼を追いかけて顔を覗き込んだ。


「それは本当か、チョウ!?」

「だから、いつも言ってるだろ!? その呼び方は止めろって!」


 張遼が呂布を小ずこうと顔を上げると、すでに呂布は通路を歩いていた。


「何をしている!? 早く行くぞ、チョウ!!」

「はぁ~、はい、はい、わかったよ」


 張遼はため息を吐きながら、呂布の後を追った。






「董卓様。呂布を連れて参りました!」

「ご苦労」


 張遼は連れて来た呂布と共に董卓の前に膝まづいた。

 董卓はその二人を椅子に腰掛けて見下ろした。


「早速だが、ぬし達二人にはこの儂を殺そうなどと考える蛆虫供の始末を任せる」

「お~、戦か!? 久々に暴れられるぞ!!」


 喜ぶ呂布と対照的に張遼は表情を歪めた。

 あの連合軍の中には、曹燥、孫堅と名高い武将達も多数いる。それを私と呂布で破ると言うのか?

 確かに、呂布の腕は兵士千人には匹敵しようが、それだけではこちらの負けは必須。

 張遼の頭の中で思考が駆け巡り、ある二人の人物が浮かんで来た。


「董卓様」

「なんだ?」

「恐れ多くも、今回の敵の中には、曹燥、孫堅と言った名将もございます。そこで、より確実に勝利を董卓様のものにするため、二人程、我らの軍にお加え頂きたい人物がございます」

「ほぅ、誰だ? 言ってみろ」

「はっ! 一人は、豪傑、華雄将軍。そして、賈ク」


 董卓は張遼の言葉を聞いて、その程度かと鼻で笑った。


「許す。その二人も連れて行け」

「ありがとうございます。それでは、早速、出陣の準備を致します」


 張遼はすっと立ち上がり、その場を後にした。そして、張遼の後を追う様に、呂布も立ち上がった。






「お~い、華雄!」


 張遼は董卓の部屋を出たその足で訓練場に来ていた。

そして、その中で兵士達に厳しく激を飛ばしている鎧をきた男に声を掛けた。


「ん? おぉ、張遼じゃないか!? それに呂布も! 相変わらずちっちゃいな」


 華雄が呂布の頭をごつい手でくしゃくしゃと撫でた。


「カーのなでなでは、痛いから嫌」

「は、は、は! やっぱり、呂布はこうだよな!」


 呂布をからかい終わった華雄は、張遼に鋭い視線を向けた。


「珍しいな、お前が俺の所に来るのは……例の連合軍との戦か?」


 張遼は華雄の視線を正面から受け止めて頷いた。


「あぁ。今、董卓様から討伐の任を受けた。あの連合軍には、曹燥、孫堅などの名将が多数いる。総大将が袁紹と言うのがせめてもの救い。しかし、個々の部隊の力が強いため、万が一協力し合う事が起これば、我々の敗戦は濃くなる。その前に一つでも多くの部隊を個々で叩いて行かねばなるまい。そこで、華雄将軍の力をお借りしたい」


 華雄は張遼の言葉に賛同する様に頷いた。


「わかった。直ぐに準備を整えよう」






 華雄の準備を待つ間に、張遼は賈クの下を訪れた。

 賈クは現在、父親の看護で一日を過ごしていた。


「賈ク!」


 張遼が声を掛けると、賈栩は嬉しそうに近付いてきた。


「おぉ、張遼じゃないか!? また、酒でも飲みに来たのか?」

「ははは、酒は今度来た時にたらふく頂くよ」


 張遼は賈クの言葉に笑って返した後、直ぐに本題に入った。


「今日は、ちと、お願いがあって来たんだ」

「急に改まって、どうしたのだ?」

「今、董卓様の命を奪うため、連合軍がこの都に近付いて来ている」


 そこまでの説明で賈クの顔色は変わり、すでに張遼が何を言いに来たの理解した様だった。


「賈クにとっては辛いかも知れない。だが、それを承知でのお願いだ。頼む、我らと共に戦ってくれ!!」


 賈クは張遼の姿を見てため息を吐いた後、自分の中で何かを決意した様だった。


「はぁ~、張遼。どうやら俺は、お前達と長く付き合い過ぎてたらしい。お前達が死地に行くのを黙っていられそうもない」

「それでは!?」

「あぁ、お前達と一緒に行ってやるよ」


 その言葉に張遼は、子供の様に喜んでいた。

 張遼がそうなるのも無理ない。張遼の中では、賈クが来てくれるかどうかで勝敗が大きく傾くだろうと思っていたからだ。

 こうして、メンバーを集めた張遼は、戦の準備を整え戦場に向かった。


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