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「反董卓連合軍 〜集結 弐〜」

 勢いよく大斧と大剣が交じりあう。

お互い一歩も譲らない好勝負だが、このままではいずれどちらかが命を落とすことになる。

そして、再び大斧と大剣が交じった後、夏侯惇の方が一瞬早く次の攻撃に入った。相手もそのことに気付いたのか顔色が変わった。


「終わりだな」


 そして、夏侯惇の大剣が大斧とぶつかる瞬間、勝利を確信するように夏侯惇は笑った。

 しかし、大剣が大斧とぶつかる前に一本の槍によって受け止められた。


「ぐっ! 貴様、何奴だ!?」


 夏侯惇と顔良の間には、まだ、二十にもならぬであろう女が長い長髪をなびかせ、一本の槍だけで二人の戦いを止めていた。


「私は、涼州馬騰の長女、姓を、名をちょう、字を猛起もうきと申します。出過ぎた真似とは思いましたが、戦前の仲間割れは悪戯に戦力を削り、士気を落とすだけです。どうか、お二方共、剣をお納め下さい」

「馬超? そう言えば、涼州の馬騰に、腕の立つ娘がいると聞いていたが、貴様の事だな?」


 自らの大剣を止められた夏侯惇は、挑発するように言った。


「そんなに名が通っているのか。その通りですが?」


 夏侯惇の挑発に馬超も挑発的な態度をしめした。

 二十に満たない若造に言われ、夏侯惇も怒りをあらわにした。


「貴様の腕など、所詮は田舎者の噂が膨張して、伝えられているのであろう?」

「何!? 何なら、今すぐにお見せしますが、命の保証はしませんよ?」


 おい、おい。そこで挑発に乗ってどうするんだよ。やっと収まると思ったのに……。馬超って、以外に短気だったりするのか?

 その光景を離れて見ていた木葉は、一緒に来ていた諸葛亮に話し掛けた。


「なぁ、諸葛亮。あいつらを止める、良い方法はないか?」


 諸葛亮はじっと三人の姿を見た後、深いため息を吐いた。


「あの三人を止めるには、武芸の達者な関羽将軍や張飛将軍がいなければ難しいです」

「私をお呼びになりましたか?」


 その声に俺と諸葛亮はほぼ同時に振り返った。


「関羽!? 何でお前がここにいるんだ!?」

「何でとは、決まっているではないですか。騒ぎが起こったと聞き、兄者が心配で駆け付けて来たのです」


 ナイスだ、関羽!!

 でも、関羽は俺の事になると、結構、個人で動いちゃうところがあるからな。それは、後で注意でもしておくか。


「ちょうど、良かった。早速で悪いけど、あの三人を止めてくれ。これから戦だって言うのに、仲間割れはまずい」

「わかりました。では、兄者はこちらでお待ち下さい」






「待てぃ! 貴殿達は何をしているのだ!? 戦前に将がそんなことでは、兵の士気に関わるであろう!」


  関羽の声に真っ先に反応したのは、夏侯惇であった。


「貴様は関羽!? あの時の屈辱、忘れてはいないぞ」


 そして、夏侯惇とは違い馬超は関羽の姿を見てキラキラと目を輝かせた。


「あ、あなたが、あの関羽将軍でいらっしゃるのですか?」

「そ、そうだが……」


 関羽がそう答えると、馬超はプルプルと身体を震わせた後、すごい勢いで関羽に抱きついた。


「本物だぁ~! 本物の関羽将軍が私の目の前にいる~!!」

「ななな、何をするか!? 私は、貴殿達の内紛を止めに……」

「貴殿なんて呼ばないで下さい。私のことは、猛起と呼んで下さい!」

「あ、その……」


 馬超の勢いにすっかり押されてしまった関羽はどうしていいのかわからず、偃月刀を構えたまま固まってしまった。

 その光景を見ていた夏侯惇と顔良は、すっかりやる気が失せてしまい武器を下ろした。


「チッ! 運がよかったな。次に猛徳に刃を向けた時は、首が無いと思え」


 舌打ちをして、夏侯惇は主の下に戻っていった。それに釣られる様に顔良も青ざめた顔をして戻っていった。


「関羽、悪かったな。お陰で助かったよ」


 そう言って、木葉が関羽に労いの言葉を掛けると、馬超が木葉の顔を覗き込む様に見ていた。


「この方が、関羽将軍の主ですか?」

「そうだな。主であると同時に、義兄妹の契りを交わした兄でもある」

「そうなんですか……。何だか弱そうな方ですね。何故、関羽将軍はこの方と義兄妹の契りを交わしたのですか?」

「それは、兄者の心に惹かれたからだ」

「ふ~ん」


 どうも納得のいかない様子の馬超は、俺と関羽の顔を交互に見た。その馬超を見て俺は自分が名乗っていない事に気が付いた。


「そう言えば、まだ、名前を聞いていなかったね。俺は、木葉。清水 木葉」

「木葉? 珍しい名ですね。私は、涼州馬騰が娘。姓を馬、名を趙、字を猛起と申します」

「よろしく、馬超」


 そう言って、木葉は笑顔で握手を求めた。

木葉の顔を見た馬超は、少し頬を赤く染めて俯きながら握手に応じた。

そして、握手を終えて少し距離を取り関羽の後ろに隠れる様に回り込むと、とんでもない事を口にした。


「関羽将軍。もしかして、木葉殿は床上手なのですか?」

「な、何を言っているのだ!?」


 木葉よりも先に関羽が、馬超の言葉を否定した。


「だって、木葉殿の顔を見たら、胸が騒ぎ出して……。父上からは、殿方の顔を見て胸が騒ぎ出したら、その方は床上手だって……」


 な、何を教えてるんだ。自分の娘だぞ!? くぅ~、だめだ……俺には理解出来ない。 

俺が頭を抱えていると、突然、一人の兵士が顔色を変えて大声で叫んだ。


「敵、董卓軍が攻撃を仕掛けてきました!」

「何!?」


 その場にいた将達の表情に、緊張が走った。


「ふん、面白い。夏侯惇、すぐに出陣だ!」


 その曹燥の言葉に釣られる様に、他の将達も自らの陣に戻っていった。


「諸葛亮、関羽。俺達も、戻って戦いに備えよう」

「はい!」

「わかりました、兄者!」

「それじゃあ、私も父上の所に戻るよ」


 馬超の表情は先ほどまでと違い、将の顔に変わっていた。


「あぁ、また、会おうな」


 軽い言葉だけ交わし、それぞれの陣に戻っていった。


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