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「董卓と賈ク」

 一方、その頃、昨晩城を出た賈クは、すでに都に到着していた。


「ふむ。やはり都は華やかだな」


 辺りを見回しながら、大きな通りを馬の手綱を引きながら歩いていた。

 暫く行くと大きな扉とそれを守る様に立っている門番の姿が、賈クの前に現れた。


「あれか……」


 賈クは門番に近付いて行った。


「私は今回韓遂討伐の命を受けた木葉様の使者として参った。すまんが帝に取り次いで欲しい」

「はぁ~? 帝にだって? 無理だ。今帝はお忙しいのだ。さぁ、帰った! 帰った!」


 門番の男は大袈裟な仕草をし、その後、小さい声でぼそっと言った。


「まぁ、お前の態度次第では、相談にのらなくもないが……」


 その言葉ですぐに賄賂を要求しているのだと賈クは気付いた。

 

(こんな門番までも賄賂を贈らねば動かぬとは朝廷も終わりだな)


 そう心で呟きながも、賈クは袖下から門番に賄賂を渡した。


「どうかお取り次ぎをお願いします」

「……ちょっと待っていろ」


 そう言って、門番は中に入って行った。

 暫くすると門番は戻って来た。


「帝はお忙しいので会う事は出来ぬとのことだ。しかし、帝の代わりに董卓将軍が話を聞いて下さるそうだ」


 やれやれ、帝と話す前に今回の敵の将軍と話すことになるとは、考えもしていなかったが敵を知る良いチャンスかもしれない。

賈クが門番に案内をされて向かったのは、その場所から少し離れてた所にある部屋だった。

 中に入ると董卓がふてぶてしく足を組み、その足に肘を立て、じっと賈クを観察するように見ていた。


「お前が木葉の使者の者か?」

「いかにも。賈クと申します」


 賈クは一礼をした。

 思っていた通り、この董卓と言う男は、すでに自分が権力を握ったつもりでいるようだ。っとなると、この男を説き伏せられなければ、今回の私の任務を遂行することなど無理だと言う事。


「して、お前は何をしに来たのだ?」

「利を説きに参りました」

「ほう。その利とは?」

「現在、涼州で韓遂が叛旗を翻したのは知っているはずです。私の主人あるじが、この討伐軍として朝廷より命を受けました」

「その事は耳にしている」

「しかし、私達は先の戦にて功績は上げたものの、董卓将軍を始め官軍の将軍達の足下にも及びません」


 董卓は賈クの話しを面白そうに聞いていた。

 それもそのはずだ。朝廷からの命と言ったが、実際に朝廷を動かしたのがこの男だからだ。恐らく、私がどの様な事を言うのかを楽しんでいるに違いない。


「私達は朝廷の命に従い韓遂討伐に行きますが、圧倒的なまでの戦力差があります。これでは時間を稼ぐのが精一杯。いや、敗戦を繰り返すでしょう。そして、私達が敗戦を重ねる事により、朝廷への信頼感が大きく欠けていく事になります」

「ふむ。その通りだな」


 董卓の態度は依然変わらなかった。その様子を見た賈クはあることに気がついた。

それは、董卓の貪欲な策だった。今回の朝廷からの命は董卓が指示したもの、それは私達がこれ以上力をつけると後の計画に何らかの影響が出ると見たからだろう。

 しかし、それだけではなかった。私達の力を削ぐのと同時に朝廷に対する信頼を失わせ、自分が帝の側に行く事こそが本当の目的だったのだ。

 董卓の目的を知った賈クに、ほんの一瞬、動揺が走った。董卓は賈クの一瞬の動揺を見逃さなかった。

 董卓が手で何かの合図を送ると、潜んでいた董卓の配下の者が賈クの手足を押さえつけた。


「董卓将軍!! 何をなさいます!?」


 董卓は薄ら笑いを浮かべながら立ち上がり、賈クの前に来た。


「さすがこの騒ぎの中使者として寄越されるだけのことはあるな。たったこれだけの会話で儂の目的に気付いてしまうとは」

「離せ!」


 賈クは必死に抵抗するが、がっちり固められた手足はぴくりとも動かなかった。


「どうだ? お前のその知恵を儂のために使わんか?」

「ふ、ふざけるな! 誰が貴様などのために!」

「まぁ良い。貴様はいずれ自分から儂の下に来るだろうからな。そいつを閉じ込めておけ!」


 賈クはずるずると引きづられる様に連れて行かれた。


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