「休息」
一方、黄巾賊との戦に勝利した俺達は、公孫さんや趙雲と別れ、自分達の城に帰って来ていた。
「あ~。やっぱ此所が一番だな! なぁ、兄貴に姉者!!」
張飛が思いっ切り伸びをしながら言った。
空は快晴。あの戦後は静かで平和そのものだ。張飛に限らず誰もがあの様になるだろう。
「こら、益徳! 少しは場をわきまえろ!」
「そんなに堅くならないでよ。俺まで堅苦しくなっちゃうから」
関羽は相変わらず、ちょっと堅い所があるよな。会ってから結構経つのにな。それに比べて、張飛は楽観的だ。俺は張飛の様に接してくれた方が楽なんだけど……まぁ、いいか。
「関羽、張飛。せっかく天気もいいし、少し街に行ってみないか?」
「さすが兄貴! じゃあ早速行こうぜ!!」
「な!? 何を言っているのです。兄者には政務があるでしょう!!」
ん~。まぁ、関羽はこうくるだろうと思ったから、すでに手を打っておいた。そろそろのはずだが……
「お~い、木葉様! 準備が整いましたよ~!」
そう遠くから手を振っているのは諸喝亮だ。
「諸葛亮!? お前も一緒に行くのか!? 政務はどうするのだ!?」
「あっ、それは大丈夫です。今日の分は終わらせてあるし、何かあったらすぐに報せる様に言ってありますから」
さすが諸葛亮だ。あの関羽に付け入る隙を与えてない。いくら関羽でも、断る理由がなくなったな。
「――ってことだ。何も心配ないなら関羽も来るだろう?」
「わかりました。全く、こうゆう事に頭を使わずとも……(ごにょ、ごにょ)……」
関羽は渋々街に行く事を認めてくれた。
しかし、これで何にせよ、皆で出かけることになった。
いつも政務で忙しい諸葛亮や関羽に少しでも休みを与えたいと思って、俺が計画したことだ。張飛にも……もちろん感謝してるけど、言えばついて来るとわかっていたからな。
それから、皆で街に出た俺達は店が並ぶ市にやって来ていた。
「凄い盛り上がっているな!」
「おっ、だんな! 今日は、皆さん御揃いですか!?」
店の亭主が俺に話しかけてきた。
「まぁね。そうだ! おじさん、肉まん4つちょうだい」
「はいよ! 毎度ありがとうございます」
すぐに熱々の肉まんを詰めた袋をおじさんから渡され、皆に一つずつ渡した。
「ほい、諸葛亮」
「ありがとうございます」
「そんなに見なくても、関羽と張飛の分もあるぞ」
「な!? わ、私はそんなに物欲しそうに見ていません!」
ちょっとからかったつもりだったが、関羽の反応が余りにも可愛かったので、これからもちょくちょくからかおうと思った俺であった。
「此所の肉まんは、この辺じゃ一番だぞ」
すると、さっそく、張飛がぱくりとかじりついた。
「うまい!! やっぱ、兄貴のおすすめなだけはある!!」
張飛、諸葛亮は、熱さで口をはふはふしながら肉まんを食べていた。
しかし、関羽だけは何故か食べるのを躊躇していた。関羽は普段から、歩きながら食べるのは行儀が悪いって言ってたからな、それを気にしているのか?
「皆。あそこの椅子でちょっと休憩していこう」
そう言って俺が椅子に座ると、関羽もほっとしたように座り、ぱくっと肉まんを食べ始めた。
「ふぅ~。皆、いつもありがとな」
「急にどうしたんだ、兄貴?」
「皆には、助けて貰ってばかりだからな」
「そんなことありません! 私達は、兄者と出会わなければ、今こうして人々を救う事が出来なかったのですから、私達の方こそ、兄者には感謝してもしきれません」
「ありがとう。関羽、張飛、諸葛亮」
ちょっと感動して、危うく涙腺が緩むところだったぞ。さすがに、皆の前では恥ずかしいから我慢をした。
この世界に来て関羽達と出会って、守るべき大切なものが俺にはたくさん出来た。
俺は、自分の本当の居場所を見つけられたのかも知れない。