父様は確かにキラキラ体質だけど王様になると思うわけが無いby自分はただの村人だと思ってたら王太子になったA
「明日王都に引っ越すから」
「何言ってるの父様。」
放浪癖のある父が数カ月ぶりに家族の元に帰ってきて直ぐにこの様に宣った。
「○○村(町)に引っ越すから」という言葉を聞くこと数十回。同じ地域に長くて1年、短ければ半月しか居ない程の引越し族。
きっとまた「今度こそ理想の土地だ」とか言い出すのかと思えば、大都市中の大都市である王都に引っ越すなんて思いもしなかった。
引っ越す理由を聞いても、はぐらかして何も言わなかったが、珍しく母様がどこか嬉しそうなので王都に行くことは良いことの証なのだろうと思ってた。
思ってました。
急に決まった引っ越しに家中バタバタとし、悲しいかな、繰り返されされる引っ越しによりあっという間に荷物をまとめてしまう我が家は、父が手配したらしい荷役配達業者にしたらやけに豪華な荷馬に次々と荷物を積んでしまう。
この時にいつもの事だと流さずに、もっと疑問に思って質問すれば厄介事を回避出来たのではないかと、今更ながらに思う。
翌日、身の回りの品だけ持った我が家は、たった半年しか住まなかった我が家を後にし、父が手配したらしいが、いつもとはランクが何段階も上に見える豪華絢爛な真新しい馬車に押し込められて王都に向かうこととなった。
馬の綱を持つ業者は非常に見覚えのあるお人で、馬車の近くで馬を走らせる十数人の人達は誰も見知った人間だった。
引越し先にいた隣の一家の人や父の知り合いらしい剣の先生、忙しい母の代わりに弟妹達の面倒を見てくれたおっちゃん、寺子屋という私塾のお姉さん先生。
この時点でもいつもとは違うということが分かるのに、父様や母様は何も答えてはくれない。
全てを語ってくれたのは、王都に向かう途中に寄った、物語の中のお貴族様が住むような屋敷の中に入ってからだった。
屋敷に入った途端、物語の中の存在だと思っていた、侍女や侍従、執事と思われる方々に、えらく歓迎され、案内されるままに着いて行くと、顔は父様そっくでも背は明らかに高く、年は父様よりいくらか若い女性がいた。
どうやら「こーしゃく」に嫁いだ父様のお姉様らしい。
父様は確かにキラキラしてて整った容姿をしているが、僕から見たら叔母様らしい女性は正に傾国の美女と言ってもいいのじゃないかと思う程美しい人だった。
これなら平民でもお貴族様に見そまれるなと思いながら、父様による僕達の紹介を他人事のように聞いていたら、聞き捨てならない言葉を聞いた。
「やっと王になる気になったのね、リーフリード。ミリアリアから長男のレジナールを王太子にするって聞いた時、驚いたわ」
因みにリーフリードが父様の名前で、ミリアリアが母様の名前、レジナールってのが僕の名前。
ちょっと前まで家庭菜園レベルとはいえ畑を耕して、朝昼に井戸に水を汲みに行っていた僕が王太子って、んなアホなことあるわけ無いと思たが、真実らしい。
その証拠に、突如この国の王様夫妻に抱きかかえられた弟妹達が、いわゆるお貴族様が着るようなドレスやタキシードっぽい服を着て現れ、母様がキラキラした王家の色とされた黄色のドレスを着て現れた。
黄色一色のドレスは王家の人しか着れないのは辺境にする子供でさえ知っている風習で。
先程の話は事実でしかないことを知った。
僕が母様が着ているドレスの色に驚いていたのを叔母様が気付き、どういう事だと言うように父様に詰め寄っていた。
その隙に母様に連れて行かれたのは、見覚えのあるメイド服を着たお姉さん達が待機する衣装部屋。
ポカンとしている間に深い緑を貴重とした衣服を着せさせられ、引っ張られるように連れて行かれたのは、広い食事を並べられた机のある部屋。
いつの間にか着替えていた父様が、王様の前に座り母様が、王妃さまの前、叔母様たちの前には僕達が座ることになり、小さい時に語られた、晩餐会であると思いいたった。
遠くから眺めた事のない大物と同じ空間で食事をする、食事マナーを理解していない弟妹達がやらかす事々に胃が痛くて豪華な食事は味の分からないものとなった。
その中で大人たちが話していたことを細切れながらまとめると、視察と称して辺境の地を回るうちに僕達の存在を隠しきれなくなった王太子の父様が、目ぼしい引越し先を国内に見つけられなくなった為、他国に行こうと我作したけど王様に察知されて急に決まったらしい。
父様が王位継承の義を行なう日と戴冠式の日が。
王位継承の義は、内々だけで先に行うらしくそれが今から一週間後、戴冠式は更に一月後らしい。
何でも存在を隠された王太子の子供たちのお披露目も兼ねるらしく、衣装の準備やらなんやらで最低一月は準備期間がいるらしい。
聞いていたら、気が遠くなる。
そして気づけば1月がたち、お披露目の日となった。
一月前初めて入った王城は広くて迷うし、村の友達だと思ってた同い年の友達は、実は側近候補の公爵家の人間で(叔母様の家で聞いていた「こーしゃく」は公爵家のことだったらしい)、とある街で隣に住んでた一家は実は護衛だったり、小さい頃よく遊んだ女の子は実は隣国の王女様で僕の許嫁だったりと驚きの一月だった。
そして思ったのは、何故普通の村人とは違うと気づかなかった自分。
習ってた勉強もいわゆる、跡取り教育で礼儀作法、ダンスや剣術何でもござれなハイレベルな授業を受けていたのに。
悔やんでもしょうがないと思いつつも、着替えや風呂の際やお茶を入れたりといった簡単な作業も自分でさせてもらえない事を考えたらどうしても悔やんでしまう。
物思いにふけったまま戴冠式を終え、王城のバルコニーから王太子として演説すると言う大役の中改めて思う。
キラキラ体質な父様が王様(王太子様)と思うわけ無い。自分は、あくまで村人でしかないと思ってたから、と




