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よろしくお願いします
次の日、いつものように朝一でログイン。ベットから起き上がり朝日を拝む。
「さあ今日で終わらせようかね~。ついでに重位の武器も作ろうかな、今日は生産祭りだ」
チクチク、チクチクチク、朝っぱらから細かい作業はキツイな、いくらゲームの中と言えど。
白無垢に刺繍を施す。何にしようか、やっぱり春っぽいものがいいな、特に理由はないけど。
打掛には、桜と鹿の番、桜の木の下で鹿の番が草を食む様子を。掛下振袖には鶴と亀、縁起物だね。本来は打掛にするものだと思うのだが、まあ細かいことはいいんだよ。
帯には桜とそれに集う蝶。蝶の種類はまあ、何でもいいか、アオスジアゲハっぽくしようかな。水とか撒いておけばよく飲みに来るあいつだ。本当は縁起的に蝶の柄は良くないらしいんだけど、男と男の間をふらふらするだとか、蝶は黄泉の国からの使者だとか。とにかく細かいことは~ってことで、綺麗だから良いじゃんねぇ。
肌襦袢・長襦袢には刺繍はしなかったんだけど、裾よけにも軽くしておきました。なぜなら腰用装備となるのはこの裾よけだけだからね。これには桜が散る様を、縁起悪いかもしれないけどね。
〔銘:舞珠 白無垢・上〕
フウカ作 花嫁衣裳
レア度:C 品質:B
防御力:15+6 耐久度:110
重量:3
特殊効果:防御力上昇(微)
刺繍:クリティカル率上昇(微)
肌襦袢・長襦袢・掛下振袖・打掛・帯の一式
そのすべてを着て初めて効果を発揮する
互いの愛を神に誓うために着るものであり
本来は戦闘の場に着て来ていいものではない
〔銘:舞珠 白無垢・下〕
フウカ作 花嫁衣裳
レア度:C 品質:B
防御力:3+1 耐久度:90
重量:1
特殊効果:防御力上昇(微)
刺繍:クリティカル率上昇(微)
薄いがなかなか丈夫な造り
裾よけのみなので防御を期待してはいけない
互いの愛を神に誓うために着るものであり
本来は戦闘の場に着て来ていいものではない
ついでに足袋にも刺繍をして完成。イノシシが座って上を見上げているような感じで縫いましたよ。なんでイノシシかって言ったら、鹿に蝶ときたら猪だろうということで。
〔銘:舞珠 白無垢・足袋〕
フウカ作 花嫁衣裳
レア度:C 品質:B
防御力:3+1 耐久度:100
重量:1
特殊効果:防御力上昇(微)
刺繍:クリティカル率上昇(微)
一見薄手だがしっかりとした造り
足袋底もきちんと補強されており安心
互いの愛を神に誓うために着るものであり
本来は戦闘の場に着て来ていいものではない
綿帽子にはカマキリを目立たないように縫うことにしました。これからはサイン代わりに縫うことにした。武器には縫えないから彫ろう。この綿帽子の刺繍をする時に決めたので、急いで他の白無垢一式にも縫い付けた。
〔銘:舞珠 白無垢・綿帽子〕
フウカ作 花嫁衣裳
レア度:C 品質:B
防御力:1+1 耐久度:100
重量:1
特殊効果:防御力上昇(微) 認識阻害(小)
刺繍:クリティカル率(微)
防御性能は皆無だが
周囲に認識されにくくなる
互いの愛を神に誓うために着るものであり
本来は戦闘の場に着て来ていいものではない
最後に筥迫も作った。武器とも防具ともならないが持たせることは可能だ。こういった戦闘とは関係ないものも作れるし、この里にはなかったが専用の生産スキルもある。
〔筥迫〕
フウカ作 花嫁衣裳
レア度:C 品質:B
重量:1
紙や櫛など小物入れに最適
朝ごはんも食べずに一人集中してしまったのであっという間にお昼前になっていた。
「フウカさん、おはようございます。流石にお昼は取らないと午後の予定に障りますよ」
リリーちゃん達は三人で朝食を取っていた、私の邪魔をしてはいけないと気を使って声をかけるのをためらっていたらしい。もうすでに昼食の準備を終え心配してリリーちゃんが来てくれた。
「ありがとう。いやぁ~あっという間だったよ、なんだかものすごくお腹すいちゃった」
「ふふっ、そうだと思ってフウカさんのは特別に大盛りにしておきました」
「おっ、さっすがぁ~、今日はどんなパスタかなぁ~」
美味しくいただきました、ペペロンチーノっぽいやつ。ニンニクましましでベーコンたっぷりのね。あんまり女子が好んで食べるようなものではないと思うけどね。
午後は扇子を仕上げて、作品を完成させようか。
普通の扇子もいいけど、鉄扇ぽく攻撃要素も加えようかな。扇面には白無垢で使った反物を仕様、ついでに刺繍も出来たので花びらを舞わせてみた。
〔銘:白美 鉄蛹の扇子〕
フウカ作 鉄扇
レア度:C 品質:B
攻撃力:10+4 耐久度:100
重量:2
刺繍:クリティカル率上昇(微)
扇子にしては少し重いが煽げば
意外と涼しい
骨には鉄蛹の殻が使われており
打撃武器として使用できる
出来た、やっと完成したがセットで見てみると性能的に見たら嫁ぎに行く花嫁衣裳というか、嫁ぐ相手を暗殺するためのものに見えるな。
「ほう、できたみたいじゃな。妾に見せてくれぬか」
「おっ、ウルちゃんいいよ~」
〔銘:舞珠 白無垢・綿帽子〕
〔銘:舞珠 白無垢・上〕
〔銘:舞珠 白無垢・下〕
〔銘:舞珠 白無垢・足袋〕
〔銘:春風 乱斑猫の鋭牙刀〕
〔銘:白美 鉄蛹の扇子〕
〔筥迫〕
「おお! これはまた綺麗じゃの、しかしやはりこういった服を妾は見たことがないのぉ、歩きにくそうじゃが着てみたいものじゃ。不思議じゃな、これはいつ着るものなのじゃ?」
目を爛々と輝かせ食い入るように見つめる、このゲームの中では和服のような着物はないようだな、少なくともウルちゃんの記憶の上では。
「これは和服でね、私の国での伝統的な着物なんだよ。そしてこれは白無垢って言って、結婚する時に神様へ誓う場で着るものなんだ」
まさに穴が開くほど見ているウルちゃんにいつの間にかユーラちゃんも合流し一緒になって見始めた。なんだか二人とも真剣に見ているので外の空気を吸いに行こう。
外ではリリーちゃん達が稽古の真っ最中、今回はシヴァも一緒だ。軽快な動きで重位と連携を組みリリーちゃんと対峙しているが、レベル差か経験の差か簡単にあしらわれている。
リリーちゃんは見た目とは違いパワーファイターだ。その薙刀による一撃は並の防御は通じない。現にシヴァの構えた盾を崩しただけではなく数メートル後ろまで飛ばした。おいおい、ケガさせないでね。
「おーい、ちょっと狩りに行くから稽古終わらしてくれない? 」
「あ、はいわかりました。では用意しますので少し待っておいてください」
「いや、今日はシヴァをある程度強くするために私らだけで行こうと思うんだ」
「そうなんですか、わかりました。どこに行くんですか」
少しだけ拗ねたようにアヒル口になっている、可愛い。
「ちょっとアメリアの近くまで行く予定。みんながいると戦力過多になるからね」
「ふふ、そうですね。あのお二人が入るとここら辺では手ごたえを感じなくなりますからね」
「そうなんだよね、強すぎるのも困りもんだね。それにしてもあんな強い二人がなんであの状況になってたのかね」
「そうですね、今度聞いてみたらいいんじゃないですか? 答えてくれると思いますよ」
「うん、そうだね、まあ碌な話じゃなさそうだけどね。そんじゃ、日が暮れるまでに帰ってくるから」
「はい、お気を付けください」
『迷いの霧道』
今回は私ひとりと言うことで万全を期して私の特性を生かせるフィールドで戦うことに。ティルダ・飛梅・ギフトス・尚香・重位・シヴァで最初はやってみよう。
モンスターがやってくるのをいつものように気の上で待機中。シヴァは木の下で囮役に徹してもらっている。サソリの体を木の葉で隠して、知らないものが見れば美女が座っているように見える。少しサソリの頭部を見せるのがポイントだ、下半身に見えるからね。先にシヴァで特性を知っていてよかった、絶対に引っかかるからね。
なぜだろう、来る敵来る敵オークばっかりだ。四戦したがレベルが低めだからか重位が一回、シヴァが四回レベルアップしただけだ。
足軽甲蟲 「重位」 LV.17(+1)
ステータス
<生命力> 745
<魔法力> 100
<筋力 > 25
<防御力> 25
<智力 > 7
<素早さ> 18(+1)
<器用さ> 16(+1)
<精神力> 15
<運 > 29
軽戦蠍 「シヴァ」 LV.5(+4)
ステータス
<生命力> 500
<魔法力> 315(+15)
<筋力 > 13(+1)
<防御力> 14(+1)
<智力 > 13(+1)
<素早さ> 12(+2)
<器用さ> 13(+1)
<精神力> 11(+1)
<運 > 15
今日は二桁までシヴァのレベルを上げたいと思うのだけど、オークしか来ない。シヴァの魅力みたいなものが関係していると見た。ここじゃ緊張感に欠けるな、別の場所に移ろうか。
『草原』
草原と迷いの霧道の境目らへんで狩ろうと思う。森の中とは違い低い木が疎らに生えているだけなので不意打ちは難しいが、私とティルダは木の上で隠蔽シートを使い隠れる。他は多少背の高い草が生えているのでそこに潜ませる。例によって囮はシヴァ。
いくら待っても来ないな、なんか前よりもモンスターの数が減ってるようだけどなんでだ。待ちぼうけしてたら、アメリアの方向から何かが走ってくる。
う~ん、何かが何かに追われているな。これはミニイベントの予感! しばらく観察しよう、どうやらこちら側に向かってくるようだし。
「みんな、戦闘準備! なんかこっちに来るよ!」
我が眷属たちが構え、私はあの何かを見極めようと目を凝らす。両方とも人型だが後ろの奴は馬かなんかに乗っている、プレイヤーなのかもしれない。近づきだんだんと見えてきたが、先頭を走っているのは女性だ。
大きい人を小さい人が背負って、ものすごい速さで走っている。後ろの奴らは男のようだな、馬に乗りながら前を走る女性めがけて矢を放っている。これで後ろの奴らはお仕置き決定。
「よっしゃ、あの女の子たちを助けるよ! 」
接近するにつれ相手のなりが良く見えてみた。
追われている女の子たち、ひとりは長身で程よく小麦色の肌、顔の中心を額から口の部分にかけて白い線が入っている、戦化粧的なものなのかな。痩せ型で手足は長く、ポニーテールに纏められた赤い髪が風に乗っていた。
一見すると普人族の綺麗なお姉さんなのだが、下半身は明らかに人のものではない。細いウエストに反してがっちりとした太い腰と太もも、膝から下は細いが力強く地面を蹴っている。馬だ、下半身が馬と聞けばケンタウロスが思い浮かぶかもしれないが、馬の首から上が人間になっているのではなく、人間の下半身が馬の後ろ足になっている状態。馬の獣人だろうか、手には槍と思われる武器を携えている。
もうひとりの背負われているほうは、女性か男性かわからない。よく見えないが恐らく髪の毛は白っぽい色だ、それしか今はわからない。
後ろの奴らは、モヒカンやスキンヘッドなどいかにも賊な容姿をした六人ほどの集団が馬に乗り、追ってはいるが前を走っている馬のお姉さんがよほど早いのか、追いつけずにいる。しかし、追いつかれるのも時間の問題だろう、なんせお姉さんは自力で走っているのだ、体力にも限りがある。急がねば!
「尚香、先に飛んで間に入ってちょうだい! そこで雷電と代えるから」
待ってましたと言わんばかりにすっ飛んで行く尚香。頼もしいかぎりだ。
突然猛スピードでこちら目がけて迫る尚香に驚き足を止めてしまった馬獣人の女性だったが、何故か標的は自分ではなく後ろの賊ということに不思議に思いながらも、これ幸いと走り出す。その時、前方からまた別の集団が現れる、私たちだ。
「尚香交代だ! 雷電、足止めお願い!」
突如現れた蜂型のモンスターに動揺したのか足並みを崩し速度を落とす。なぜこんなところにいやがるんだ、邪魔するな、悪態をつき矢を射かけるがそんなもの尚香に当たるはずもない。足止めと挑発混じりに毒矢を賊に射る。
そして二つの魔法陣が開く、尚香と雷電が交代し威嚇を始める。さらに速度を落とし仕舞いには止まってしまった。口吻を地面に叩き付けさらに威嚇する、全力で走ってきた馬たちは疲れ動揺しそれを宥めるのに賊たちは手いっぱいのようだ。
馬のお姉さんの顔が見えてきた、なかなか美人さんだ、気の強そうな顔をしている。
「助太刀参上! お姉さんがたお逃げなさい」
「あ、ありがてぇ。助かるが、いいのか?」
「いいってことよ! ここは私たちに任しときなさい」
「頼んだ、お礼は必ずするからさぁ!」
「期待してますよぉ~」
走り去っていく美女を見送り、モヒカン野郎たちを一瞥する。深呼吸し気を落ち着かせる。
では、ヤリますか!




