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美女が魔蟲  作者: 森山明
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26

よろしくお願いします

 外はもうだいぶ陽が傾いてきて入道雲が居座る空を少しずつ橙に染めている。開け広げられた窓からは少し湿り生暖かい風が吹き込み私の頬を這いずり少しだけ不快な気分にさせた。耳を澄ますと疎らに虫の鳴き声が聞こえてくる。ああ、父さん。こちらはもうすぐ秋が訪れますよ、な~んちゃって。なんでゲームの中でもこんな高温多湿なんだよ!


 それはさておき私はひたすら織っています。もう十分な量は出来ているのだが、今後のことを考えて多く織っている。


 リリーちゃんはウルちゃんとグロリア特製ジュースを飲みながらお話し中。どことなくウルちゃん相手に気圧されている、まあ伝説のアイドルが目の前に座ってるのだ仕方ないのかもね。リア子ちゃん汁の件は、最初飲んだ時から分かっていたらしい。なんでもグロリアの種族である聖浄蠅の蛆から分泌される蜜は希少で滅多に飲めないとか。私なんて戦闘中に限らずチューチュー飲んでたんだけどね、これは瓶詰にするしかないな。


 ユーラちゃんは、体の調子を取り戻すべく里中を走り回っている、飛梅と。病み上がりなのに元気だな、そしてなぜか飛梅を気に入ってしまったようだ。彼女曰く腹部に生えている細かい毛の肌触りが絶妙なのだそうだ。




 そんな平和な日が二日続きました、ゲーム時間でね。只今現実世界の時間で午後七時四十五分。ゲームでは昼過ぎ、午後一時位だ。


 白無垢の具合はというとかなり進んでいる。足袋、肌襦袢、裾よけ、長襦袢、掛下振袖、打掛、綿帽子は出来ている。あとはこれに刺繍するだけだ。そして筥迫と扇子と懐刀と草履だけだな。


 ずっと生産活動していたので気分転換に少しだけ狩りに行く。ウルちゃんとユーラちゃんもついてくるようだ。大丈夫なのか?


「着いて来るのはいいんだけどさ武器とか防具とか大丈夫なの?」


「大丈夫だ、武器のほうは結晶化してしまったがな、これがどうしてなかなかいい具合だ。まあ服は着られる状態でもないし、短弓も使えなくなってしまったがな。それに普通の状態であれば並大抵のモンスターにはやられやしない」


 私と同じくらいの身長なのでお下がりの白い忍者姿のユーラちゃん、左右の腰に透明の剣を帯びている。左側にカットラス、右側にショーテルの二刀流だ。背中にも小さい弓と矢筒を背負っているが、糸も結晶化してしまっているので弓のほうは完全に芸術品のようになっている。


「そうじゃの、妾の錫杖もティアラも結晶化してしまったが以前と然程変わった様子はないからの、ないしろこちらのほうが妾の好みじゃし」


 ウルちゃんはその小さい体、一四〇センチくらいの小柄な体躯だが手には長い錫杖が。ウルちゃん曰く、六尺あるとか。六尺って何センチだっけか、まあいっか。頭の上には透明なティアラが輝いている。


 問題の服だが、実は急ピッチで完成させていたんですよ、巫女服を。


「ウルちゃんこれ、作ってみたんだけど着てくれるかな」


「こ、これは。わざわざ用意してくれたのかえ、早う着たいのじゃが、どう着るのじゃ?」


 おおう、これは盲点。仕方ない、着せてあげなきゃね。NPCは私たちとは違いいちいち着なきゃならないらしい。不可抗力、不可抗力!


 着付けっていうのかな、終わりましたよ。目の前はほとんどモザイクでしたけどね。白衣、緋袴、千早、足袋、下駄。巫女さんだよ、ちゃんとしたね。


「どうじゃ、似合っておるかの?」


 小さい女の子の巫女姿っていいよね、心が洗われるようだ。長く地面に着きそうなくらいの白い髪は絵元結で後ろで束ねている。


 すごい。パッと見、二色しか使われていないな、白と赤、めでたい、縁起物だな。


「これは、ウルメ様お美しいです。簡素な造りではありますがそれが逆にウルメ様の美しさを引き立てております。今まで多種多様なドレス姿を拝見しましたが、私はこちらのほうが好きです」


「そうか、そんなに良いのか。ありがとうの、フウカ殿。ところでこれはなんと言う着物かの」


「これは、巫女装束というもので、私の国では本来は神に仕える乙女のみが着ることを許されているものなんですよ~めちゃくちゃ可愛い! サイコーだよ!」


 ガバッと抱き付く、まんざらでもなさそうなウルちゃん、こめかみをひくつかせるユーラちゃん、少し羨ましそうな表情のリリーちゃん。ほんとサイコーだよ、抱き付くにはちょうどいい背の高さだ。





 狩り行ってきました。問題あるかと言われれば全くない、単純に強かった。二人とも。


 ユーラちゃんは兎に角速い、何してるかよくわからない。あっという間に接敵して切り刻んで戦闘終了。守人半端ねぇ。


 ウルちゃんはザ・魔法使い。固定砲台としてモンスターを発見したら気付かれる前に仕留めちゃってる。魔法力、精森族の人たちは霊力と言うらしいがそれが尽きる気配がない。ユーラちゃんが言うには霊力が完全に回復していたら髪から緑や金色の光の粒が輝くらしい、あまりにも霊力が多すぎて体内に収まらないってさ。巫女様半端ねぇ。


 今日狩ったのは〔ミダレハンミョウ〕〔グロウブタイガー〕〔首切り蟷螂〕〔血狂い蟷螂〕〔ベノムパイソン〕〔ミニバジリスク〕〔アイアンピューパ〕を複数匹狩った。ミニバジリスクは蛇の洞へ行き狩ったのだが、バジリスクほどではなく毒はあるが石化光線は出さないから、余裕をもって戦えた。ミダレハンミョウは三〇センチほどの小さな身体に二〇センチもの大きく鋭いアゴを持つすばしっこい奴だ。


 今日は、五つもレベルアップしていた。バジリスク戦の経験値が溜まっていたのか知らないが、ぐんぐん上がる。一回でひとつしか上がらないっていう仕様がいけないんじゃないのかな。



種族     

 <蟲人 (蟷螂) Lv.37(+5)>


ステータス   

 <生命力> 450(+15)

 <魔法力> 150

 <筋力 >  31

 <防御力>  15(+3)

 <智力 >  15(+3)

 <素早さ>  21

 <器用さ>  30

 <精神力>  15(+3)

 <運  > 134



スキル

 <鎌 33(+5)>

 <二刀流 33(+5)>

 <隠密 32(+5)>

 <奇襲 27(+2)> 

 <投擲 23(+5)>

 <軽業 32(+5)>

 <看破 14(+1)>

 <雷魔法 24(+4)>

 <毒魔法 27(+5)>

 <回避 8(+5)>

 <消費魔法力軽減 27(+5)>


控え

 <刺繍 5>

 <弓 12(+3)>

 <解体 1>

 <直感 1>

 <鑑定 10>

 <武器(木工) 11>

 <防具(布) 8(+2)>

 <機織り 25(+5)>



眷属

 <陰陽蟲 LV.37(+5) ティルダ(陽蝶)/ユエナ(陰蛾)>


ステータス   

 <生命力> 320(+15)

 <魔法力> 595(+15)

 <筋力 >   4

 <防御力>  12

 <智力 >  40(+4)

 <素早さ>  25(+2)

 <器用さ>  15

 <精神力>  27(+2)

 <運  >  45



 <飛梅 (土蜘蛛) LV.31(+5)>


ステータス   

 <生命力> 450(+15)

 <魔法力> 420(+15)

 <筋力 >  20

 <防御力>  15(+2)

 <智力 >  20

 <素早さ>  30(+2)

 <器用さ>  25(+2)

 <精神力>  15(+2)

 <運  >  35



 <ギフトス (双頭蜈蚣) LV.32(+5)>


ステータス   

 <生命力> 710(+30)

 <魔法力>  80

 <筋力 >  32(+2)

 <防御力>  28(+1)

 <智力 >   6

 <素早さ>  22(+2)

 <器用さ>  21(+1)

 <精神力>  15(+2)

 <運  >  29



 <尚香 (矢蜂) LV.29(+5)>


ステータス   

 <生命力> 475(+15)

 <魔法力> 320(+15)

 <筋力 >  14

 <防御力>  15(+2)

 <智力 >  12

 <素早さ>  40(+5)

 <器用さ>  25(+1)

 <精神力>  18

 <運  >  37


 <雷電(盾象蟲)LV.26(+5)>


ステータス   

 <生命力>1225(+45)

 <魔法力>  50

 <筋力 >  32(+1)

 <防御力>  38(+1)

 <智力 >   4

 <素早さ>   5(+2)

 <器用さ>   7

 <精神力>  15(+3)

 <運  >  40


 <グロリア (聖浄蠅) LV.24(+5)>


ステータス

 <生命力> 260(+15)

 <魔法力> 505(+15)

 <筋力 >   3

 <防御力>  12(+2)

 <智力 >  27(+3)

 <素早さ>  26(+2)

 <器用さ>  14

 <精神力>  27(+1)

 <運  >  38


 <重位(足軽甲蟲)LV.16(+5)>


ステータス

 <生命力> 745(+15)

 <魔法力> 100

 <筋力 >  25(+2)

 <防御力>  25(+3)

 <智力 >   7

 <素早さ>  17(+2) 

 <器用さ>  15(+2)

 <精神力>  15

 <運  >  29



 レベルが三十五に達したのでまた新しい眷属を召喚しましょう。


「カモン!」


 地面にお馴染みの魔法陣が浮かび上がる。その中から這い出てきたのは、真っ白なサソリ。普通の蠍ではなく、本来目のある部分から普人族の女性と思われる上半身が生えている。おへその下くらいからサソリの皮膚になっているが、人間の部分は弾力がある。


 顔は外国人って感じ、鼻が高くて、綺麗なそれでいてどこか薄幸そうな女性。全身、白くはあるがサソリの目も女性の目も綺麗な緑、エメラルドグリーン。


 その娘の髪は後ろで結われているがよく見るとそれがサソリの尾に変わっている。毒あるのかね。




軽戦蠍 「シヴァ」 LV.1

   体色は白く頭部からは普人族の女性の上半身が生えている

   疑似餌の役割を持ち見目麗しい外見をしている

   尻尾の麻痺毒は非常に強力


スキル

 <槍>

 <杖>

 <長柄>

 <弓>

 <盾>

 <氷魔術>

 <受け>

 <麻痺>

 <頑丈>


ステータス

 <生命力> 500

 <魔法力> 300

 <筋力 >  12

 <防御力>  13

 <智力 >  12

 <素早さ>  10

 <器用さ>  12

 <精神力>  10

 <運  >  10



 シヴァと名付けました。女性の上半身は疑似餌らしく話しかけても何も言わない。表情は変えられるらしい。しかも白いと言ってもまだ人間に見えるレベルでの白だ。美人だしこんなのホイホイつられるだろうな。


 上ばかりに気を取られていたが本体のサソリの部分はと言うと、オブトサソリに近い。その名の通り太い尾とそれとは対照的に細いが鋭いハサミを持っている。


「おお、妾は長く生きておったが初めて見たの。それにしても妾と同じで真っ白じゃ」


 シヴァの頭を笑顔で撫で、小柄なウルちゃんが見下ろしている。しかし本当の頭はこっちだと言わんばかりにハサミでウルちゃんの足を突っついて気を引く。それに気づき両膝ついて笑顔で撫でられ、シヴァもどことなく気持ちよさそうで懐いているようだ。


 ところでこの子の武器も用意しないといけないんだよね。さっさと作っちゃおうか。もう外は暗いけど、そんなに遅くまではかからないだろう。出品用の懐刀と合わせてね、今日はたくさん素材が取れたし、素材屋さんのところにもまだ使えそうなものがあるかもしれないしね。


 ギリギリだ、睡眠度を表す電球のアイコンが弱く段滅している。出来ましたよ、懐刀と槍と盾と弓矢。


〔銘:春風 乱斑猫の鋭牙刀〕

フウカ作 小刀

レア度:C 品質:B

攻撃力:8+2 耐久度:120

重量:1


特殊効果:奇襲時のみクリティカル確率上昇(中)


抜くときの音がしないので奇襲、暗殺に向いている

刀身、柄、鞘すべてが白い

鞘には桜の花

柄にはムカデが巻き付いたような意匠が彫られている



 桜やムカデは彫刻刀で彫りましたよ、こういう細かい作業は得意なんです。展示会用の懐刀として作ったんだけど、効果が効果なだけに人にやるには気が引けるから自分で使いたいくらいだ。



〔銘:穿山 狂血の棘槍〕

フウカ作 短槍

レア度:B 品質:B

攻撃力:24+7 耐久度:90

重量:3


特殊効果:出血確率(中)


短槍にしては重量はあるが

殴打することにも適し

使い勝手はいい




 シヴァ用の短槍なんですが、構成しているものは、柄は樫を使い布を巻いて補強している。鍔は血狂い蟷螂の棘鎌を棘の生えている鎌の刃の付け根の節の部分を刃を外して使用。穂には〔鉄蛹の背棘〕を使っている。鉄蛹はアイアンピューパで、こいつの背中には棘が生えており転がったり飛びつくだけの攻撃手段しか持っていないのだが、硬いわタフだわで苦手だ。


 渡してみると片手で難なく扱えるようだ、重いかなと思っていたのだがその細腕には似つかない、豪快な捌きかたで振り回している。本来は槍なのだが棘鎌の節の部分で殴ることもできるのだ、むしろ長めの棘付きメイスと言ったほうが良いかもしれない。



〔銘:小峰 鉄蛹の小盾〕

フウカ作 小盾

レア度:C 品質:B

防御力:18+5 耐久度:100

重量:1


鉄蛹の堅い殻を使っている

重量に対して防御力は良い

腕に固定できるので臨機応変に対応できる



 シヴァの左腕に固定し、リリーちゃんを相手に軽く打ち合っている。槍も盾も問題なさそうだが、いつか武器そのものも色を変えられるようになりたい。武器だけ白くないというのは少し気持ち悪い、塗料がないからやりようがないんだけどね。


〔銘:禄存・壱型 竹蚰弓矢〕

フウカ作 長弓・矢

レア度:C 品質:B

攻撃力:13+14 耐久値:90

重量:1 飛距離:135+180


特殊効果:飛距離上昇(小)

攻撃力上昇(微)

命中率上昇(微)


比較的張力の強い和弓

連射性は低いが一撃の飛距離と威力は絶大


蚰蜒の肢を箆、鏃は角ゼミの短角

矢羽を雛馬鷲の羽を使用している




 弓矢は私が使っているものと同じものを作りました。ちなみに裸のままじゃあんまりなのでユーラちゃんが着ていた貫頭衣を身に着けている。今度はシヴァがユーラちゃんと軽く稽古しているが、あまりの速さに追いつけていない。


 それを眺めていたらウルちゃんがこちっらの寄り添ってきた。


「フウカ殿は多才じゃの、それに眷属のため労を厭わない。そなたは素晴らしい方じゃ身近い付き合いしかないが妾には分かる。人を見る目はあるからの」


「そうかな、自分じゃよくわからないけど。そう言ってもらうとうれしいよ」


「……やはりあの時のお言葉は正しかったのじゃな」


「あの時? お言葉って?」


「フフッ、それはまた別のお話じゃ。さ、妾はもう寝るとしようかの、おやすみじゃ~」


 そう言い残して寝床へと戻るウルちゃん。


 気になる言葉はあったがこちらももう限界よろしくのところまできている。私も寝ようかな、さぁ明日はどんな一日になるのかねぇ。

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