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よろしくお願いします
年内最後となります
発見した人型のクリスタルは二つ。
両方ともお耳の先が尖っているのを見ると精森族、いわゆるエルフのようだ。大きいほうの剣を携えたエルフが小さいほうの杖を持ったエルフを庇っているようにも見えるが、なぜこんなものがここにあるのだろうか。それよりよくこんなもの作ったな。
「クリスタルでできたエルフの像だね。これひとつしかないけど、幾らくらいするんだろうね」
すこしガッカリしたかな。でもこのクリスタルの像は大きいしエルフだしでオークションにでも出せば結構高値で売れそうだけどね。どんな人が買うかは見たくもないけどね、プレイヤーでも買いたい人はいるんじゃなかろうか。グヘヘ、またこれでがっぽりと稼げますなぁ。
そんな事を考えている私をしり目にひとり深刻そうな表情でクリスタルの像を見定めているリリーちゃん。
「……フウカさん、恐らくですがこれはクリスタルでできた像、なんかではないと思います」
「うん? どゆこと?」
「クリスタル化した、結晶化した精森族のなれの果てということです」
「結晶化したって、もしかしてさっきのバジリスクがこのエルフちゃん達を? でもバジリスクにはそんなこと出来ないよね!?」
いやいや、バジリスクって石化だけで結晶化ができるなんてサイトの魔物紹介ページにも書いてなかったけど。
「さっきのバジリスクではなく以前の洞主であった個体。バジリスクの上位種、〔クイーンバジリスク〕だと思います。いえこのような綺麗に結晶化できるモンスターは私の知る限りはクイーンバジリスクしか知りません」
む、それでは売るどころの話ではない。変態野郎なんかに渡すものか、なんとかして解除せねば、だってこの子たちはエルフなんだから! しかも女の子。
「じゃあ治さないと! でも治療法なんて知らないし、ネットにも載ってるはずないし。リリーちゃんは知ってる?」
「申し訳ありません、聖国に行けば治せる人は居るはずですが……聖国にはいけませんので」
俯き消えるような声で言うリリーちゃん。行けないのであれば仕方がない、恐らく私もリリーちゃんも入ることはできなさそうだしね。
ここで考えても時間の無駄だ、このクリスタルの像はアイテム化してあるので持ち運びに苦はない。ひとまず里に帰りましょう。
何事もなく里へと帰りつき、リーラや我が眷属たちとの触れ合いもほどほどにこのエルフたちをどうすれば救えるのか、只今リリーちゃんと膝を突き合わせて考え中であります。
いやぁ~何も浮かびません。改めてエルフたちを見てみると姉妹なのかな、お姉さんのほうが覆いかぶさって守ろうとしているが結局二人とも結晶化されてしまったのだろう。
いったい何時からこのままなのか、なぜあの洞にいたのか分からないが私の中に眠っている清い心がなんとしても助けたいと囁いている。その何倍もの声量で汚れた心がお返しに何をしてもらおうか叫びながら会議をしている。黙りなさい!
エルフたちを見ながら物思いにふけっていると、クリスタルに巨大なハエがたかってきた。
ゴメン! もとい我らが癒し系アイドル、グロリアが丹念に調べている。
「そうか、グロリアなら何かわかるかもしれない! 」
いつの間にかみんなでエルフたちとグロリアを囲みながらグロリア先生の診断を待っています。
終わったようで私の元へと飛んでくる。何か訴えているが難しいな、なにしろ虫とジェスチャーゲームしたこと無いんでね!
「う~ん、これは……紙か! 書くものってことだね!」
猛烈に頷いている、正解のようだ。器用に筆を持ちスラスラと絵を描いていく。
「グロリアって絵を描くの上手なんですね」
確かに私の何倍も上手い。何を書いているのか一目瞭然だ、素晴らしい安心したぞ! またここから難問を解かないといけないのかと思ってたよ。
「蛇のような絵、バジリスクかな、そこから水滴、血か。バジリスクの血といえば〔石毒大蛇の骨髄〕があるな」
「また水滴ですね、今度は水でしょう。それを混ぜるだけですか」
翅を羽搏かせグロリアが否定の意を示す。そして私の胸元からリア子ちゃんが飛び出していきグロリアの元で蜜を出す。どうやらこれも混ぜるらしい。万能だなリア子ちゃん。
「でもこれは<錬金術>の領分だよね、ここにはスキルはなかったしなぁ。スキルなしでも作れないこともないけど難易度高そうだし、効果がうまく発揮できないかもしれない」
「私もそのようなことは出来ませんし、それ以前に不器用なのでどう考えてもできません」
「とりあえず私たちで作ってみよかね、よろしくねグロリア先生」
グロリア先生はいつになく張り切っている。なんと頼もしいことか。
「〔石毒大蛇の骨髄〕は盥の中に置いておけば勝手に血が出るからこれで良しっと。あとは水だけど」
「フウカさん、井戸からお水組んできました」
さすがだ、ドラム缶ほどの大きな水甕を抱えている。私にはできない芸当だな。
「お疲れ、じゃああとはこれを混ぜるだけなの?」
またもや翅を激しく羽搏かせ否定する。あれ、じゃあどうするのだろうと思っていたらグロリア先生は水甕のほうに飛んでいきこちらに何かを訴えかけている。
「水、がいけないのかな。でも他にどんな水があるの、聖水とか?」
「聖水はこういったことには使えません。清水に教皇が塩をいれただけの言ってみれば只の塩水ですから」
おや、いつものリリーちゃんっぽくない刺々しい物言いですね。ていうか聖水って塩水だったのか。でもあの感じだとこいつぁその教皇とやらと一悶着ありやしたな。世界で一番信仰されている宗教のトップが実は……ってパターンだね、流石運営、こういった王道も欠かさない。
聖国ね、国家転覆とか胸アツ。なにしろ里襲撃の一番の被疑者なのだ、教皇がどんな奴かは知らない、里の蟲人とは何も関わりはない、しかし報いは受けてもらわねば。恩義ならあるこうして無事に楽しくプレイできているのも里の住民たちのおかげではあるのだからね。って清水?
「清水、じゃないのかな。清めるってどうやったらいいんだろうか、リリーちゃん知ってる?」
「清水ですか、すみませんなにしろそういう場所に入れる立場になかったので」
う~ん、清める清める。あれ? なにか有ったような無かったような、記憶に引っ掛かりを覚える。アイテムボックスを浚え!
「あった! 忘れてたよ〔水浄苔〕! 」
「はじめて見ました。早速この水甕に入れてみましょう」
いざ投入。二人して水甕の中を覗き込む、苔からキラキラ光る何かがしみだしている。浄化されていってるのかな。
一時間後……。
「失敗したね、もっと小さい容器に入れればよかった」
一時間もかかってしまった。ミスった、こんな大きい水甕に入った水をじわじわと浄化するのが苔ひとつではたかが知れている。
「ですが出来ましたし、それにどれだけ使うかもわかりませんから良かったではありませんか」
確かにそうなんだがね、なんか時間を無駄にした感が強い。まあ今後もいろいろ使うし、さっき一口飲んでみたけどかなり美味しかった。水を飲んで感動したのは子どものころに飲んだ湧き水以来だ。
「グロリア先生、これでどうでしょうか」
水甕のふちに止まりこちらを見て頷いている。ようやく薬づくりの始まりだ。
〔石毒大蛇の骨髄〕から出た〔石毒大蛇の鮮血〕と清水を1:1で混ぜ合わせる。混ぜている最中にグロリアが何かの魔術を行使していたが、それも必要なのだろう。良く混ざったらリア子ちゃんが少しずつ蜜を吐き出していく、またグロリアが魔術を行使し鮮やかな赤色をした液体が混ぜるごとに徐々に白くなっていく。
そのままかき混ぜること十五分ほど、完全に白くなったが純粋な白というよりもパールホワイトというほうが正しいかもしれない。
〔特上級軟化薬液〕
フウカ作 状態異常回復薬
レア度:A 品質:B
効果:石化完全回復
結晶化7割回復
岩塩化5割回復
石化状態の特効薬
霧状にして全身に吹き付けることにより
効果を発揮する
とても貴重
「できたっ、できたっ。うふふ、リリーちゃん霧吹き用意!」
「はいっ……持ってきました! あ、それと石化を薬で回復させると身体しか元に戻らないそうですよ、一応大きなタオルを持ってきますね」
な、なんということだ。けしからんぞ、服を着ているのに透けて見えてるという矛盾。私のいけない欲望がふつふつと湧き上がってくる、しかし気がかりなことがひとつ。運営的にどうするのかだが、まさか人を救っておいて垢バンはないはずだ。ええいままよ! とにかく回復だ。
まずは小さいエルフたんから回復させましょう。全身に丁寧に吹きかけ、次第に鈍く光っていく。クリスタルの像の上に結晶化のゲージが表示されだんだんと減っていく。
約七割といったところで薬が切れてしまった。いっぱい作ってあるので心配ご無用、支給注ぎ足し吹きかける。ゲージが無くなるころ一番光が強まって急速に光が収まる。
な、なんということだ。モザイク処理が施されとる~!でもこれはこれでそそられますなぁ。幼さの残る顔立ち、長い髪もまつ毛も真っ白、俗に言うアルビノっていうやつなのかな、瞳を見るまでは確定出来ないけどね。
それにしても超絶美人、触れたら壊れそうな繊細さや神々しさを感じます。
「どうしようかってどうするもこうするも壊すしかないよね。グロリア、もしものために回復用意」
名残惜しいがタオルで乙女の花園を隠し、苦無を突き立て棘鎌の柄頭をつかって慎重に全体に万遍なくヒビを入れていく。
透明で分からなかったがヒビの入り方で初めて服がかなりボロボロだったというのが分かった。気になるが今は集中しなければ。
無事に割り終えてベットに寝かしつけ起きるのを待つ。そちらはリリーちゃんに任せ私はもう一人のエルフたんを回復させましょう。
もう一人のほうは邪砂族、いわゆるダークエルフだな。黒髪で逆立った短髪に男性的ではあるが美人そうだ。見惚れている場合ではない早く割りましょう。
私の目の前で二人の美女が眠っております。未だ目覚めぬ眠り姫たちよ、私のキスで目覚めさせてみせましょう。まあそんなことやってる暇はなく、清水にリア子ちゃんの蜜を混ぜた栄養剤でこまめに唇を湿らす。
息はしているので大丈夫なはずだ、早く目覚めておくれ我が姫君たちよ!




